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NHK「インタビューここから」に小室哲哉が出演

 今朝、NHK総合で放送されたテレビ番組「インタビューここから」に、音楽家・小室哲哉が出演した。
 興味深い内容盛りだくさん。まずは小室哲哉の原点から話がスタートする。最初に手にしたシンセサイザーの実機が、スタジオに持ち込まれていた。この紹介の際に驚いたことがある。機種名を、アナウンサーの方から「SH…」と言い出したのだ。ミュージシャン同士の対談ではない。聞き役は局のアナウンサーだ。これは企画の段階から、しっかり練り込まれた番組なんだろうなという予感がピーンとした。
 「買った当初は凄い機材だと思っていたが、今見るとかわいらしい」という小室哲哉のコメントが入り、音色を作り上げていく過程を実演。カメラも良い位置にセットしてあったおかげで、ツマミを回した途端に音色が急変する展開は、心躍った。音楽雑誌などでは見かけたことがあったが、こうして映像と音を伴って紹介されると、楽器の特色・持ち味が非常によくわかる。
 印象深かったのは、2018年の引退から現役復帰するまでの経緯を話す場面だ。TM NETWORKのメンバー・宇都宮隆と木根尚登が自分のことを気にかけてくれていて、「そろそろどう?」と、誘いの声をかけてくれたという。長年の友達づきあいって、本当に良いものだと思った。「ウツー!」「木根さーん!」と、心の声が叫びそうになった瞬間だった。1999年に、グループ名をデビュー時のTM NETWORKに戻して再結成。このときの発起人は小室哲哉で、宇都宮隆・木根尚登は声をかけられる側だったが、今回は小室哲哉の方が呼ばれる側になったのだ。
 1994年は、小室哲哉にとって大きなターニング・ポイント。TMNの活動を終了し、音楽プロデューサー業に本格的に移行する。大ヒット曲『恋しさとせつなさと心強さと』のエピソードでは、初めて知る話も聞けた。
 タイアップ先の、映画・ストリートファイターⅡ制作サイドの要望で、もともとは別の曲で作り進めていたところを、こちらで作り直したそうだ。こうなってくると、「もともとあった別の曲」の方も気になる。TMN終了前から、trfのプロデュースも始まっていたが、映画制作サイドからは、『寒い夜だから…』のような、冒頭から歌と音と歌詞の3要素が同時にドカン!とくる曲が欲しいと言われたらしい。この話が聞けただけでも、番組を見てよかったなと思った。
 リスナーとしては、このような作曲家とタイアップ企業のやりとりは興味深い。進行中のプロジェクトについては、話せる範囲も限られてくるだろう。だが、すでに公開終了した映画や、契約期間を満了したCMについてでも構わない。後日談でいいから、こういう話はぜひ聞かせて欲しいものだ。
 音楽を聴く環境の変化にも言及した。ストリーミングの普及により、曲の尺が短くなってきているというくだりから、一過性のものではなく、末永く聴かれるサステナブルな楽曲を作りたいという話の流れになる。
 筆者は見ていて、「サスティナブル」の方がしっくりくるなと思ったが、ここは番組中のテロップ表示どおり「サステナブル」と書いておこう。「バイオリン」と「ヴァイオリン」なら、どちらの書き方でもまあいいかと思うが、「サスティン・ペダル」と「サステン・ペダル」なら、後者の方は「アレッ!?」と思わないだろうか。
 最後に廣瀬智美アナウンサーが、機転をきかせた絶妙のまとめをする。冒頭で紹介したシンセサイザーの音作りの話に立ち返った。ピアノでは打鍵した音は減衰してやがて消えてしまうが、シンセサイザーではずっと消えずに鳴り続ける音色が作れる。これを実践したわけだが、小室哲哉がこれから作りたいという、サステナブルな音楽を、このシンセサイザーの消えない音色になぞらえたのだ。
 事前の準備をしっかりしていて、本番中も真摯に向き合っていないと、こんな素敵な返しは生まれない。このときは小室哲哉も実に良い表情をしていた。
 素晴らしいインタビュー番組だった。
 小室哲哉は自身の誕生日でもある11月27日に東京でライブを行う。今後も、その活動には要注目だ。

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