水木しげるが〈21世紀の非モテ〉を描く脱力的な寓話『新・あり地獄』(1970年)
水木しげる(1922-2015)の短編漫画『新・あり地獄』(1970年/計6頁)。舞台は50年後の「2020年の日本」。『サンデー毎日増刊 劇画とマンガ』掲載。
『新・あり地獄』(1970年)のオープニングのナレーション
そして「もてない男」は「もてもての里」なる看板を見つけてしまう……。
ネットで異性に対する不満をぶつけ合う現在を予見していた??(大袈裟)
私も底辺の弱男ですが、真剣に読むものではないけれども、本作のオチは、個人的にイマイチ。私は山上たつひこが「男女のルッキズム」を描いた短篇漫画↓『わが美しきバラ色の世界』(1971年)がオチの切り返しも見事で好み。
独裁者が「美の基準」を強制的に捻じ曲げたポリコレ?な未来を描くSF。この世界では以前の価値観の〈美女〉が〈醜女〉として嘲笑・侮蔑の対象。
山上たつひこ(1947-)は、古い漫画好きなら知っている『喜劇新思想大系』(1972~74年)で本格的に「頭がおかしい」漫画を描く前の生真面目な時代。
『新・あり地獄』関連作?では、未見だが、安部公房の小説(1962年)を映画化した『砂の女』(1964)、私はイマイチだった映画『鬼婆』(1964)あたりか。
評論家の呉智英氏は、大学生時代に水木の下で資料整理のアルバイトをしていたらしいが、水木しげるの人間性を「明るいニヒリスト(虚無主義者)」と評していた。「明るさ」と、一般的に暗いイメージの「虚無的」という相反する要素が結びついた性格らしい。私が水木で読んでいるのは、古本で買ったサラ文庫『悪魔くん』と講談社漫画文庫の『丸い輪の世界』ぐらいです。
『新・あり地獄』掲載誌(毎日新聞社)の書影と目次。イラストは赤瀬川 原平
『新・あり地獄』が収録された『怪奇と風刺作品集』(2011年)の帯付き書影
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