【テヅカのゲキガ(黒手塚)】を読むなら「大都社のハードコミックス」が最適だ
リアルタイムではなく後追いで、出会いはT書房という町の古本屋だった。
オッサンの郷愁(ノスタルジー)に過ぎないけれど、私はコレで読んだので。
〈黒手塚〉の正確な定義は知りませんが、個人的には「夢のある少年漫画」出身の手塚が、毛嫌いしていた後発の「夢のない劇画(≒青年漫画)」の影響を受けて描かれた、「描線」や「テーマ」が青年向けのダーク(陰鬱)な作品。
昭和の「劇画」は映画や小説でいうところの「ノワール」が出発点だろう。人倫(モラル)や法律を踏み外した人間(主に犯罪者)たちの行動を突き放した視点で描く(基本はバッドエンド)のが「ノワール」と言う風に私は理解しています。劇画タッチの〈黒手塚〉が描くのもそんな世界です。〈黒手塚〉にふさわしい「昭和の場末感」を持つのが、大都社のB6判ハードコミックス。
↑の画像の中では、数年前が初読の『カノン(短編集)』を除き、当時古本屋で買った「ハードコミックス(Hard Comics)」で読んだのは、『奇子(あやこ)』『ばるぼら』『きりひと讃歌』『空気の底(連作短編集)』『鳥人大系』『一輝まんだら』。『人間昆虫記』と『I・L(アイエル)』は、まんだらけ大阪店で買った大判の「COM名作コミックス増刊」(虫プロ)で。私は小学館文庫(旧版)で読んだ歴史大河ドラマ『シュマリ』もハードコミックス版がある。
私の評価では『きりひと讃歌』が一番の傑作で、その次は『シュマリ』『奇子』『空気の底』あたりが佳作、それ以外は記憶に残っていないので凡作となる。「大都社の手塚作品」は「スターコミックス」レーベルもあるが、私が読んだ『日本発狂』『SF・ファイブ』『紙の砦』はどれも印象が薄い。
「ハードコミックス」以外の〈黒手塚〉では、『MW(ムウ)』が未読。有名な『アドルフに告ぐ』も未読だが〈黒手塚〉か? 他にもあると思います。
秋田漫画文庫(旧版)で読んだ『ガラスの城の記録』『時計仕掛けのりんご』『鉄の旋律』などの短編集は濃厚な〈黒手塚〉。中身は忘れたけど面白い。
私が〈マンガの神様〉手塚治虫(1928-1989)の漫画に初めて接したのは、多分、世代的に『ブラック・ジャック』で、雑誌か単行本で「目にした」ぐらいだったと思います。所有しているものは何もなかった。『少年ジャンプ』が小中学生時代の自分にとっての「キング・オブ・漫画雑誌」だったので。
関係ないけど、6月30日にテレビ朝日で放送された実写版『ブラック・ジャック』は、期待してなかったが意外と良かった。基本的に漫画の実写ものは観ない。ただ、「キリコ」役の女優のとこだけ、見た目で笑ってしまった。
最近『AKIRA』で知られる漫画家/映画監督の大友克洋(1954-)氏のことを若い世代が知らないという「話題」があったけれど、現役での雑誌連載が無くて、アニメ(※映画ではなくテレビアニメ)が頻繁に再放送でもされていなければ、これだけ漫画もアニメも多い現状では、すぐに「あの人は今」状態。
大友は知らなくても『アンパンマン』の「やなせたかし」は知られてるか?
大友氏は「少年漫画」の出身ではなく「劇画(≒青年漫画)」出身だと思いますが、「劇画系の漫画」はテレビアニメに不向き(絵よりも内容が)なので、仮にアニメ化されても、何度もリメイクや再放送はされずに、知名度が低いままなのでは。「手塚の劇画」も初期の『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』などの「テレビアニメ化された少年漫画」と較べると知名度は低いだろう。
絵柄も内容も「少年漫画」的でアニメ化されやすい「藤子F」と、絵柄も内容も「劇画」的で黒い「藤子A」では、「F」の知名度の方が高いだろう。
☆私が読んだ「大都社のハードコミックス」の書影コレクション
◆『きりひと讃歌』全3巻 ※「全2巻」版もある
◆『奇子(あやこ)』全2巻
◆『一輝(いっき)まんだら』全2巻 ※「北 一輝(1883-1937)」がモデル
◆『空気の底』 ※短編集 ※サンミリオンコミックス・全2巻が完全版?
◆『鳥人大系』 連作短編集? ※豪華な「ハードカバー版」もあるようだ
◆『カノン』 短編集 ※表題作以外は「秋田漫画文庫」の再収録もの?
◆『山棟蛇(やまかがし)』 短編集 ※↑『カノン』と同じく、数年前に購入
◆『ばるぼら』
◆『人間昆虫記』 ※ハードコミックスではなく↓の「虫プロ」版で読んだ
◆『I・L(アイエル)』 ※ハードコミックスではなく、大判の↓で読んだ
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