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【読書記録】2023年6月11日〜6月17日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 梅雨らしい雨の日が続くかと思えば、30度越えの真夏のような天気。もう、夏が来る前に夏バテしてしまいそうです。
 ところで、この時期のイベントといえば!?
 一昨日(6月16日)、第169回芥川賞と直木賞の候補作が発表されました。
 この二つの文学賞のうち私が特に注目というかチェックしているのがエンタメ小説を対象とした直木賞。

第169回直木賞の候補作は以下の5作品。
 骨灰/冲方丁
 極楽征夷大将軍/垣根涼介
 踏切の幽霊/高野和明
 香港警察東京分室/月村了
 木挽町のあだ討ち/永井沙耶子

 注目しているとか書いておきながら、実はまだ一冊も読めていません。
 だって、気になる作家さんや作品がたくさんあって、積読も山ほどあって、でも時間は足りなくて、なかなか最新作、特に単行本まで手が回らないという現実。
 …なんて思いを巡らせながら、今週も「初めまして」の作家さんがひとり。

 早速今週出会った本たちをご紹介します。

【2023年6月11日〜6月17日に出会った本たち】

⚪️天空の蜂

著者 東野圭吾

【内容紹介】
 奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。

裏表紙より

【感想】
 この小説の初出は1995年。つまり刊行されてもうすぐ30年。
 約30年の間にまさに物語の最後で警告されていた事柄が実際に起きてしまいました。それは今から12年前の3月のあの出来事。誰もが予想しなかった事態。でも起きてしまった現実。まさに「事実は小説より奇なり」。
 個人的には技術者目線ではなくて、もっと国レベルのゴタゴタを期待していたのですが….。
 関係者であるあの犯人の一人の動機が切ない。

⚪️ヒポクラテスの悔恨

著者 中山七里

【内容紹介】
 「一人だけ殺す。絶対に自然死にしか見えないかたちで」浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授への脅迫文がネットに書き込まれた。日本の解剖率の低さを訴えるテレビ番組での、問題の九割はカネで解決できるという彼の発言が発端だった。 挑発などなかったかのように、いつもの冷静さで解剖する光崎。一方、助教の真琴は光崎の過去に手がかりを求めると、ある因縁が浮上し……。

裏表紙より

【感想】
 シリーズ4作目。法医学ミステリーではあるけれど、事件そのものよりも、今回に限って言えばどうやって司法解剖に持ち込むかに四苦八苦する物語の色が強いという印象です。
 ちょっと偏屈だけれど腕は立つ光崎教授の過去が少し明かされ、古手川と栂野の関係はほんの数ミリ前進というところ。
 人の死の真相を究明していく物語なのに、このアクセル・ペアにキャシーさんが加わると途端にコミカルになります。ただそれだけでは終わらないのが中山作品。今回は「差別感情」の話が特に印象に残りました。
 最後は渡瀬班長がいいところを攫って…。頑張れ古手川!

⚪️ランチ酒

著者 原田ひ香

【内容紹介】
 犬森祥子、バツイチ、アラサー、職業は「見守り屋」。営業時間は夜から朝まで。様々な事情を抱える客からの依頼で人やペットなど、とにかく頼まれたものを寝ずの番で見守る。そんな祥子の唯一の贅沢は、夜勤明けの晩酌ならぬ「ランチ酒」。別れた夫のもとで暮らす愛娘の幸せを願いながら、束の間、最高のランチと酒に癒される。腹の底から生きる力が湧いてくる、絶品五つ星小説!

裏表紙より

【収録作品】
武蔵小山 肉丼
中目黒 ラムチーズバーガー
丸の内 回転寿司
中野 焼き魚定食
阿倍野 刺身定食
御茶ノ水 牛タン
新宿 ソーセージ&クラウト
十条 肉骨茶
新丸子 サイコロステーキ
秋葉原 からあげ丼
新丸子リベンジ アジフライ
代官山 フレンチレストラン
房総半島 海鮮丼
不動前 うな重
秋葉原、再び とんかつ茶漬け
中野坂上 オムライス

【感想】
 この物語の主人公の仕事は「見守り屋」。
 仕事内容は依頼された対象を夜から翌日の朝まで寝ずに見守ること。
 実際にこんな仕事があるのかはわからないけれど、孤独で忙しい現代の都会では、結構需要がありそうな気がします。
 様々な依頼人の色々な境遇に触れることで傷つき、励まされ、考えさせられる主人公・祥子の楽しみは、仕事終わり(午前中)においしいランチを食べながらお酒を飲むこと。このランチがまた美味しそう。
 出不精な私の生活は基本、自宅と職場と書店とコンビニの往復みたいな感じなので、今度美味しいものを求めて地元を探索してみようかな。

⚪️震える牛

著者 相場英雄

【内容紹介】
 警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。当時の捜査本部は、殺害された二人に面識がなかったことなどから、犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。しかし「メモ魔」の異名を持つ田川は関係者の証言を再度積み重ねることで、新たな容疑者をあぶり出す。事件には、大手ショッピングセンターの地方進出に伴う地元商店街の苦境、加工食品の安全が大きく関連していた。現代日本の矛盾を暴露した危険きわまりないミステリー。

