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親切な暗殺 ll 【毎週ショートショートnote】

ゴルゴ13って白のブリーフだったんですね。しかもこの股上の深さは昭和です。そして宴会で浴衣がはだけると目に刺さるほどまぶしいやつです。案外とデューク東郷って保守的なんですね。

これがブーメランとかビキニだったらちょっと困ってしまいますが息の長い作品なので最近はボクサーショーツだったりするんでしょうか……

こちらの続編になります。


北アルジェのカフェでデューク東郷とチェスト西郷が密会をしていた。コードネームだとゴルゴ13と14だ。人混みがまばらなのにデューク東郷は壁を背にして立ち、チャイを手にしていた。チェスト西郷は世間に背を向けミントティーだった。

デューク東郷が必要以上に背後からの攻撃を警戒するのに対してチェスト西郷は背後にはまったく無関心だった。それもそのはず〝親切な暗殺者〟に手を出すものなどいない。世間からは無形文化財として認知されていたのだ。

今回のこの急なゴルゴ13と14のミーティングはチェスト西郷のたっての依頼だった。ゴルゴ14には〝親切な暗殺者〟としての迷いがあった。

内心ゴルゴ14がキテいることを警戒しながらもゴルゴ13はそのことをおくびにも出さずに相談にのった。

「一体どうしたというんだ?」

「小さな親切運動って知っているか?」

「ああ、小さな親切大きなお世話だろ……」

さすがデューク東郷だ。多くを語らずとも本質を見抜いている。

「俺のやってることって大きなお世話なんじゃないかって……」

チェスト西郷の最近の悩みとはこれだった。

「考えるな!感じろ!」

〝しまった!〟言った瞬間にブルース・リーの金言をパクった事に気づいたデューク東郷は心の中の焦りをまったく表情に出さずに続けた。

「……とよく言うじゃないか。だが俺からのアドバイスはこれだ!」

一気にあおった甘すぎるチャイにもまったく表情をしかめることなくデューク東郷は静かに言い放った。

「振り切れ!そして突き抜けろ!」


短い間だったがゴルゴ13に会って良かった。実り多いミーティングにゴルゴ14は感謝した。

それからというものゴルゴ14の仕事は見違えるように変わった。中途半端ということがまったく無くなったのだ

スポーツ選手がターゲットになればメジャーな大会の優勝が決まった瞬間に命を狙う、歌姫がターゲットになればグラミー賞の受賞式でとどめを刺すといった具合だった。

政治家であれば選挙の当確がでた瞬間が狙われ、ギャングの親玉であればその半生の映画化が決まった瞬間だった。

絶対に絶頂期を外さないため、ゴルゴ14に暗殺されるだけで伝説となれた。

そう、そしてその瞬間のお膳立てまですべてゴルゴ14のプロデュースだった。


ゴルゴ14の逆指名の暗殺希望者のリストはさらに膨らんだ。
こうなるとリストに掲載されただけで伝説だ。

それだけではない、リストの掲載順位を狙って大金が動くようになった。

ゴルゴ14は向かうところ敵無しだった。

一方ゴルゴ13に狙われたら絶対に助からないという評判も不動だった。そのためゴルゴ13に狙われたものは急遽ゴルゴ14に自身の暗殺を依頼することがお決まりになった。

誰だって非業の死を遂げるよりは幸せな死と伝説のほうが良いに決まっている。この手の仕事は特別に〝暗殺エクスプレス〟と呼ばれ、ゴルゴ14に依頼の際のオプションとして選択可能となった。

こうしてゴルゴ14はイーロン・マスクやジェフ・ベゾフと肩を並べるほどのミリオネイアとなり、ゴルゴ13は成功報酬がまったく入らなくなり廃業寸前まで追い込まれた。


ゴルゴ14がゴルゴ13に恩を返すときがきた。

「親切はまず笑顔から……」

恥を忍んでゴルゴ13はゴルゴ14と雇用関係を結んだ。この秋からインボイスが始まったし健康保険がついているのは有難かった。こうして嫌気が差してきつつあった個人事業主からゴルゴ13は従業員になった。これからはゴルゴ14の流儀に従うことになる。


「スマイル0円……」

人々は初めて見るゴルゴ13の営業スマイルに驚きを隠せなかった。


(1500字ぐらいです。ご精読ありがとうございました😁)


どうでも良いお話になってしまいました😭

たらはかに様の毎週ショートショートnoteに参加しました。








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