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【ネタ記事】2021年原巨人 悲願の日本一奪回

「とても、とても長く、険しく、辛い道のりでした... しかし、我々は紛れもなく、ペナントレースを制し、宿敵を破り、ここに日本一となりました!」

2年ぶりの全席解放満員御礼の東京ドームで指揮官 原辰徳の声は響いた。その目に浮かぶ涙が映すのは超満員のスタンドか、それとも苦悩の9年間か...

渦中の球春到来

昨年はコロナ禍で球界も開幕延期、試合数削減、無観客試合・人数制限などの影響を受けた。
そして今季もコロナウイルスの猛威は衰えることを知らず感染対策のため例年であれば海外で自主トレを行う選手たちも国内で調整となり新外国人も来日延期。春季キャンプは無観客で行われた。

そんなキャンプでも明るい話題は多かった。
1位キャンプに抜擢されたドラフト1位の平内龍太がオープン戦で16イニングを自責2と好投するなどアピールに成功。また、こちらも新戦力の井納翔一も実戦で3戦無失点と上々の仕上がりを見せる。
野手もベテランの亀井や中島が絶好調で開幕スタメンの座を狙いに行ったり、負けじと若い松原や北村も結果を残すなど良い相乗効果が生まれていた。

そうしてOP戦も3位とまずまずの仕上がりで開幕の日を迎える。

強行開幕、しかし

開幕1週間前の時点で感染状況は決して良化しているとは言えなかった。しかしNPBは延期や試合数削減はせず、2年連続での無観客開幕を決行。賛否はあった中での"強行開幕"だった。

しかし巨人軍はなかなかエンジンがかからない。
4番岡本の不振や、救援陣の炎上。開幕3カードを終えてまさかの2勝7敗。暗雲立ちこめる中チームを救ったのは途中合流となった新外国人だった。

スモークはデビュー戦でホームラン含む4打点を挙げ、テームズは2試合連発など、4カード目からの3カードでの成績はスモークが.402 2本塁打 7打点、テームズが.382 3本塁打 5打点と打棒を見せつけ打線を建て直した。
するとカード2周り目からは4カード連続勝ち越しなど息を吹き返し、3,4月を勝率5割まで戻した。
原監督は後にこう語る。
「あの時期の彼ら(新外国人)の存在はとても大きかったですね。彼らも異国の地で尚且つこのご時世で調整も大変だったと思いますが、低空飛行のチームにメインエンジンがかかったようなね?そんな活躍でしたよ。」

新戦力の台頭

5月に入ると先発陣の活躍が目立った。
今年から投手チーフコーチ補佐として入閣した桑田真澄の指導により先発投手の完投数が増加。
5月終了時点で菅野3完投、戸郷とサンチェスが1完投ずつ、そしてルーキー平内が2完投するなど序盤から驚異的なペースで完投し続けた。
野手ではスモークが健在で5どの猛打賞など月間打率.348 8本塁打 15打点とチームの得点源となった。
また、こちらも新戦力の梶谷も開幕は躓いたものの5月は月間打率.315と目を覚ましてリードオフマンとして打線を引っ張った。

交流戦男

5月下旬から2年ぶりに交流戦も復活。ここでの成績がペナントにも影響する大切な時期に、巨人にアクシデントが発生。絶好調スモークが怪我で戦線離脱。更にこれまでチーム最多のスタメンマスクを被っていた大城も離脱と、まさかの事態に。
しかし、救世主となったのがスモークに代わり一軍登録されたウィーラーだった。
それまでの鬱憤を晴らすかのように打ちまくり交流戦首位打者争いを繰り広げるなど、.327 5本塁打 17打点とスモークの穴を埋めた。
また、この交流戦で3試合に先発し3勝。16イニングを自責3、防御率1.69と躍動したのがサンチェスだ。
彼ら外国人選手が交流戦男となったこともあり、チームは交流戦を2位で終え、リーグ順位も首位に躍り出た。

主砲の帰還

7月に入るとそれまで好調をキープしていたテームズの当たりが止まり始め、怪我から復帰したスモークも開幕直後ほどの状態には戻らず、チームも4試合連続5安打以下と極端に得点力が下がった。
しかし、このタイミングでそれまで不振に喘いでいた4番岡本が復調。3,4月.205 5月.254 6月.267 と打率は上がっていたものの、2本→5本→5本と横ばいだった本塁打が7月だけで11本に倍増。2試合連続本塁打を3回記録して打点も18と、主砲としての役割を果たした。
また、エースの菅野がこの月は無双。4度の登板で3完投し、34.2イニングを投げ防御率1.56で月間MVPに輝いた。
チームも首位をキープし8月に入るのだが、チームにはもうひとつ懸念材料があった。サカマルの状態と東京オリンピックである。

