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宮部みゆき作『神無月』を語る 其の参
photo by Osamu137
『神無月』その後
本作のクライマックスで、二人の男…すなわち、岡っ引きと押し込みが夜道を駆けていく。
擦れ違うことのないふたりの背中を、それぞれの背負った月が照らしている
そしてー
神様は、出雲の国に去っている
結末は読者に託される。舞台で言うなら、ご覧下さるお客様に託すのだ。だからこそ、語り手の中に確信が必要である。
悪役
主要な登場人物が皆こんなに情け深いのに、何故悲しく辛い話なのかー。
しかし、温厚そうな顔の悪人を見つけた。「薬でなだめることは出来ても芯からは治せない」と診断する、娘の主治医だ。
江戸時代、小石川養生所があった。幕府が江戸に設置した無料の医療施設。享保から幕末まで140年あまり機能した貧民救済施設だ。病弱な娘ーおたよこそ、こういう所で治すべきではないか。
時系列
交互に展開する二場面は全く同じ日では無いかもしれない。
岡っ引きが居酒屋で親父と話したのが神無月の初め。大男が押込みに出かけるのが十日前後とする。
岡っ引きは、数日をかけて大男の正体と住処を突き止める。そして、男が押し込み先へ向かう途中で彼らは交わる。ー擦れ違うことはないのだから。
岡っ引きは言う「俺はお前の味方だ。一緒に来い」と。そして、親父の待つ居酒屋へと向かう。岡っ引きと親父の前で、男はすべてを語る。
それを聴いた岡っ引きは、娘のおたよを小石川養生所へ入れる計らう。更に男へ、生業の傍ら岡っ引きの手下になり、今まで盗んだ金を少しづつでも返していこうと話す。
自分ではリアルな設定のつもりだが、さて如何なものかー。
photo by Osamu137