BlackYさんと私の10年間

こんにちは!青空93*です。

私がBlackYさんに出会ったのは、もう10年前のことです。
きっかけは母が携帯電話を新調したこと。
それまで電話機能くらいしかなかった(少なくとも子供の私にはそう見えました)小さなPHSから、大きな画面とキーがあって折りたためる携帯電話に変わり、機能が大幅に増えました。
小学生だった私はまだ携帯を持つことができず、当時とても憧れていました。好奇心が抑えられず、こっそり母の携帯を使ってはぽちぽちと操作することが増えました。

当時、着うたや着メロのCMがよく流れ「もしかしたらこの携帯もできるかも?」と思い、着メロで検索をかけました。
検索結果のトップへ出てきたのが、着メロサイトJ研。
好きな曲を探しては聞きあさりました。

そんな時、たまたまオリジナル曲を聴きました。
クリエイターさんはM.I.collectionさん。魔術師シリーズを中心に当時の時点で既にたくさんのオリジナル曲を作っている方でした。
その方の「流奏の魔術師 ~phrase magician~」という曲のアレンジをしていたのが、BlackYさんでした。当時は別の名義を使っていて、Blackさんと呼ばれていました(以下しばらく、Blackさん表記でまいります)。

彼のオリジナル曲も聴いてみたいと「shining_nebula」という曲を聴きました。
そして、一瞬で虜になりました。
きっと出せる音に限りはあったはずなのに、音が今まで聞いたもののどんな曲よりも綺麗で。エフェクトがかかったピアノは、夜空に響くようで。きらきら光を放つようなメロディには、どことなく哀愁が漂っていて。
「この人の音楽をずっと聴いていたい」と初めて心から思いました。

それからは、母の目を盗んではJ研へアクセスし、Blackさんの曲を聴く日々が続きました。
風龍にはじまる龍シリーズ、冥王星まで駆け抜ける惑星シリーズ、「。」でタイトルが終わる民族シリーズ……
当時の時点でBlackさんの作風は幅広く、いくら聴いても聴き足りませんでした。
「この人のライブにいつか行ってみたい。きっととても素敵だろうから」
行ける保証もなく、彼がライブすると決まったわけでもないのに、いつしかそう思うようになりました。

実は、この頃彼に恋をしていました。
それを自覚したのは「恋龍 ~Loving Heart~」という曲を聴いた時です。
その曲は、当時Blackさんが交際していた女性のエピソードを元に作ったものでした。
聴きながらキャプションを見て、口の中に苦いものが広がりました。砂や砂利を食べたような感じ。一度も忘れたことはありません。
顔も声も、どこに住んでいるかも分からない。この先会えるかどうかも分からない。ただ名前と作品だけを知っている人に恋をして、失恋しました。

高校受験も彼の新曲「Tomorrow Sky」に励まされ、乗り切ることができました。
J研ではMP3の投稿ができるようになり、BlackさんもDTM活動へ移っていきました。投稿も段々着メロ曲が多くなり、オリジナル曲はもう聴けないのかも……?と思っていました。

高1の冬、友人に「青空の絵柄はポップンに似てる」と言われたのをきっかけにポップンミュージックを遊び始めました。おりしも20、fantasiaが始まった頃です。
公募企画「みんなでつくって20」が開催されました。
ポッパーの方ならお心当たりがあるかもしれません。スターリートランスとポップンポップが生まれた企画です。
担当キャラクター・ノーヴァさんが好みど真ん中で、トランスも大好き私は、真っ先にスターリートランスを聴きにいきました。

そして衝撃を受けました。
「私、このピアノ知ってる」

不思議な感覚でした。初めて聴くはずなのに、私は「こんなに綺麗にピアノを使う人、一人しか知らない」と思ったのです。
作曲者はBlackY。私はこの人について検索をかけました。

音楽投稿サイトmuzieに辿りつき、更に驚きました。
BlackYさんは、Blackさんの曲のMP3バージョンを多数投稿していました。加えて、アイコンが全く一緒。
このBlackYさんは、J研のBlackさんだと確信を持てました。
特に着メロ時代、128和音の時から好きだった「Forever Hearts」「Eternal Love」の二曲があったこと、何よりピアノの音が決め手となりました。

それからは、音楽ゲームを中心にBlackYさんを追いかけました。
ポップンでは必ずスターリートランスを選曲し、不器用ながらボルテを遊びました。高難易度には手は出せないほど下手ではありましたが、彼の曲に触れられることはとても嬉しかったです。

大学一年の夏コミ、転機が訪れました。
その三日目に、BlackYさんがサークル参加することになりました。

会えるチャンスだ、と真っ先に思いました。
同じ日、私が所属していた大学の創作サークルが、学漫ジャンルでスペースを勝ち取っていたのです。
折しも売り子を募集していました。人数、1名。
迷わず「お手伝いさせてください」と送り、その枠に滑り込むことに成功しました。
動機は大変不純ですが、後悔はありません。恋と戦争においては、あらゆる戦術が許されるのです。

