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【読書記録】2023年6月4日〜6月10日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 いよいよ梅雨本番です。
 湿気と暑さは本の天敵。
 本を読んでいてドキドキしたりすると、いつの間にか手の中の本がヨレヨレに。
 そして、汗がポタリなんてことも。
 これからの季節、とりあえず首からタオルをぶら下げながら読書に勤しむ私です。
 あっ、そういえば今年は奥さんから、首からぶら下げる扇風機をもらったんだった!
 早速使ってみよう。

 ということで、いつもの如く今週出会った本たちをざっくりご紹介します。

【2023年6月4日〜6月10日に出会った本たち】

⚪️ぼくとひかりと園庭で

著者 石田衣良

【内容紹介】
 新村あさひと須賀みずきは大の仲良し。ひどく内気なみずきは、あさひと先生以外、ひぐらし幼稚園の誰とも口をきかない。そんなある日、徳永ひかりが転入してきた。とても素敵な女の子。二人とも彼女のガラスのように澄んだ目と声に惹かれる。でもそれは「恋の試練」のはじまりだった…。恋の不思議と世界の残酷。夏の緑豊かな園庭で繰り広げられる、ひと夜の心揺さぶるファンタジー。

裏表紙より

【感想】
 絵本のような短い童話のような物語ですが中身はしっかり大人向け。
 仕事にも経済的にも恵まれず、自分を守ることに必死になり、恋愛に臆病になっている若者たちの背中をそっと押してくれる物語です。
 物語中で園丁(妖精か女神)は言います

「ほんとうの恋にはちか道も、らくな道もありません。だから、恋は尊いものなのです」

ぼくとひかりと園庭で p.50

またあとがきでは、石田さん自身が結婚について

「ひとりで気ままに生きるのは快適だけど、余計なお荷物を背負って、こづかいを削られ、そのうえ配偶者や子どもにうっとうしがられても、案外悪くない」

ぼくとひかりと園庭で 文庫版「あとがきに代えて」より

と。まぁ確かにね。

⚪️夢幻花

著者 東野圭吾

【内容紹介】
 花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。

裏表紙より

【感想】
 昭和37年の殺人事件と、平成13年に起きたアマチュアミュージシャンの自殺、そして高齢老人の殺人事件。これらの事件を結びつけるのは、あるはずのない「黄色いアサガオ」。
 初めはバラバラだったピースが最後にカチリと噛み合うのは見事。しかも丁寧に種明かししてくれるのでミステリー初心者にはありがたいです。
 読んでいて時々ミュージシャンや役者さんが麻薬で逮捕される理由が、少しだけわかったような気がします。そして才能がある人間の隣にいる凡人の気持ちも。
 主人公の蒼太が原子力工学を学んでいるという設定がどこに活かされるかと思えば…。
 なるほどそういうことね。
 あなたに、負の遺産を引き受ける覚悟はあるか!

⚪️市立ノアの方舟
 崖っぷち動物園の挑戦

著者 佐藤青南

【内容紹介】
 野亜市役所職員の磯貝健吾は、突然の人事異動で廃園寸前の市立動物園の園長に就任した。だが、初日から飼育員たちに“腰掛の素人”と反発されてしまう。挫けそうになったとき一人娘が写生したゾウの絵を目にし、何としてでも園を存続させようと決意。厄介な問題だらけだが、そこには曲者揃いの飼育員たちの動物への一途な想いがあった。真っ直ぐな情熱が胸を打つお仕事小説!

裏表紙より

【感想】
 久しぶりのお仕事小説!
 仕事の内容は動物園。突然動物園の園長に就任した市役所職員の主人公が、癖のある飼育員たちと切磋琢磨して、潰れかけの動物園を再建していくという物語。
 とにかく楽しく、そしてためになりました。

「人は人生で三度動物園を訪れるという。最初は親に連れられて、二度目は親として我が子を連れて、三度目は孫を連れて」

本文より

 …なるほど。
 だとすると次に自分が動物園に行くのは孫を連れてか。
 環境エンリッチメントという言葉も初めて耳にしたし、飼育員の苦悩や、今動物園にいる動物のほとんどが、動物園生まれであること、そして動物園が担う役割など、学びの多い一冊でした。

⚪️サイレント・ヴォイス
 行動心理捜査官・楯岡絵麻

著者 佐藤青南

【内容紹介】
 警視庁捜査一課巡査部長で取調官の楯岡絵麻。行動心理学を用いて、相手の仕草や行動パターンから嘘を見破る手腕から、通称「エンマ様」と呼ばれる。幼馴染殺害の容疑がかけられた歯科医、人気俳優の夫を殺害したと自白する国民的女優、クレーマー殺害の容疑がかかる占い師、絵麻の同僚を被疑者に追い込んだ音大生…。取調室で絵麻が被疑者に向かい合うとき、事件の真相が浮かび上がる。

裏表紙より

【収録作品】
YESか脳か
近くて遠いディスタンス
私はなんでも知っている
名優は誰だ
綺麗な薔薇は棘だらけ

【感想】
 警視庁捜査一課の楯岡絵麻は行動心理学を駆使して、相手の言動から事件の真相に迫る。
 とにかくこの絵麻(通称エンマ様)がすごい!彼女の前では何人たりとも嘘をつくことはできません。いや、たとえついたとしてもちょっとした目の動きや表情の変化、仕草でその嘘は見破られてしまいます。
 物語の中で絵麻本人も言及していますが、これじゃ結婚はやっぱり無理ですね。
 全5話中、一番面白かったのは、絵麻vsコールドリーディングを駆使する占い師の話。その他物語の各所に挟まれる15年前の事件の結末や、相棒・西野との関係など、今後の展開がとても気になります。

