M&A後も事業名称を継続使用するリスク_M&A法務百科>企業法務大百科
相談者プロフィール: シティー・フィールド株式会社 代表取締役 市原 良純(いちはら よしずみ、51歳)
相談内容:
先生、僕、近々名門ゴルフクラブのオーナーになるんですよ。
というのも、知り合いを通じて、昭島観光株式会社を紹介されましてね。
昭島観光株式会社といえば、一時期は、世の経営者がこぞって入会していた、かの有名なゴルフクラブ
「昭島カントリー倶楽部」
を運営している会社です。
でも、近頃は、経営不振が続いているようで、会社を分割して新会社を作って、ゴルフ場事業だけそこに承継させるために、僕に
「オーナーになってくれないか」
って、声がかかった、ていうことですよ。
まぁ、
「今どきゴルフ場なんて流行らないでしょ」
っていう声もありますけど、最近またゴルフも人気になってきたし、ここは僕の経営手腕の見せどころですから!!
僕、趣味で気象予報士の資格を持っていますけど、どんな天候でも、快適にゴルフを楽しめるような設備にする予定です。
ちなみに、
「昭島カントリー倶楽部」
っていう名前は、相当なネームバリューがありますから、引き続き使用します。
元の会社は負債だらけらしいですけど、これまでのゴルフクラブ会員に対する預託金については、ウチは返還する義務を負わない取り決めになってますから、まぁ、何とか建て直してみせますよー。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:事業譲渡の落とし穴
ある会社の事業を譲渡するのに、事業とともに
「商号」
も譲渡する場合、
「事業を譲り受ける側」
には、原則として
「事業を譲渡する側」
の事業によって生じた債務を負担する義務が生じます(会社法22条)。
これは、会社の合併等の場合と異なり、事業譲渡においては元の債権者の債権を確保する手続がないため、
「債務者側の一方的都合で、ある日突然、事業オーナーが変更されて債権を取りっぱぐれる」
という事態から保護すべき必要があるからです。
例えば、飲食店事業を営むA株式会社から、飲食店事業とともに
「A株式会社」
という商号をも譲り受けた場合、債権者から見れば
「『A株式会社』が飲食店事業に関する債務を負担している」
という外観は何も変わっていないので、この外観を信じて回収行動に出ることなくおとなしくしていた債権者の信頼を保護しよう、ということです。
なお、
「どうしても元の会社の債務について責任を負いたくない」
という場合には、きちんとした方法が用意されています。
事業譲受け後、直ちに、本店所在地で
「『事業を譲渡する側』の債務については責任を負いません」
との
「免責の登記」
を打って公示することにより、事業譲渡でM&Aしたセラー(売り主)の背負っているワケの分からない債務から解放されるのです(会社法22条2項)。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:会社分割への類推適用
では、会社分割の場合はどうでしょうか。・・・(以下、略)
以下、ご興味のある方は、
をご高覧ください。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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