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思い出が重なっていく

 先日、三男夫婦が遊びに来た。カバンからパインサイダーを出して
「これ、お土産。近くでイベントやってて、おー、懐かしいと思って。」

 山形のパインサイダー。
新婚時代、夫の実家に行くと、台所の床下にケースで瓶のパインサイダー
が買い置きしてあって、お風呂上がりにお義母さんが出してくれた。仙台生まれ、仙台育ちの私は初めてのパインサイダーとお義母さんの気遣いが嬉しくて、パインサイダーは思い出の味。私の実家では、ジャンクNGで炭酸飲料なんて特別な時だけだったように記憶している。母方祖母の家にあるファンタグレープが私の禁断のジュースだったのだもの。一人で預けられた時なんて、ご飯を食べず、ファンタやオレンジジュースとか、普段飲めないものを散々わがまま言って飲んだことを思い出す。祖母は、わがまま放題を許してくれて、
「金魚みたいに水しか飲まない子だな。」
と笑ってくれた。
 
 山形のパインサイダーも、そんな昔のいい思い出と重なって、より一層美味しく感じたのだ。そして、月日は流れ、息子からプレゼントされるという喜びよ。子どもたちも山形に行くと飲んだ記憶があり、懐かしい思い出の味なのだろう。もう瓶のパインサイダーは販売していないらしい。ご当地サイダーが流行って、パインサイダーも復刻したのかな。大好きなものでも、ある日、突然なくなることがある。それも世の常。そして、思いがけず再会できることもあるのだ。
 息子からもらったというのも嬉しかったし、なんだか貴重すぎて大事にしすぎてしまう私たち。以前、息子からディズニーランドのお土産をもらって嬉しくて飾っていていて、今も飾られたまま。それを見て、息子に「食べてよ」と言われる有様。今回も、息子に「飾っておかないで、飲んでね」ということを感じて、お風呂上がりに夫とふたりで分け合って一本を飲む。あー、懐かしい。そして、なんだか無性に感動してしまうのだ。
 そして、先日、息子が来たときに冷蔵庫を開けたときに、パインサイダーが一本になっているのを確認して、
「一本、飲んだんだね。」と言った。うん、飲んだよ。すごく美味しかった!
「もうイベントが終わってて、もう売ってないんだよね。」
そっか、タイミングよく買ってきてくれてありがとう!
思い出はいろんなことが積み重なって、何度味わっても、同じじゃない。新しい感動を覚える。私のおばあちゃんの思い出と、お義母と私の新婚時代の思い出と、結婚した息子との思い出が重なる。人生は、どこまでも味わい深いのだ。

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