️⚪️陰の季節

著者 横山秀夫

【内容紹介】
 警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた…。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。

裏表紙より

【収録作品】
陰の季節
地の声
黒い線

【感想】
 私の中で警察小説と言ったら、正義感に溢れる熱血刑事たちが犯人を追い詰め事件を解決というイメージだったのですが、この物語はひと味違いました。
 確かに事件は起こりますが、それは警察組織内の事件。そしてそれを捜査(調査?)するのは警務部の職員たち。
 物語は4編。それぞれの主人公は警察内部の人事権を握る警務課の二渡、警察内部の不正を調べる監察課の新堂、議員と警察のパイプ役の秘書課の柘植、そして警務課の婦警担当係長の七尾。
 出世競争に明け暮れる警察官が実に人間臭い。
 一番心に残ったのはお手柄婦人警官の失踪事件の謎を探る〝黒い線〟。

⚪️動機

著者 横山秀夫
(書影は単行本版)

【内容紹介】
 署内で一括保管される三十冊の警察手帳が紛失した。犯人は内部か、外部か。男たちの矜持がぶつかりあう表題作(第53回日本推理作家協会賞受賞作)ほか、女子高生殺しの前科を持つ男が、匿名の殺人依頼電話に苦悩する「逆転の夏」。公判中の居眠りで失脚する裁判官を描いた「密室の人」など珠玉の四篇を収録。

裏表紙より

【収録作品】
動機
逆転の夏
ネタ元
密室の人

【感想】
 どの話も、主人公が直接他人の命を奪ったり奪われたりすることはありません。
 しかしどうにもいたたまれないというか、何だか心がざわつくというか。
 「定年退職間近の心の揺らぎ」これはそう遠くない未来に自分にも確実に起こる事柄。特別真面目に働いてきたわけれはないけれど、もしそうなったら自分はどうなるだろうか。
 居眠りをしてしまった裁判官の話「密室の人」も…。自分は奥さんや子供たちの心に寄り添えていなかったと、思わず頭を抱えてしまいました。
 横山さんの作品はまだ3冊目ですが、何というか、後からジワジワ効いてくるボディブローみたいな読後感です。

⚪️顔 FACE

著者 横山秀夫

【内容紹介】
 「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。

裏表紙より

【収録作品】
魔女狩り
決別の春
疑惑のデッサン
共犯者
心の銃口

【感想】
 D県警シリーズ第1作の〝陰の季節〟で私が一番好きだった第3話、「黒い線」で渦中の人だった婦人警官(今は女性警察官というのかな)・平野瑞穂巡査が主人公の連作短編集です。
 警察からマスコミへの情報漏洩、連続放火事件を恐れる女性の秘密、銀行強盗対策訓練の最中に起きた本物の銀行強盗事件、そして女性警察官が拳銃を奪われる事件などを通して、失敗を繰り返しながらも成長していく主人公がとても魅力的に描かれています。
 どの事件も真相は予想を遥かに超えるもので読み応え抜群。
 物語の中に度々登場する男性警察官が発するセリフ「だから女は使えねぇ」は、今の世の中だったら大炎上確実ですね。

⚪️裁判官の爆笑お言葉集

著者 長嶺超輝

【内容紹介】
 「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい。

裏表紙より

【感想】
 幸運なことに、これまでの人生の中で裁判を起こしたり起こされたり、証言台に立つこともなかったので、裁判についてはほとんど知識がない私。
 今回横山秀夫さんの〝陰の季節〟にあった裁判官の居眠りの話から興味を持ってこの本を手に取ってみました。
 法に厳格であるが故に冷徹な印象の裁判官の、人間的な一面を覗き見ることができる本でした。しかしタイトルにあるような「爆笑」エピソードはなく、そういう意味では少し期待外れ。
 各章末のコラムは裁判&裁判官トリビアみたいな感じで、興味深く読むことができました。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 今週は新たに佐藤青南さんという作家さんと出会うことができました。とは言っても調べてみたら実は、以前あるアンソロジーでお目にかかってはいたのですが…。
 すみません。まったく記憶に残っていませんでした。
 そして横山秀夫さんとの再会。
 横山さんの作品は通算1000冊目の記念として、名作と名高い〝クライマーズ・ハイ〟を読んで以来です。やっと重厚な警察小説を受け入れられる器になったということなのでしょうか。近々〝64〟も読みます!
 そうそう、最近、東野圭吾さんの文庫本を15冊ほど(有名なシリーズ作品以外)購入しました。その中には800ページ越えのあの名作(?)とその姉妹作も。タイトルとあらすじから選んでみたものの、どの物語も結構分厚くて、少々ビビっております。
 そしてそして、夏の文庫フェアは、「新潮文庫の100冊」のラインナップ発表を待つのみ。
 なんだかドキドキワクワクしてきました。

 今回は、石田衣良さんのこの言葉で終わりたいと思います

給料が上がらないのなら、プライベートくらい充実させようよ。

ぼくとひかりと園庭で〈文庫版〉あとがきに代えて より

最後に
 読書っていいよね。


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