【読書記録】2024年9月29日〜10月5日
みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。
「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもんで、あれだけ暑かった夏もお彼岸を過ぎたら急に涼しくなって拍子抜けというか、身体の方が急激な気温変化についていけなくて、右往左往している今日この頃です。
もう半年以上前のことなので、読書、特にSF小説好きな方はご承知と思いますが、今年3月に作家の山本弘さんが亡くなられました。
私の中では、怪獣の襲来を自然災害と位置付けて、気象庁の特異生物対策部が対応にあたるという〝MM9〟シリーズや、アンドロイドのアイビスが人間にロボットや人工知能の物語を語って聞かせる〝アイの物語〟、そして詩羽という女性が人と人との縁を繋ぐ〝詩羽のいる街〟がとにかく衝撃的で、それまで苦手意識のあったSFという世界に踏み出すきっかけになった作家さんの一人でした。
そんな山本さんの物語のなかで私が特に好きだったのが〝BISビブリオバトル〟シリーズ。
これは主人公のSF大好き少女・伏木空とその仲間たちが、自分たちの趣味を生かしてビブリオバトル部を立ち上げ、読書の素晴らしさを広めていく話で、巻末にそれぞれのキャラクターが物語中に紹介した本がリストアップされるのですが、これがもうちょとしたブックガイドみたいな感じで、これを片手に新しい物語を探したりもしました。
…で、何が残念って、この物語が著者の山本さんが亡くなったことで未完に終わってしまったんですね。
未完といえば栗本薫さんの〝グイン・サーガ〟も120巻以上引っ張って未完だったし、真意の程は定かではないけれど、噂では手塚治虫さんの〝火の鳥〟も「現代編」が構想されていて、これが完成すれば、どこから読み始めても輪廻の輪が繋がる壮大な物語になるはずだったとか…。
生き物にはそれぞれ寿命があって、それを自分ではコントロールできないからしかたないのだけれど、ファンとしてはやっぱり、一度広げた物語世界は何らかの形で完結してほしいと思ったりする次第です。
最近よく思うのは〝ONE PIECE〟。尾田栄一郎先生、お願いですからメインの声優さんがご存命のうちに物語を完結させてください。あと〝名探偵コナン〟も。
だいぶ長くなってしまいましたが、ここからは今週出会った本たちのご紹介です。
【2024年9月29日〜10月5日に出会った本たち】
⚪️もう明日が待っている
【感想】
放送作家の著者が見たSMAPの素顔。
やはり世間に与える影響は大きかったようで、特にファンではなかった自分もその時々のトピックは目や耳に入ってきました。
読みどころはやはり木村拓哉の結婚にまつわるエピソードと、東日本大震災直後の生放送。そして「公開処刑」とまで言われた2016年1月18日のあの放送。
特にあの謝罪放送の真相については誰もが知りたいところだろうが、結局その辺りの真相はあえて書かないのか、それとも書けないのか、なんとなくボカされた印象。
とにかくSMAPが茨の道を突き進み、新しいアイドル像を構築してきたことを知ることができてよかった。
残念なのは「嵐」と違って「SMAP」の曲がAmazon nusicでは聴けないこと。他の音楽サブスクでは聴けるのかな?
⚪️ツミデミック
【収録作品】
違っ羽の鳥
ロマンス⭐︎
憐光
特別縁故者
祝福の歌
さざなみドライブ
【感想】
ごく普通の人生を送っていたであろう人たちが、コロナの流行をきっかけに歯車を狂わされてしまうという6編の短編集。
前半3編はいわゆる「黒」、そして後半3編が「白」といった感じだろうか。
ありがたいことに自分はコロナにあまり翻弄されない仕事だったし、毎回接種後の高熱には悩まされたけれど、ワクチンが効いたのか感染することなくなんとか乗り切れました。
しかし周りには大変な思いをした人もたくさんいたし、報道されてないだけで今でも結構感染している人はいるのが現状。
人間社会って本当に微妙なバランスで成り立っているんだなぁと、つくづく感じます。
⚪️海神
【感想】
2021年3月三陸沖の天ノ島という離島で少女が謎のアタッシュケースを拾うところから始まる物語。
あとがきによれば、著者が東日本大震災の記憶を風化させないために書いたとのこと。
あの震災当時信じられない光景が報道される一方で、日本人は被災しても譲り合いや思いやりの精神を忘れない国民なんて取り上げられ方もしたけれど、その陰ではやはりいろんな事件や問題が起きていた。
この物語では災害復興支援金詐欺の問題を題材にしているけれど、あの危機的な状況で抜群のリーダーシップを発揮されたら、自分ならあっさり騙されてしまうと思います。
単なる震災小説に留まらない迫力の、読み応えのある物語でした。
⚪️陸王
【感想】
もう何年も気になってはいたけれど、700ページ越えという厚さにビビり、二の足を踏んでいた本書。
いやぁなんでもっと早く手に取らなかったんだろう。
もはやジリ貧の老舗足袋屋が、起死回生の一撃としてランニングシューズメーカーに殴り込み!