静かな侍と五輪

一昨年、昨年とリーグ連覇の立役者である坂本と丸。昨年も夏場まで状態が上がらなかったが、今年も昨年程ではないにしろ、抜けて状態が良い訳でもなかった。
坂本は3.4月を.291でまずまず乗り切ったが、丸は例年同様.249とスロースターターっぷりを発揮。
5月も先発投手や新戦力の活躍で目立たなかったがサカマルは共に打率2割台半ばに終わっていた。
それでも2番坂本 3番丸の打順は崩さず我慢しながら起用していくと6月下旬に坂本が4安打で復調の気配を見せ、7月上旬には丸が3試合連続猛打賞と本来の打撃が戻る。
しかし、そのタイミングで東京オリンピック日本代表メンバーに坂本,岡本,丸,菅野,中川が選出され離脱。
中心選手を欠く中でも梶谷,スモーク,テームズら新戦力や亀井,中島らベテラン、立岡,北村,若林,湯浅ら若手〜中堅の選手にもチャンスが与えられ北村は月間打率.372、湯浅は月間2本塁打、立岡は月間打率.405をマークするなどチーム全体で主力の穴を埋めた。
投げては7月0勝だった戸郷が1完封含む3勝、ルーキー平内も2勝、更には3年目の横川がプロ初勝利を記録するなど若い力が躍動し、心配された五輪期間で勝ち越し5を作り早くも首位固めに入った。

代償

8月終了時点でチームは2位阪神に4.5ゲーム差を付けての首位。また投手防御率は3.10でトップ。チーム打率も2位で得点が1位と、投打が噛み合っている印象だった。
が、ひとつ特徴的なデータがある。完投数だ。
前述のように今季から入閣した桑田真澄投手チーフコーチ補佐により完投数が激増。球数は最多で戸郷の128球とはいえ、両リーグダントツの16完投(8月終了時点)を記録している先発陣の疲労は半端なものではなかった。
懸念された故障者は出ていなかったが、8月下旬に戸郷とサンチェスが相次いでKOされる場面も目立った。
開幕からチームを支えた先発陣。しかしシーズン終盤に入ってそのツケが回ってきたようだ。

猛追

9月は先発投手が5回持たず降板→救援投手の小刻み継投が多くなる。
前半戦までは登板数が軒並み少なかった救援陣もここに来て連投が増えていた。
中川、大江が2度の3連投、高梨は5連投、鍵谷は3度の3連投など、救援陣までも疲弊していた。
すると取れた試合も落とす場面が増え、2位の阪神に一時0.5ゲーム差まで詰め寄られる。
この当時を宮本投手チーフコーチはこう振り返る。
「ここが踏ん張りどころだぞっ!てね。前半はスターターが頑張ってくれたんだからここはお前たち頼むぞ!って毎日伝えてましたね。」
一方桑田投手チーフコーチ補佐は、
「先発投手が長いイニング投げてくれたことは良かったのですが、前半は先発投手頼みで、後半は疲れたから救援頼み という極端な起用になってしまったのはまずかったですね。我々の反省すべき点です。」
しかしこの難局を救ったのは、やはり新戦力だった。

死守

観客の入場制限が緩和され、スタンドにお客さんが70%戻ってきた9月下旬。この男も戻って来た。井納翔一である。
開幕ローテーション入りを果たし、5勝を挙げていたものの7月に肘の違和感で登録抹消。そして万全を期してこのタイミングで戻ってきた。
復帰後は中継ぎに配置転換され、ロングリリーフや連投もこなし、昇格後10試合のうち5試合に登板し8イニング無失点と窮地を救った。この流れに乗ったチームは怒涛の7連戦を6勝1分で駆け抜け、同時期阪神が連敗を喫したこともあり、マジック6を灯した。

天王山

10月中旬。マジック6で迎えた巨人は2位阪神との直接対決3連戦を迎える。巨人の三連勝で優勝。三連敗でマジック消滅という大一番だ。
初戦はエース菅野。ここまで18勝を挙げ最多勝のタイトルを確定させているが、この日も冴えまくった。
序盤糸原に1発を浴びるもののその後は危なげないピッチングで無失点。
打線は阪神先発西に苦しむものの5回にスモークの2ラン、6回に坂本のソロで主導権を握り、最後はデラロサが締めてマジック4とした。

