![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34094897/rectangle_large_type_2_b9378d247d1d864610bfa6f40ac82dcb.jpeg?width=1200)
コロナ渦で近くなったラグビー界とファンの距離〜もうファンを選ばない〜
1.遠くのスターより、身近なヒーロー
釜石SWvsヤマハの『ともだちマッチ』
同日午後に放映されたオールブラックス南北対決は、確かにハイレベルの素晴らしい試合だった。しかし、国内チームの試合は、別の意味で面白いし、なにより感慨深かった。
ラグビーが日本にも帰ってきたのだから
『自分に身近なチーム』という意識があると、ただ競技として『観戦』するだけでなく、『応援』したくなる。
応援=私に何かをもたらしてくれる期待の表れ
なのだろうか。
自分の応援でチームの勝利、発展に貢献したい、という気持ち、それは、
人の役に立ちたい、という『愛』なのか
チームに『自分自身』を投影しているのか
どちらなのだろう。
いずれにせよ、その気持ちが、試合観戦、グッズ購入等に繋がり、結果として、経済的にチームを支えることになるのだが。
2.曖昧だったラグビーファンの立ち位置
企業スポーツのラグビーは、ファンの経済活動がチームの経営や選手の給与に直接は結びつかない。チケットは協会が一括販売、試合もホームアンドアウェー方式ではない。ついこの間まで、驚く程各チームのグッズの種類は少なく、しかも『試合日にチームテントで販売』のみ、という信じがたい形態が普通だった。『あまり買わない』ことが前提の販売、とは、プロスポーツではありえない。
私はスポーツビジネスなんて知らない。
しかし、素人でも感じることはある。
思うに、企業スポーツの最大の問題は、選手に
ファンあっての自分達
という意識を植えつけにくいことにあるのではないか。
選手の多くは社員でもあるから、『生活のため』気にするべき人間は
監督、スタッフ陣
会社の上司
取引先
であって、ファンの優先順位は相対的に低い。
ファンがたくさんいたらいいな、ともちろん選手全員が思っているだろう。しかし、その程度のぼんやりした願望だけではファンは増えない。自らの積極的な活動が必要だ。しかし、足りなかった。圧倒的に。
新型コロナが日本中を覆うまでは。
3.近くなったチームとファン
コロナ渦は、W杯で人気沸騰したラグビー熱を冷ましたかにみえる。
しかし、3月から今に至るまでの各チームのSNS上の活動を見ていると、ラグビー界とファンの距離感、チームのファンに対する姿勢は大きく変わった、と感じている。
ファンあってのラグビーチーム
ファンあっての選手
という意識が程度の差はあれ、どのチームにも強く芽生えてきた。
4.大型企画も良し、手作りも良し
NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの『浦安アークス学園』企画は、あらゆる意味で革命的だ。衣装、映像、企画、全てが本格的だ。実際、選手の名前を覚えられる。かなり攻撃的な企画ではあったが、情報を扱う会社のノウハウが生きているのだろう。驚く程上質に仕上がっている。制服コスプレだが下品ではない、セクハラ発言も皆無、台本もよく考えられている。
予算を投じた分、間違いなくチームと選手をラグビーファン全体にアピールしている。
NECグリーンロケッツは、対照的に、
部員全員の暖かい手作り感
が売りだ。小さな企画で毎日選手が順番でSNS上に登場する。『毎日』ここがポイントだ。日々体を張って、時に芸もスベルがそれもご愛敬。企画もグッズも選手自身が考える、その過程も丁寧に伝えてくれる。過去の企画のアンケートまで取ってくれた。彼らは真剣なのだ。
グリーンロケッツの活動は
チーム、選手の、ファンへの寄り添い感
の大切さを日々教えてくれる。
5.もう客は選べない
ラグビー界のファン獲得活動。
もちろん、今までなかったわけではない。それなりにあった。
ただ、プロ野球や商業演劇に長年親しんできた身からすると、
ラグビー界は、自ら、あるいはファン自身が、ファンを選んできた、と感じる。
部活等で競技経験がある。学生時代からのラグビーファン。チームの所属企業、関連企業の従業員。家族がラグビー経験者、等。
こんなこともあった。
W杯後、ファンが各クラブの練習場に押し寄せた際、SNS上で、
『マナーの悪いファンに、ラグビー憲章を読ませたい。』『ラグビー憲章を読んでラグビーの精神をわかってほしい』という声を見つけた。
気持ちはわかる。わかるが、ちょっと待ってほしい。
日本国民なら日本国憲法をきちんと読んでこい。
と人に言われたらどう思うだろう。
余計なお世話だ。それなりにわかってる。
と言いたくなるだろう。日本国民は第21条『表現の自由』の文言をだれも暗記なんかしていないが、
『他人に著しく迷惑をかけない範囲でなら、どんな表現もしていい自由がある』ということくらいわかっている。
乱暴な言い方をすれば、
日本国憲法が保障する人権について、一般人の感覚で、ザックリわかっていれば、ラグビー憲章も同時に理解したことになる、
と思っている。
だから、よほど犯罪傾向でもない限り、みんなラグビー憲章が求めている人格を有していることになる。
ファンを選別して『お前なら入れてやる』と会員制サロン的な扱いを続ければ、ファンは一定数以上増えないし、娯楽が多様化する今では減少しか未来はない。
もう、ファンは選べないし、選ぶべきではない
Jリーグは発足時
『サポーター』
という日本人には聴き慣れない言葉で、ファンを広く募った。地域全体を巻き込んで。鹿島、清水、浦和、新潟、長崎等、現在地域経済の核になっているチームを挙げればきりがない。
6.選手を守るルールを
ただ、ファンが多様化するとトラブルも増える。世の中
『変質者』『ストーカー』
に悩まされるアスリートは少なくない。
同時に、選手のプライバシーを守るルール作りが必要だ。
ファンの自覚に任せてはいけない。『明確なルール』があってこそ、ファンは適切な判断ができるからだ。
選手も人間、ファンも人間。間違いもあるし、欠点もある。しかし、選手もファンも『等しく』人間としてその価値を尊重されなければならない。その許された範囲でチームとファンは互いを支え合えば良い。
チームはファンを選んではいけない
同時に
チームは、選手達にファンサービスへ過剰な我慢を強いてはいけない
その舵取りは難しい。しかしやらねばならない。