裏表紙寄り

【感想】
 巨大な駐車場を備えた大規模ショッピングモール。こんな店(施設?)が物珍しくなくなって久しい。
 確かに便利だけれど、それはいわゆる「足」を持っている人たちの話で、こういったお店が街の商店街をつぶし「買い物難民」を生み出しているという事実。
 不況の煽りから「安さ」だけに目を向ける消費者(もちろん私もそのひとり)。
 とにかくこの物語は衝撃的!
 今後は安売りの出来合いハンバーグやソーセージを買うのをためらってしまいそう。
 主人公・田川刑事の地道で堅実な姿勢は見習いたいところ。しかしどれだけ田川刑事が真摯に事件に向き合っても…。
 こういう物語もいわゆる「イヤミス」の部類に入るのかな。

⚪️64(ロクヨン) 上

著者 横山秀夫

【内容紹介】
 元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。

裏表紙より

【感想】
 横山作品といえば必ず挙げられるのが〝クライマーズ・ハイ〟と本書。
 警察内部の対立といえば刑事vs公安という図式が多い気がするけれど、この物語は刑事部vs警務部。その中心にあるのはたった1週間しかなかった昭和64年に起きた未解決の少女誘拐殺人事件。
 舞台はいわゆる「64事件」の14年後のD県警。主人公は刑事部から刑務部の広報課に異動になった三上。そしてこのシリーズのキーマン・二渡も度々登場。
 後半で、なぜ刑事部がこの「64事件」を隠したがるのかが明かされるものの、まだまだ事件の、いや物語の全容は掴めず。三上の娘の失踪事件も未解決だし…。
 下巻へ続く!!

⚪️どうした、家康

アンソロジー

【内容紹介】
 幼少で母と生き別れ、少年時代は人質として各地を転々とした徳川家康。戦国の世を勝ち抜き、天下人として幕府を開くまでに、何度も訪れる人生の節目で、都度難しい選択を迫られた。織田家に囚われてから大坂の陣まで、歴史時代小説の精鋭十三人が趣向を凝らす、歴史改変もありの短編集。

裏表紙より

【収録作品】
囚われ童とうつけ者 矢野 隆
悪妻の道 風野真知雄
生さぬ仲 砂原浩太朗
三河より起こる 吉森大祐
徳川改姓始末記 井原忠政
鯉 谷津矢車
親なりし 上田秀人
魔王 松下隆一
賭けの行方 神君伊賀越え 永井紗耶子
長久手の瓢 山本巧次
塩を納めよ 門井慶喜
点睛 小栗さくら
燃える城 稲田幸久

【感想】
 幼少期から晩年までの徳川家康の生涯を描く13篇のアンソロジー。
 どの作品もとても読みやすく、面白くてあっという間に読了でした。
 長生きだったということもあるし、とにかく波瀾万丈、耐え忍ぶことが多かった家康なので話題には事欠かない。
 一般的には慎重で、臆病で、権謀術数に長けたために「たぬき」と称される策略家の印象が強いけれど、このアンソロジーではいわゆる「ずる賢さ」はそれほど感じませんでした。

⚪️おっさん社会が生きづらい

著者 小島慶子

【内容紹介】
 「おっさんは、私だった」。アナウンサーとして活躍し、現在はエッセイストとして活動する著者は、ある経験を契機に、これまで忌み嫌っていた「おっさん的な感性」-独善的で想像力に欠け、ハラスメントや差別に無自覚である性質ーが自分の中にも深く刻まれていることに気づく。この“おっさん性”は、男女問わず多くの人々に深く染みついているのではないか。本書はそんな日本社会に染みついた“おっさん性”について考察した、著者と5人の識者との対話集である。人が心を殺さねば生き延びられない“おっさん社会”から脱却するためのヒントがここにある。

裏表紙より

【感想】
 この本でいう「おっさん社会」を作り出す「おっさん的な感性」とは、

「独善的で想像力に欠け、ハラスメントや差別に無自覚である性質」

本文より

とのこと。
 つまり中高年の男性だけではなく、老若男女誰もが持ち合わせる(可能性がある)感覚と言えます。
 いわゆるオヤジ世代だけではなくて「自分は違う!」と思った女性諸君にも手に取っていただきたい。なにせ著者の小島さん自身が、ご主人が仕事を辞めて、小島さん一人で家計を支えるようになった時、あるきっかけで「誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ!」的なことをご主人に言ったとか。
 それにしても小島さん、こんなに赤裸々に私生活を書いちゃって大丈夫なのかしら。ご主人も息子さんたちも手に取るだろうに。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 今週「初めまして」の作家さんは相場英雄さん。〝震える牛〟はかなり衝撃的でした。それにしても横山秀夫さん、佐藤青南さん、そして相場英雄さんと、今年はなんだか警察小説に縁がありそう。

 そういえば、現在第一線で活躍しているアイドルやスポーツ選手が、自分より遥かに年下になって久しいけれど、私の中では「歴史時代小説を書くのは年配の燻銀のような作家さん」つまり、自分よりは年上というイメージでした。しかし〝どうした、家康〟の作家さんたちの略歴を見て驚愕。なにせ13人中、年齢を明らかにしている作家さんの半分が、自分より年下という現実。
 …そりゃ歳もとるわけだ。

最後に、
 読書っていいよね。


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