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漫画家・永島慎二の【好きな映画】と【楠 勝平(くすのき・しょうへい)】評


文章がメインのエッセイ集『永島慎二共和国』(1981年/大和書房)を引用。


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楠勝平

_楠勝平が死んだ。まだ死にたくない、そういうふうにもがいて死んだそうだ。_一つの才能が死んでゆく時に、最後に、人生に、人々に示した愛情だった、とぼくは信じている。彼とぼくのつき合いはまことにへんてこりんな始まり方をして、数えるほどしか会っていないのに、友だちだったと今は思いたい気持でいる。おたがいに作品を読んでいたので、余計なはなしをしないですんだことが気楽だったのかもしれない。_彼は、ぼくに対して、会う度にその示す態度がはっきりちがっていた。まったく無視する時と、永島さんと呼んだり、先生と言ったりする時があった。ぼくの方はといえば、女房が彼の作品を好きだったこともあって、かならず目をとおしていたので、その都度あるおどろきと新鮮さを感じつつ心中おだやかならざる状態でありながら、表面は先輩づらをしとおしていた。_話の内容はきまって劇画であり漫画の話だった。といっても、他の作家の話などではなく、お互いの作品についてであった。今考えてみると、ぼくが「きみの作品は周五郎の世界に似ているね」といった時、あのおちくぼんだ眼を細め、肩をすぼめてにやりと
笑って淋しげに、しかし力づよく、「山本周五郎ですか」と言った時のあの意識の高さを、実はぼくは信じていなかったような気がする。_漫画の世界はおもしろい。つげ義春のように何人かの評論家の文章によって一つの作品が作品として完成していった場合と、ぼくの『漫画家残酷物語』のように何人かの若者たちの協力と、峠あかね(※真崎 守)の解説で一応成功した例など色々あるわけだが、くすのき・かっぺい(※正式な読み方ではなく知り合いの愛称⁈)のように、他を一切寄せつけることのない完成度を目指した戦慄的な作家は、彼をおいて他にはいない。漫画が、劇画が、人間の体温をつたえ得ることを知っていた数少ない劇画家と呼ぶにふさわしい人だった。_楠勝平は死んだ。と同時に、彼を愛した多くの人達の中にすでに生き始めている。十年たって読みかえして古くならない劇画がある。世の中がどのように変ろうが、くすのき・かっぺいの劇画は、時と共に読まれ続けていくだろう。彼の作品については、とやかく書きたくても書く必要がない。楠勝平の死んでもなお高い存在感が、彼のすべてを物語るであろうから。》


楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』(2021年)のカスタマーレビュー。


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【永島慎二に184の質問】という「Q&A」の一部

Q 今までに見た映画の中で忘れられないものをあげて下さい
 
A ロッセリーニ「無防備都市」。マルセル・カルネ「天井桟敷の人々」。デ・シーカ「自転車泥棒」。アラン・レネ「かくも長き不在」。チャップリン「キッド」。黒澤明「羅生門」。ディズニー「バンビ」。ポール・グリュモー「やぶにらみの暴君」他、まだまだたくさんあって書ききれません。最近のものでは「ブリキの太鼓」に衝撃を受けて続けて二度見ました。
 
Q フェリーニの作品の中で好きなものは
 
A 「甘い生活」
 
Q 黒澤明の作品の中で好きなのは
 
A 「羅生門」から「影武者」まで全部。》


永島氏が言及した映画のVHSビデオのジャケット写真(一部ポスター)

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