トップリーグと地域密着の難しさ②〜白金マダムも青山のお嬢様もブラックラムズは獲得できるか〜
港区北青山2-8-35
新たに売り出された高級マンションの所在地、
ではない。
秩父宮ラグビー場の住所だ。
銀座線外苑前から徒歩で約5分。東京の超スーパー高級住宅街が近くに控える。マンションなら1億円越えが当たり前、そんな地域だ。意外と下町風情が残る場所もあり、この街の歴史の古さを感じさせる。
神宮球場はヤクルトスワローズのホームグラウンドだが、秩父宮ラグビー場はどのチームも使う。企業スポーツであるラグビーの試合は協会主催なので、HOME &Away方式ではない。
新リーグに移行すれば、興行権は各チームが持つらしい。ホームグラウンドも必要になるらしいが、そもそも数は足りるのか?多くの会場は週末サッカーも使うのだ。
ラグビーはグラウンドが企業の工場もしくは事業所隣接地にある事が多い。社員選手が練習と仕事を両立できるのも、こういった環境に依る所が大きいのだろう。
企業は企業の都合により土地を取得して事業所を設置する。
サントリーと東芝は業種が違うから同じ市内にあっても問題はない。あくまで仕事上は。
工場も練習場も当然広い敷地が必要だ。したがって六本木や原宿青山に練習場はない。
ない、どころか、東京23区内に練習場を所有するのは、リコーブラックラムズだけだ。
世田谷区宇奈根1-5-1
東京でも屈指の高級住宅街『成城』を擁する世田谷区。人口約92万人。
宇奈根という地域は区内西端、お隣は川崎市、最寄駅からいずれも2キロ以上(徒歩で30分以上)ある『鉄道空白地帯』だ。
ブラックラムズの練習場へは車が必需品、ただ、住宅街なので最寄り各駅からバスは何本も通っている。そこは、世田谷区、なのだ。
都内現トップリーグチームは、府中市に東芝とサントリー、日野市に日野レッドドルフィンズ、町田にCanon、と東京西部に偏在している。
東京都の人口は約1400万人、その内23区は約948万人、なんとざっくり計算すると東京都の約68%が23区の住民なのだ。おかしいだろ❗️東京❗️
乱暴だが、単純に地理的に考えると、ブラックラムズは東京の東半分を丸取りする事ができる。しかも人口の7割近くを。
もちろん、スター軍団のサントリー、伝統ある強豪東芝が、所在地に関係なくファンを獲得している。両チームともラグビー界では全国区のチームだ。しかし、新リーグが、地元密着型、自腹で興業、となると、同じ市内の両チームは途端に身動きが取りにくくなる。府中市は26万人、この地元ファンを食い合うことになるからだ。
2019W杯から今までの流れだと、白金マダムも青山のお嬢様も、とりあえずサントリーを応援するだろう。垢抜けた社風に日本代表、代表候補がひしめくこのキラキラチームは、所在地に関係なく東京の富裕層を引きつけるだろう。
ただ、ファンクラブに加入してホームスタジアムに通うファン、となると話は全く違ってくる。ホームスタジアムが仮に味の素スタジアムだとすると、都心からは少し遠いのだ。
その意味で、ホームグラウンドが都心により近いチームがご贔屓になるだろう。となると
リコーブラックラムズのホームグラウンドはどこになるのか
これは大きな問題だ。
都心寄りになればなるほど23区住民は集まりやすい。彼らは同時にお金も連れて来る。
先日ブラックラムズの部員の方々が近隣の小学校のために見守り運動に参加されていた。
本当にいい活動だったと思う。
家事と育児に疲れたママ達の負担を減らすだけだはない。少子化、地域コミュニティの希薄化で、親以外の大人と言葉を交わす事が著しく減った都会の子供達。彼らに
『安心してご挨拶できる大人がいる』
事を日々伝えたのだ。身内以外との関係を構築することは子供の成長に不可欠だ。
ここで考えてみたい。
もう小学校は夏休みに入ってしまった。
仮に2学期から、ブラックラムズ部員の方々が交代で交差点に立ったとする。
男らしく頼もしい、そして優しそうなお兄さん達
子供達はすぐなつくだろう。それ以上にママ達もうれしいだろう。
『お母さんといっしょ』の体操のお兄さんみたいな好青年たちが、毎日交差点に立ってくれて子供達を見守ってくれるのだ。
変な意味ではない。男性方には判りにくいかもしれないが、母親、というものは自らの命を削って日夜懸命に次世代の命を育てている。これは大袈裟な表現ではない。孤独で過酷な都会の子育て。その辛さは想像を超えるものだ。毎朝交差点で素敵な青年達を目にして疲れた心が癒されることを責める理由はないだろう。
例えば、ここに年明けの大学選手権を見て早稲田大学の齋藤くんや中野くんのファンになったママがいたとする。
しかし、練習場が閉鎖されている今、直に彼らに会う術はない。
ところが、3日に1度、交差点に明大主将だった武井くんが慶大主将だった栗原くんと立っていたとしたら、、、
かなりの確率で武井くん栗原くんのファンになり、ブラックラムズを応援するだろう。
『遠くの齋藤くん中野くんより、近くの武井くん栗原くん』なのだ。
地域住民の日々の生活に寄り添ってくれる選手とチーム、その気持ちに応えてファンになる住民
これが地域密着チームをつくる基本だと思う
市内に61校もある小学校への訪問、幼稚園や養護施設、老人福祉施設の訪問、住民への働きかけ方法はいくらでもある。
人口92万の世田谷区を起点に山手線内に人気を広げていけるのか。
まずは2019W杯で生まれたサントリーライトファンをとれだけ取り込めるか、が課題だろう。
お手本はサッカーの鹿島アントラーズだろう。人口もさほど多くない鹿嶋市に生まれた地方チームは、先日クラウドファンディングで一億を超える資金を集めた。Jリーグ発足から約30年、チームと選手の努力の結晶だ。
朝、交差点に立つその数時間が、新たなホームグラウンドを一杯にしてくれる未来のファン達だ。
日々の小さな心遣いが、後日大きな後ろ盾となる。もちろん、トップリーグで結果を出す、これは言うまでもない。
ブラックラムズよ、このチャンスを逃すな。