ラグビートップリーグ サントリーvsキャノン練習試合☆初心者プチ観戦記
1.新しい観戦スタイル、だが、
YouTubeは苦手だ。
全く根拠はないけれど、見た後『無駄な時間を過ごしてしまった』という罪悪感に襲われてしまう。
明確な目的がなければ絶対見ない、それが私とYouTubeとの距離感だ。だから、
今日は見る。
ラグビートップリーグ
サントリーサンゴリアスv sキャノンイーグルス
練習試合、ではあるが、サントリーは春のリーグ中止以来初めての試合となる。
外国人監督、という事情が、チームの始動を著しく遅くしてしまったのか。とにかく、サントリーの部員は長期間忍従を強いられた。
試合勘は鈍っているだろう。いくら、強豪かつスター選手揃いのチームでも、試合となれば話は別だ。
対するキャノン。
知将 沢木敬介監督の古巣相手にチームも気合が入るだろう。
サントリー監督として2連覇
というメガヒットを飛ばした沢木さん、いわば
ラグビーベテランファンのアイドル
として男性ファンからの熱狂的人気を誇る。
かつてのヤマハのように、中堅から強豪チームへ変貌するのか、
キャノンイーグルスは、その意味で来季最も注目されるチームの一つだ。
この試合は、あくまで練習試合。
サントリーは前半後半で総入れ替え、後半に主力が集まる。前半は若手、といってもサントリーだからスター選手揃いだけど。
今回楽しみなのは
SO兄弟対決
だ。日本代表の田村優さんがキャノン、弟ひかるさんがサントリー。たしかお二人は4歳ほど歳が離れている。
サントリー練習場が、大量の松島幸太朗さんファンで混乱していた頃、キャノンは優さんファンで同様に混乱の極みだったらしい。その頃、ひかるさんは、全体練習が終わった後、毎回黙々と居残り練習をしていた。終始ニコリともせず練習に打ち込む姿は、彼の背負った複雑な立場をも映し出していた。
『ひかるさん、2023年はきっとひかるさんが代表になる、って、ここに来たファンはみんな信じていますよ』
ひかるさんの練習を遠目で眺めながら、私は彼の未来を祈らずにはいられなかった。あの時、サントリー練習場で彼の姿を目にした人全てが私と同じ気持ちだっただろう。
2.『息子』達の再出発
試合が始まった。
なんと懐かしい面々だろう!
私がサントリー練習場に通ったのはほんの短い期間だ。しかし、あの頃毎週目にした選手達は、息子のように自分に近しい存在として私の目に映った。そう、私が10代後半でママになった、と仮定すれば、ここに立つ選手全員が息子といっていい年齢差なのだ。
私もずいぶん歳をとってしまった。
どこか切ない思いが去来しながら、私は画面の試合を追うことになった。
それにしても、、
この音はなんだ⁈
耳を塞ぎたくなるような金属音が絶え間なく聞こえる。どうも音声トラブルに見舞われたらしい。
ついに、音声は一切なくなった。
無言の試合⁈私は事態が今ひとつ飲み込めないまま、試合の経過を追う事になった。
いや、スポーツ観戦に音って大事だ。無音だと、この先何が起こるのか予測がつかない。観客の歓声はないことに慣れても、選手の掛け声が聞こえないと、プレーの緩急が全く分からなくなる。リズムのわからないスポーツほど見にくいものはない。
私は、この無音の試合を80分見る事になるのだろうか?
不安になってきた。
3.新生キャノンここにあり
試合は前半終始キャノンペースだった。
たしかに、サントリーの試合勘は鈍っている。しかも前半は若手が多い。とはいえ、
質の高いサントリーの選手相手に、キャノンは全く臆することはない。
スピードある動きと無駄のない連携が、あっという間にサントリーの防御網を切り裂いていく。
それだけではない。ゴールライン近くまで攻めながらも攻めきれない事が多かったキャノン、今日は違う。
トライまでの道筋は、実にスムーズでスピーディーだった。気持ちよく得点がつみ重なっていく。
もちろん、サントリーも負けてはいない。しかし、大事なところでボールに手がつかない。チーム始動が遅く、これがリーグ中止からの初試合、という状況が如実に伝わってくる。
ひかるさんも終始厳しい表情だった。
対するキャノンは、初夏の沢木監督就任から、鬼の指導のもとみっちり練習を重ねて、たしかこれで3試合目なのだ。
キャノンが得点、サントリーが追う、という少々意外な展開は前半終了まで続いた。キャノンの攻撃はスピーディーで緻密だった。
今、大学ラグビーを見慣れているせいだろう。選手達の視野の広さ、体の強さ、走力、パスの正確さ、どこを見ても、それは全く次元の違うラグビーに見えた。
彼らは選ばれし者達なのだ。大学ラグビーで活躍した一握りの選手の、さらに一握りの選手達だけがここに立っている。
時折笑みを見せる田村優さんの存在感が、殊更大きく見えた。
前半終了、31-14 キャノンはダブルスコアでサントリーを引き離している。
いやいや、選手の皆さんお見事!
後半はいよいよサントリーの主力が登場する。
恐ろしいほどの追い上げが想像できた。
サントリー後半組は、総入れ替えだけに、すぐ全員がグラウンドにでて準備運動を始めた。
この前半の出来に、サントリー監督コーチ陣は何を思っただろう。
4.『日常』が戻ってきた
後半が始まった。
期待むなしく、後半も音声がない。無音の試合、じっとみていると、、なぜか
酔ってきた。 次の動きが予測しにくいせいか、車酔いみたいになってくる。
不安定な画面の中で、流さんの懐かしい姿を見つけた。
練習場で、連日溢れるほど多くのファンに応えていた青年。ほとんど苦行にもみえたその姿を私は驚きと敬意を抱いて眺めていた。リーグ中止後、彼は練習再開と試合を熱望しつつ7ヶ月以上の時が過ぎていた。そして今日ようやく訪れた試合の日。
流さん、やっとこの日がきましたね。よく辛抱しましたね。
無言のグラウンドに画面越しに声援を送った。
後半は予想通り、サントリー怒涛の攻撃だった。スピードもさることながら、外国人選手の体の強さが軽々とキャノンの防御網を破りゴールラインを超えていく。
ついに31-35とサントリー逆転!
しかし、ここからズルズル、とはいかないのが今日のキャノンだった。
すぐにトライを返し、
後半終了間際モールからダメ押しのトライ!
43-35 キャノンは競り勝った。
正直驚いた。
もちろん、練習試合であり、サントリーのメンバーも本番とは違う。
しかし、勝ちは勝ち、後半の最後のトライが今のキャノンの底力を象徴しているかのようだった。
いやいや、来季、この試合前半の隙のなさを発揮できれば、後半の勝負強さを発揮できれば、
いいところまでいけるんじゃないのか!キャノンイーグルス!
過大な期待は禁物、しかし、期待は膨らむ。
サントリーは、、別に心配していない。なぜなら
サントリーだからだ。
来季もスペシャルなプレー連発の華やかなラグビーを展開してくれるだろう。期待というより楽しみが大きい。
試合後、心になんとも言えない高揚感があった。
翌日、流さんのTwitter
『試合に負けてすごく悔しかった』
負けん気の強い人だった。東芝に負けた翌週の険しい顔を思い出した。
年が明けたら、優さんとひかるさんは兄弟からライバルになる。今日は優さんの勝ちだった。
彼らに、ラグビーに、日常が戻ってきた。
長い長い眠りからようやく目覚めようとしている。
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