相手は世界を股にかけるスポーツメーカー。
素材探しから始まる苦難の道の行方は!?
もちろん主人公は足袋屋「こはぜ屋」の社長ですが、もう一人の主人公と言っても過言ではないのがマラソンランナーの茂木。
彼がいることで「作る側」だけでなく「使う側」の物語も味わうことができます。
そしてその先のゴールの清々しさたるや。
⚪️クロノス・ジョウンターの黎明
【内容紹介】
仁科克男は、ある日勤務先近くのレストランの店主が撮った自主映画を観せてもらい、そこに映っていた女性・清水杏子に惹かれた。しかし、彼女は撮影直後、事故で亡くなったという。その直後、会社の人事異動で、系列の新会社P・フレックに出向することになり、開発業務に就くことになった。仕事内容は「時間軸圧縮理論」を応用した装置を作り出すという途方もないこと。同僚の野方によると、それは時間を操作し、過去や未来へ行くことが出来る装置らしい。そして、彼はこの装置を”クロノス”と呼んでいた。克男は、この装置を使えば、杏子を助けることが出来るのではないか、と思いつき……。
【感想】
タイムトラベル・ラブストーリーの傑作(だと私は思っている)「クロノス・ジョウンター」シリーズの一番初め、住島重工の開発部門としてP・フレックが発足し、試行錯誤しながら「物質過去放出機」、通称・クロノス・ジョウンターを開発する物語。
開発の元となる「時間圧縮理論」はさっぱり理解できないけれど、どの時代の人も考えることは同じで、今回の主人公・仁科克男、そして青井秋星も交通事故で亡くなった女性を救うために過去へ跳びます。
元々繋がりのなかったはずの仁科と青井の結びつき、そしていくつもに枝分かれする未来。
仁科の人生はちょっと切ない気もするけれど、ここまで誰かを一途に想えるなんて、これ以上の幸せはないのかもしれない。
⚪️時の“風”に吹かれて
【収録作品】
時の“風”に吹かれて
時縛の人
柴山博士臨界超過!
月下の決闘
弁天銀座の惨劇
鉄腕アトム メルモ因子の巻
その路地へ曲がって
ミカ
わが愛しの口裂け女
再会
声に出して読みたい事件
【感想】
梶尾さんの物語との出会いは2005年、演劇集団キャラメルボックスの舞台「クロノス」なので、私の中ではタイムトラベルものの作家さんという印象が強いのですが、調べてみるとハードSFやミステリーなども書いておられるとのこと。
その多才さを裏付けるような本書は全11編の短編集。
もちろんタイムトラベルものをはじめ、ノスタルジックな話や、都市伝説からトンデモ設定まで実に様々。
一番度肝を抜かれたのは〝月下の決闘〟。誰と誰が決闘するのか、読んでみるときっと驚きます。
それとまさかこの歳になって、あの「口裂け女」に再会できるとは。
1947年生まれとのことなので梶尾さんは今年77歳の喜寿。
応援してます!!
⚪️教養としてのラーメン
ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス――50の麺論
【内容紹介】
日本人にとっての国民食、ラーメン。お店のこと、味のこと、作り方の話、店主の話、などなど。ラーメン全体を俯瞰し見渡す一冊。
【感想】
私が住んでいるところはラーメン激戦区。なんと歩いていける範囲に10店舗程が乱立。種類もチェーン店から二郎系、沖縄そば、創作系から本場中華に街中華、そしてあの魚介系スープの有名店の暖簾分けまで多種多様。
流石にこの歳になると「朝ラー」は厳しいけれど、麺好きの私としてはこの環境は嬉しい限り。
今回手に取ったのはいわゆるラーメンの基礎知識本。
そんなに突き詰めた内容ではなくて、ラーメンを知識、作り方、食べ方、客、店、ビジネス、そして考察などと広い視野でざっくり押さえています。
もちろん店の系図や年表など資料としても読み応え抜群ですが、食べる側のマナーにまで触れているのが良いですね。
【まとまらないまとめ】
いかがでしたか。
実は今週、染井為人さんの〝海神〟を読んだ後に、あるミステリー小説を読もうと手に取り読み始めたのですが…。
なんだか読み始めからとても不穏な感じで、どうにも落ち着かない気分になり、その本は放り投げ、ココロのバランスを保つために全く別のジャンルの本を手に取ったのでした。
物語の良し悪しではなくて、自分のココロのコンディションの問題なのですが、こういう直感ってけっこう大切。
本には読むべき時期が確かに存在します。
その時期を外さないように、アンテナを高くし、感性を研ぎ澄ましておきたいと思う今日この頃です。
最後に
読書っていいよね。