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飯野賢治が語る楳図かずお『漂流教室』
ゲームクリエイターの故・飯野賢治(いいの・けんじ/1970-2013)氏と漫画家の楳図かずお(1936-)氏の対談から、長編漫画『漂流教室』について語っている部分を『飯野賢治の本』(1996年)より引用。歌手のCHAGE and ASKAのASKA(1958-)氏も『漂流教室』に衝撃を受けたと過去に語っていました。
《飯野:僕はもう、全てのマンガ、いや全ての物語のある本の中で「漂流教室」が一番好きな作品なんです。
楳図:ありがとうございます。
飯野:楳図さんの作品には、非常にピュアな怖さと、表面を全部破壊した中から出てくる美しさがあると思うんです。読む側がいろいろと想像できて、読み終わった後も怖さが続くんですよ。
楳図:そうなんですか。
~~~中略~~~
飯野:楳図さんの作品は、どれも展開が想像できないですよ。~~かなり以前の話ですが、友達のアマチュアバンドがコンサートやったときになんとか市民会館まで行くことになった時、駅前で「漂流教室」を買ったんです。買って、そのコンサート行って、帰りにバスの中で読んだんですけど、駅を通りこして、気がついたら終点だった(笑)。そのくらい世界に入っちゃって。生まれて一度しかない体験ですよ。その時、ストーリーとか物語とか世界観という表現力が、僕が思っている以上に力を持っているんだなと知りましたね。僕は当時、どちらかというと冷めた子供だったんです。身内の不幸とか現実の出来事にしか心が動かなくて、小説を読んでも、しょせんはフィクションだよと冷めた部分があったんです。だけど、「漂流教室」にはショックを受けた。それ以降、物語とか世界観を大事にしていこうと思った。今の職業につくきっかけになったのは、実は「漂流教室」なんです。》
私はプレイしたことがないが、飯野賢治氏は、脚本家の坂元裕二氏と組んで『リアルサウンド 〜風のリグレット〜』という、「映像が一切存在せず、音だけでプレイする」という異色のゲームをワープという会社で作っている。
このワープという飯野氏の会社に一時期坂元氏も所属していたらしい。私が購読していた『ファミコン必勝本』の記事では、『風のリグレット』は評価も売り上げも、共に芳しくない印象だったのですが、正確な所は知らない。
『ワープ ワープ会社案内』の書影。私は未読。帯のコメントに坂本龍一。
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飯野賢治没後10年の「週刊ファミ通」特集記事。坂元裕二氏のコメントも。
楳図氏との対談の本は、ブックレットとでもいうのか、薄めの書籍です。
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https://www.amazon.co.jp/dp/4944000421/
対談の相手は楳図かずお、鈴木慶一、桂三枝(※当時)、宮本茂など計8人。
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