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【1900字】運試し擬人化【毎週ショートショートnote】

たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加いたしました。

決して字数制限を気にしていない訳ではなく、200字、300字あたりからかなり意識をするのですが400字を超えもはや調整不可能だと思うと、堰を切ったように一気にイってしまいます。

今回も1900字で、これは私からの運試しです。〝時間の無駄だった!〟〝読み物として成立していた!〟さてどちらでしょう。今回はいつも以上に書くのが苦しかったです。では運試しをどうぞ。


舌切り雀の性悪おばあさんと、善良おじいさんがそろって秋葉原にやってきた。デジタル開運福袋が目当てだった。

ちょっと出遅れてしまったせいか店頭に並ぶ福袋は売り切れ続出で、ようやく見つけたはいいがその残り物は怪しさ満点だった。

路上に置かれた長机に寂しそうに福袋が3つ並んでいる。だが在るだけましだ。福袋にはそれぞれ自己紹介と称するA4の紙が貼ってあった。

「私は開運梅子といいます。私を選んでくださいね!私には世界を変える力があるんですよ。私の影響力で今後一生衣食住に困ることはないでしょう!グッドラック」¥5000ー

「私は招福竹男です。私を絶対選ばないでください。私を選ぶと一生働く意欲を失ってしまい、世間一般の人が味わう幸せを二度と味わえなくなります!ご注意を!」¥5000ー

「私は勝組松子。ところで竹、梅の二人はとんでもない嘘つきです。正直者の私をいうことを信じてね。私を選んでくだされば一生衣食住に困らないし、働く意欲もなくならないし幸せをいやというほど味あわせてあげます!よよよい、よよよい、よよよいよい!」¥10000-

二人は貼り紙を見てうなった。どうやら松を信じるか竹&梅を信じるかの二択だ。値付けはそれを想定した決め方のようだ。

性悪おばあさんの決断は早かった。松をそうそうに嘘つきと決め込んだ。自分と同類と見抜いたのだ。そして竹&梅の中から梅を選んで購入した。

梅のキャッチコピーが気に入ったうえ、竹と比べてサイズがわずか小さくて軽かったのだ。何より前回の大きなつづらと小さなつづらで学習していた。

そして善良なおじいさんの選択は竹だった。こんな自己紹介したら売れ残るだろうに!というやさしい配慮だった。

さて二人の運試しはどうだったのだろうか?

善良おじいさんの福袋を開けるとQRコードが書かれた紙切れが一枚入っていただけだった。〝それみたことか!〟とおばあさんはほくそ笑んだが、そのQRコードを読み取るとなんと今暴騰し続けている暗号資産だった。しかもそれは1単位だけでなく1万ユニットもあった。

善良おじいさんは一日にして億万長者になってしまった。ひょっとして今年のフォーブスの長者番付に登場するかもしれない。これから一生働かなくていいし、庶民の幸せは二度と味わえないだろう。

一方それを横で見ていた性悪おばあさんは態度をあらためた。一生おじいさんに添い遂げよう!新年の誓いだった。

と、同時に自分の福袋も大いに期待して開けたところUSBメモリーが出てきた。確か一生衣食住に困らない!とあった。どんなデジタル資産なんだろう?とわくわくしながらそのメモリを自分のパソコンに刺した瞬間パソコンがクラッシュした。

それどころではない。おばあさんのパソコンを起点にして世界中のパソコンにウイルスがパンデミックのように広がってしまったのだ。そのUSBメモリーにはかつてない史上最強最悪のマルウェアが仕込んであった。その被害規模も史上最悪となってしまった。

性悪おばあさんはなんとアメリカの国土安全保障省に逮捕され、キューバのグァンタナモの収容所に収監されてしまった。有無を言わせずだった。アメリカを脅威にさらすテロリストとみなされたのだ。

これで少々自由は制限されるが一生衣食住に困ることはなくなった。

二人の選択が命運をわけた運試しの典型だった。


とさ。


とさ・・・(-_-;)


勝組松子はどうなったのか?読者に投げっぱなしで良いのか?回収しなくて良いのか?

店主は言った。
「あ~あ、また今年も松子が売残っちゃったな。また来年の正月にでも頑張ってもらうしかないな」

実は松の副袋は10年前からこんなかんじだった。お客は松をすぐに嘘と見抜いてしまう上、それをあえて買おうするチャレンジャーは1人もいなかった。また松のおかげで竹や梅の副袋が売れるのかもしれなかった。

店主もそれを見越して竹や梅の内容にこだわり抜くというか凝りに凝ってしまう訳だが、今年はちょいとやり過ぎた。そして竹&梅と違って松の内容は10年前から相変わらずだった。

その松だが、確かに10年前は1万円でこの内容であれば詐欺と言われてもしかたなかった。その中身というのは2013年初頭の相場では2000円ほどだった。だがこの2022年の年末にはおよそ220万円弱の値段をつけている。なんとこの10年で1100倍だった。

そう、松の福袋の中身は1BTC、1ビットコインだった。

〝一生衣食住に困らないし、働く意欲もなくならないし幸せをいやというほど味あわせてあげます!〟はもちろんウソだが、どこかのヘソ曲がりが1万円で220万を引いたとしたなら運試しとしてはかなり幸運だといえるのではないか・・・と店主はつぶやいたのであった。

とさ。








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