→Pia-no-jaC←「Go West Tour 2024 下関BILLIE
3月23日、山口県下関市のジャズクラブ・BILLIEで行われた、→Pia-no-jaC←のライブを観てきました。その感想を書きます。
まずは僕が足を運んだきっかけです。2000年代の中ごろはクラブジャズが注目を浴びていて、タワーレコードやHMVの店頭でも、このジャンルが山積みで展開されていました。このときに試聴機で→Pia-no-jaC←を知ったのですが、なにぶんこのジャンルはリリース・ラッシュで財布が追いつかず、買えずじまい。今回は運良くタイミングが合いました。
CDは持っていないけれど、試聴機で聴いただけでも彼らの音楽には「絶対に退屈しない!」という確信はあったので、曲は知らなくてもライブに行くことに決めました。
今回は西日本の5ヶ所を5日間で回る、Go West Tour 2024の最終日。
客電が落ちると、メンバーが登場する前に、長めのMCで会場を温めます。これがユーモアに溢れていて、まだ一音も鳴らしてないのに早々に楽しい気分になります。MCの「せーの!」という合図に続いて「HIROー!」、「HAYATOー!」と、観客にメンバーの名前を呼んでもらう場面を作ります。このとき客席からしっかり声が出ていて、熱い支持を得ているんだなと感じました。
打楽器のHIROさんはカホンに腰掛け、シンバルを周りに並べて演奏。こんなセッティングは見慣れないので新鮮に映りました。特に、足でペダルを踏んで鈴を鳴らすのが印象的。発音タイミングの度に、鈴が上下に動くのを見るのは初めてでした。鈴って、手に持って振るものだとばかり思っていたのですが、ハイハット・スタンドに取りつけて鳴らす方法があるのですね。見た目もカッコいい。
鍵盤奏者のHAYATOさんは、前日までの4公演では、持ち込みの電子ピアノで演奏していたそうです。今回は生ピアノと電子ピアノの2台体制でやれるということで、嬉しそうにしていました。
使用楽器の配分は、曲目によってあらかじめ決めていたみたいですが、その場のテンションで想定よりも生ピアノの配分が多くなった模様。生ピアノが弾いて欲しそうにしている、という旨のMCをしていました。嬉しくて仕方ないのが、ありありと伝わりましたね。
電子ピアノを少ししか使わないので、昨日の公演が終わった時点で、荷物として家に送り返しても良かったというMCも面白かったです。
ここまで書くと、生ピアノの存在感の大きさに、電子ピアノが蔑ろにされたような感じですが、終盤では電子ピアノに最大の見せ場が訪れます。今まで僕が見たことのない、驚きの奏法が飛び出しました。
おもむろに電子ピアノを直角に近い角度に立てたのです。鍵盤の高音部はキーボードスタンドにつけたまま、低音部を天井に向け、客席からも運指が見える状況を作ります。すべての黒鍵が青く塗られたようすを目の当たりにして、このヴィジュアルの凄さに圧倒されました。
キーボードスタンドが特殊仕様になっていて、鍵盤を立てかけた状態で固定できるように、片方に伸縮性のある長い柄がついていました。このインパクト抜群な体勢で、速弾きの最中に腕の間に頭をくぐらせ、アクロバティックな演奏で盛り上げます。
ドラマーがスティックを回転させたり、ギタリストがストラップを軸に楽器を肩の周りで回したりというのは見たことがありますが、鍵盤奏者でもこんな魅せ方ができるのですね。感動しました。
冗談だとはいえ、電子ピアノを送り返さないで本当に良かった!
アンコールでは、曲に合わせて観客がクラップで参加する場面がありました。HIROさんの合図で手を叩く回数が1回・2回・3回と変わっていきます。僕は曲を知らないので、3回叩くタイミングのときは半拍フライングしてしまいます。曲を熟知している周りのみなさんに合わせて、「ああ、こう叩くのか」とすぐに修正しました。曲の途中でクラップから足踏みに切り換わる合図もありましたが、みなさん即座に反応していました。この一体感、最高!聴くだけではなくセッションしている感覚で、これも楽しかったですね。
アンコールを終え、2人が客席のテーブルの間を通りながら、観客とハイタッチを交わしつつ退場します。僕は通り道からは遠い壁際に立っていました。なので、この楽しげな雰囲気を見送る格好だったのですが、出演者の方からこちらに手をいっぱいに伸ばしてきてくれたので、思いがけずハイタッチできました。気づいてくれて嬉しかったですね。
会場のBILLIEは以前よく通っていて、楽しい思い出がたくさん詰まっています。特に印象深かったのは、4人揃ったSleep Walkerのライブをこの会場で観られたこと。東京でもないのに、なんでこんなブッキングができるんだろう?と、イベント・スケジュールを見てワクワクドキドキしたものです。
コロナ禍で足が遠のいていましたが、音楽業界が逆境に苦しむ中でもしっかり生き残ってくれて、久々に訪れることができました。感無量です。お酒を飲んだのも久しぶり。なんと、僕の2024年の初酒はこのライブです。飲み物も美味しかったですね。心の底から楽しいと思えた夜でした。
4月21日には2人で名古屋・ボトムラインでのライブがあります。この他にもHATATOさんは4月13日に東京で、ソロ活動でのライブを行うようです。有田清幸さんとのセッションで、事前の打ち合わせは特に行わず、その場で生まれたインスピレーションを楽しむというものになるみたいです。
HAYATOさんは、このライブで→Pia-no-jaC←の曲を有田さんが演奏する可能性も示唆していました。両者のファンにとっても、要注目のトピックでしょう。大都市の公演ですし、プロの記者に取材に来てもらって、彼らの活動を広く伝えて欲しいところです。
今回の演奏曲目のひとつ
→Pia-no-jaC←『METROPOLIS』
BILLIEオフィシャルサイト
HAYATOさんが4月13日にライブを行う会場・ALT-SPEAKERのサイト