2戦目の先発はサンチェス。初回に満塁のピンチを背負うもののサンズ、ロハスを連続三振に斬って凌ぐ。
するとその裏、打線が連打と四球で二死満塁とすると6番梶谷のグランドスラムで4点を先制。その後は打ち合いになるものの8回に大城、吉川の連続タイムリーで試合を決めた。

そして3戦目の先発は戸郷。2年ぶりの優勝決定試合先発となるか期待がかかったが、5回まで無安打と圧巻のピッチングを披露。
打線は青柳を攻めあぐねるものの、7回に押し出し四球で先制。さらに投手の代わり目に坂本、丸の連続ホームランで試合を決めた。
マジック点灯後足踏みが続いた昨年とは打って変わって見事3タテで虎退治に成功しリーグ3連覇を成し遂げた。原政権で3度目の3連覇である。

「こうしてペナントを制して、皆さんと球場で喜びを分かち合えることを喜ばしく思っております。山あり谷ありのシーズンでしたが、皆様のご声援のおかげで優勝することが出来ました。しかし、今日の喜びは明日には引きずらず、明日からは切りかえて、我々の目標は日本一な訳ですから、そこに向かってまずはCSを戦っていきたいと思います。」

圧巻

2年ぶりに開催されたCS。そのファイナルステージに進出したのは2位の阪神ではなく3位ヤクルトだった。
持ち前の強力打線を引っさげて東京ドームに乗り込んできたが、そこに立ちはだかったのは令和初の20勝投手、菅野だ。
十分な休養を経た菅野は序盤から圧巻のピッチング。
5回までに被安打0。9つの三振を奪い、強力打線を封じ込める。
打線は相手先発小川の前に4回までノーヒットだったものの5回のスモークのヒットを足がかりに大城のタイムリーなどで3点を先制する。
菅野は崩れる気配がなく、8回終了時点で16奪三振。被安打はなんと0
3年前の記憶を蘇らせている間に試合終了。
3年ぶり2度目のポストシーズンノーヒットノーランだった。

その勢いで第2戦、第3戦とヤクルトを3試合連続で完封勝ちで取り、日本シリーズ進出を決めた。
また、同日に福岡では、日本シリーズでの巨人の対戦相手が3年連続でソフトバンクだと決まった。

「こうしてリベンジのチャンスを頂けたことを嬉しく思います。"二度あることは三度ある" ではなく、"三度目の正直" で闘います。」

戦地 福岡

福岡での初戦は菅野-千賀の投げ合い。
投手戦になると思われたが試合は初回から動いた。
この日1番に入った梶谷が先頭打者初球ホームラン。さらにスモーク,大城にもホームランが飛び出し、3回までに3点を先制する。
一方のソフトバンクも、甲斐,栗原のタイムリーなどで反撃し2点を返すが、そこからは試合が拮抗。
4,5,6,7回は両軍無得点で迎えた8回。巨人は先頭の大城が四球で出塁すると続く吉川が送りバントでチャンスを作ると、この日マルチ安打の梶谷がタイムリーを放ち、欲しかった追加点を挙げる。
4-2で迎えた9回裏。マウンドにはデラロサが上がったが、およそ3週間ぶりの登板ということもあったからか、なかなかエンジンがかからない。
連打で一死2,3塁のピンチを招くと1番周東に犠牲フライを打たれ1点差に。続く打者は中村晃。
カウント2-1からの4球目はライトスタンドテラス席に消えていた...。

2戦目の先発に抜擢されたのは戸郷でもサンチェスでもなく井納だった。直近5登板はいずれもリリーフながら自責点0で抑えており、白羽の矢がたった。
「初回から飛ばした」と言う通り4回まで無失点と快投を見せる。
しかし打線が先発石川を攻めきれない。坂本が2打席連続で二塁打を放つも後続が抑えられ6回まで無得点が続いた。
0-1で迎えた7回、先頭の岡本が四球で出塁すると、1死2塁とし、この日6番に入った大城が左中間への逆転2ラン。
この日2三振だった男が意地を見せた。
そしてそのまま最終回は前日の雪辱を果たすべくデラロサが登板。2死3塁のピンチを招き打者は昨日と同じ中村晃。
3-2からの7球目はこの日のヒーロー 大城のミット内に収まった。
153km/hのストレートで空振り三振。巨人は3年目にして初めて日本シリーズでソフトバンクに勝利した。

本拠地での快投

本拠地東京ドームでの日本シリーズは2年ぶりだ。
そのマウンドを託されたのは戸郷だ。
昨年,一昨年と、21歳ながら過去2年間の悔しさを知っている戸郷はリベンジに燃えていると思いきや冷静だった。
「三振を取りに行くというよりは打たせてとるのを意識したいですね。少しでも長いイニングを0で抑えれるように頑張ります。」