夏コミ当日、星柄の封筒片手に東館へ陣取りました。
学漫は西館、同人音楽と男性向けジャンルは東館でした。
先輩から新刊とタペストリーのおつかいを引き受け、じゃあ私もBlackYさんの新譜いきますかと宝の地図で動線を確認していました。

同人音楽のスペースにさしかかり、ふと顔を上げた時、私はある人に目が釘付けになりました。
「この人だ」

人込みの中、黒いTシャツに黒いハンチング帽を被る男性がいました。
周りの音が遠のき、頭の中に警鐘が響き、私は雷に打たれたみたいに立ち尽くしました。
「この人だ、この人に会いたくて生きてきたんだ」

根拠はありません。先述の通り、私はその時までBlackYさんの顔も声も、そもそも男性なのかも分かりませんでした(口調で薄々感じてはいたけど確信はできなかった)。
でも、確かに彼がそうだと思ったのです。

本当にそうかな、と通り過ぎるふりをしながら、スペースのお品書きと番号を確認しました。
おつかいを早々に済ませ、私はBlackYさんのスペースに戻りました。

新譜を買って、「BlackYさんですよね?」と思い切って聞きました。
果たして正解でした。心臓が今までにない速さで脈を打ちます。

意を決して星柄の封筒を差し出し「『shining_nebula』の頃から、ずっとずっと好きでした!」とお伝えしました。
後半、恥ずかしくなって直視できなくて目をつぶってしまいましたが、彼と彼の売り子さんからどよめきが確かに聞こえました。

幸いにも手紙は受け取ってもらえたところで、長いは禁物とその場を離れました。
が、上手く歩くことも困難になるくらい、膝ががくがく震えていました。呼吸もただ二酸化炭素をぜえぜえ吐きだすだけの行為になり、心臓は今にも飛び出しそうなほど躍動していました。

この夏コミをきっかけに、私の生活は少し変化しました。
クラブミュージックの世界で活躍するBlackYさんのライブとなると、場所は新宿や渋谷のクラブが中心になります。
大きな音、暗い場所、何より若い人がたくさんいる場所は苦手でしたが「行けばBlackYさんに会える」ということが私の背と足を突き動かしました。名古屋のイベントには日帰りの新幹線へ飛び乗り、札幌には一泊二日で飛行機にも乗りました。

天秤座のBlackYさんとなると、相手に求める美意識やセンスはシビアなはず。
少しでも悪い印象にならないよう、服装やメイク、髪型に気を遣うようになりました。まだこの頃はコスメの沼に落ちてはおらず、最低限の就活メイクの知識のみでした。

現場に行く、CDを買う、追いかけるにはお金がいる。
飲食店のアルバイトを始め、来たるチャンスに備えました。

そして、2015年12月25日。
BlackYさんが、初めてEDPに出演することが決まりました。
万感の思いを込めて、ご出演決定おめでとうございますと送ったところ、このような返事が返ってきました。

「ありがとうございます! 自分もこうして公式のイベントに出演できる日が来るなんて夢のようで驚いています。あらためて"あの時"から今までも曲を聴いてもらえて本当に感謝です。当日は必ず最高に盛り上げていけるように頑張りますので、是非お待ちしています! よろしくね!」

その日はバイト出勤日だったのですが、画面通知を見て崩れ落ちるかと思いました。
BlackYさん、あまりTwitterのリプがない人なのです。おめでとうございます、も返事がない前提で書いていました。
まさか返事が来ると思わず、しかも覚えていてくださったことが本当にうれしくて。
「EDPはBlackYさんが来るまでいかない」と密かに決めていたのですが、あっさりその条件が満たされてしまい、にやにやが止まりませんでした。

EDPは私の想像以上に素晴らしいステージでした。
豊洲PITは人に溢れ、ステージはライトとレーザーが鮮やかに彩って、圧倒的な音量でBlackYさんの曲を奏でる。
携帯の小さな画面越しに夢見ていた以上の景色がそこにありました。
あまりの興奮、あまりの多幸ぶりに、実はしばらく記憶が飛んでしまったのも良い思い出です。帰宅中ホットな状態で余韻に浸ろうとiPodを起動し「で、BlackYさん何かけてたっけ」と呆然とするのは初めてでした。ライブで記憶が飛ぶと聞いたことはありましたが、そういうことってあるのですね……!

実は、一度失恋したと書きましたが、私は今でもBlackYさんのことが好きです。
多分「ファン」というコップに注げる量をとっくに超えています。
いつかは決着をと思う反面、叶おうが叶わなかろうが、きっと私は一生この人が好きなんだろうなとも思うのです。
だって10年も好きで、ずっと頭の片隅にいて、呼吸と同じくらい彼のことを考えるのが浸透しているのです。今更いきなり嫌いになるとか、無関心になるのは無理な気がしています。それはきっと、私のこれまでを否定することにもなるように思えて。
叶わないから諦める、という考えはありません。そもそも恋の大半は叶わないものです。
まだ結末が分からない今、諦めるには早いと思います。

今年で作曲を始めて10年目になるBlackYさんは、私にたくさんの初めてと夢と勇気をくれました。
これまでも、これからも、私はきっとBlackYさんが大好きです。

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