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【読書記録】〝線は、僕を描く〟砥上裕將 著

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル・ヨムノスキーです。

 ある時知人に尋ねられました。
 「読書が趣味って公言してるけど、あんな活字の羅列を追って楽しい?」
 「同じストーリーを楽しむなら、漫画とか映画の方が物語に入り込めるんじゃないの?」

 うーん、確かに。
 それはそーなんだけれど。

 なぜ本を読むのか。
→そこに本があるからだ!

とかふざけてはみるものの、なぜ読書が好きなのかなんてあえて考えることもなく、なんとなく成り行きで読書にハマった感じで、明確な答えは出ないのですが、この問いについておぼろげながら答えの一端が見えた物語を紹介します。

 その物語とは、

線は、僕を描く/砥上裕將 著
【内容紹介】
墨と水。そして筆だけで森羅万象を描き出そうという試み、水墨画。深い喪失の中にあった大学生の青山霜介は、巨匠・篠田湖山と出会い、水墨画の道を歩み始める。湖山の孫娘・千瑛ら同門の先輩をはじめ、素晴らしい絵師との触れ合いを通し、やがて霜介は命の本質へと迫っていく。第59回メフィスト賞受賞作。
裏表紙より

 この物語は、第59回メフィスト賞受賞作品であり、2019年にコミカライズ、2020年に本屋大賞第3位、監督:小泉徳宏さん、主演:横浜流星さん、清原果耶さん主演で映画化され、今年2022年10月21日に劇場公開される作品で、すでに手に取られた方も多いのではないかと思います。

映画公式サイトはこちら☟☟

 水墨画、それは言ってみれば墨の黒と紙の白が描き出すモノトーンな世界。このモノトーンな世界をこの物語は本当に色鮮やかに描きます。特に主人公の青山霜介が初めて、後にライバルとなる篠田千瑛の絵を見た時の感想が本当に見事。今までたくさんの物語を読んできたけれど、これだけ想像力を刺激される物語はなかなかありません。
 目の前にある物事をありのままに表現するのだって難しいのに、目の前にないもの、想像上のものをありありと見せるなんて。しかも文字の羅列で。
 物語を読む醍醐味がこの一冊にギュッと詰まっている気がします。

 文芸評論家の小川榮太郎さんは著書の〝作家の値うち〟のコラムの中で、私たちが物語を読もうとする本質的な動機を4つ挙げています。

 ・物語によって想像の世界に遊ぶ。
 ・言葉そのものの味と香りを楽しむ。
 ・美しく心地よい言葉を読む。
 ・磨き抜かれた言葉のみが持つ魅惑。

 なるほど、まさにその通り。
 確かに今回こうして書いている〝線は、僕を描く〟では鮮やかな美の世界が目に浮かび、恩田陸さんの〝蜜蜂と遠雷〟では奥深くダイナミックな音楽が耳の奥で鳴り響き、高田郁さんの〝みをつくし料理帖〟では唾液がジュワッと湧きお腹がグーっと鳴ります。
 選びに選んだ言葉を駆使して人間の想像力を刺激し続ける作家という仕事はやはりすごい!そしてそんな物語を読んでまだまだドキドキワクワクできる自分も、まだまだ捨てたもんじゃない。

 今回も、ダラダラ書いてしまいましたが、「なぜ物語を読むのか?」と問われたら、あれこれ蘊蓄を述べる前に「こういう物語に出会うためです!」と質問した人にお勧めしたい。そんな一冊です。

 最後に、
「読書って、いいよね!」


【この記事で紹介した本】
タイトル:線は、僕を描く
著者:砥上裕將
出版社:講談社
レーベル:講談社文庫
ページ数:400
解説:瀧井朝世(ライター)

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