パテントプールによる嫌がらせを受けた!_知財法務百科>企業法務大百科
企業から、顧問弁護士に対して、以下のような法律相談が持ち込まれた場合の助言方針を検討してみます。
相談者プロフィール:
田原ブラザー電機株式会社 専務取締役 田原 寿仁哉(たはら じゅにや、34歳)
相談内容:
先生、最近流行り出した3Dビデオウォークマンって知ったはりますか。
歩きながら飛び出す映像が見られるヤツですわ。
あれ、今、物すごい勢いで売れてるそうですねん。
あの程度のモンやったら、ウチの会社と仲良ぅさせてもうてる台湾の会社に頼んだら、今の価格の半分くらいで出せますんや。
そない思うて、突貫工事でプロトタイプ作って、これから最終製品に仕上げて量産に入るぞ、ちゅうことになって調べてみたら、株式会社メディア解放機構(解放機構)ゆうところが持ってる3D画像専用のデコーディング・ソフトのライセンスもらわんとアカン、ちゅうことがわかったんですわ。
で、この前、ソフトのライセンスをもらうために菓子折持って解放機構さんとこに行って、
「ウチも3Dビデオウォークマン作りますさかい、あんじょう頼んますわ」
ゆうて挨拶したんですわ。
ほなら、
「お前とこみたいなミジンコ会社が参入してくんな、ボケ!」
みたいなこと言われて、ライセンスとか全然だめなんですよ。
よう調べたら、解放機構ゆうとこは、
「解放」
どころか無茶苦茶閉鎖的なところで、3Dビデオウォークマン作ってる大手家電メーカーと大手パソコンメーカーが株主になっている会社で、ま、ゆうたら、メーカーの仲良しクラブみたいな組織やそうですわ。
ほんで、社長の兄貴と一緒に、いつもお願いしている弁理士の仏原(ほとけはら)先生とこ行って相談しても、
「プログラム著作権を持っている人間が誰にライセンスするかは権利者の自由ですわ。そりゃ、しゃーないですな。
あーははは」
ゆう対応で、兄貴もヘコんでもうて、
「寿仁哉、もうアカンワ。やめとけ」
て言いだすんですわ。
俺としては、もう一歩やゆうとこまで来たのにこんな嫌がらせのような扱いを受けたのが悔しいんですわ。
どうにかならんもんですかねえ。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:パテントプール
パテントプールとは、特許権等の知的財産権を有する企業が仲良しグループを作って、各自が保有している知的財産権を企業が合同で出資する特定の会社(ジョイントベンチャー会社とかコンソーシアムとかいわれます)に管理させ、メンバーの企業だけが知的財産権を使えるような仕組みのことを言います。
例えば、音楽や映像を録音・再生するために必要な技術が標準化された場合、これに対応した製品を作ろうとすると、どうしても当該標準化に対応した技術を使う必要が出てきます。
しかし、標準化された技術には、標準化の前後に多数の知的財産権が取得されており、各権利者に支払うライセンス料が積み上がると合計のライセンス料は高額になりますし、また各特許権者と個別にライセンス契約交渉するのも面倒です。
このようなこともあって、パテントプールというシステムを作ることによって、単一のライセンス窓口から機器製造に必要となるライセンスを一括して安価で受けることが可能となる、というわけです。・・・(以下、略)
以下、ご興味のある方は、
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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