だが、その言葉に我々は裏切られる。
なんと6回まで僅か1安打。しかも奪三振は12という驚異的なペースでソフトバンクの打者を斬っていく。
球数は101球と多めではあったが疲れも感じさせない圧巻の投球だった。
打線は坂本,丸のタイムリーや中島の犠牲フライなどで効果的に得点を重ね6回までに4-0とリードする。
7回にこの日初めての四球を与えるものの後続を落ち着いて打ち取りお役御免。7回1安打1四球13奪三振という内容で個人的なリベンジを果たした。
そして試合は8回中川、9回デラロサと繋いで巨人が連勝。

流れは完璧だった。あと2つで本拠地で日本一となる...

しかし...

第4戦はサンチェスが先発。3回まで1失点とまずまずの立ち上がりを見せる。
すると打線は3回の裏に吉川のホームランで同点に追いつき試合は振り出しに。
しかし4回の表、サンチェスにアクシデントが襲いかかる。
甲斐の打球が右足を直撃。応急処置の末1度はマウンドに出てきたものの、投球続行は不可能と判断され無念の降板。
ロングリリーフで結果を残した井納は先発しておりベンチには居ないし田口はベンチ外。1点勝負の場面で場内にコールされたのは
「ピッチャー サンチェスに代わりまして桜井」

この年リリーフ専任で27登板。防御率は5.17と不本意な成績に終わり終盤は二軍で調整を命じられていた。
しかし、こういう場面が来るかもしれないと、原監督はロングリリーフ要因として桜井を昇格させていたのだ。

開幕カード3カードでまさかの5被弾。決して信頼されている訳では無かったはずだったが、この起用に桜井の心は燃えていた。
4回途中から3イニングを無安打無失点。紛れもなく今季1番の投球だった。特に柳田を三球三振に斬って取った場面は鳥肌が立った。

これで勢いに乗った巨人は同点の8回、二死2,3塁のチャンスを作ると、この日3三振だった4番岡本が意地の3ランで勝ち越しに成功。
王者ソフトバンクに競り勝ち、ついに日本一に大手をかけた。

最終決戦

第5戦は観客入場制限を無くし、およそ2年ぶりのスタンド超満員での開催となった。
マスクの着用は義務付けられ、大声もNG。だが、こうして野球という日常が帰ってきたんだと痛感する瞬間だった。

巨人先発はなんとルーキー平内。
開幕一軍スタートから1年間ローテーションを守り抜いた右腕は、前回登板から間隔が空いているため立ち上がりが不安視されたが3イニングを無失点と上々の立ち上がりを見せる。

打線は初回に坂本,丸の連打でチャンスを作るも後続が続かず得点には至らなかった。
試合が動いたのは4回。平内は一死2塁のピンチで4番グラシアルに痛恨の先制2ランを浴びてしまう。後続は抑えたものの6回までは0-2のスコアのまま試合が進んだ。

7回裏、巨人はテームズのヒットを足がかりに二死3塁のチャンスを作ると、ここで奇襲に出る。
今日ここまで3三振だった大城に代えて代打中島。
するとなんと8球連続ファール等で14球粘る意地を見せる。ここで昨年の第4戦、和田毅との勝負で14球粘った場面を思い出したのは私だけではないはず。
昨年は三振したが今年はライト線へ落とし、追撃のタイムリーとなった。

その後も両投手陣が粘りの継投リレーを見せ、1-2と1点ビハインドのまま試合は最終回。

マウンドには高梨。先頭の中村晃を空振り三振に取ると続く柳田も三球三振。そして続く打者は今日ホームランを放っているグラシアル。巨人ベンチは動く。
この場面で高梨に代わりマウンドに上がったのはビエイラだった。
初球は161km/hのストレートで空振り。2球目も161km/hのストレートでファール。間違いなく状態は最高である。
だがグラシアルも5球連続ファールと譲らない。

全球ストレートで160km/h越えの力と力の真っ向勝負。
2-2からの7球目、163km/hのストレートをグラシアルが捉えた。
快音と共に痛烈なラインドライブはレフトポール際へ。
確信歩きのグラシアル。
行方を見ずにマウンド上仁王立ちのビエイラ。

三塁塁審の手はファールを示していた。

グラシアルの猛抗議でビデオ判定も、結果は変わらずファールで試合再開。

運命の8球目、ビエイラ渾身の164km/hは空を切るグラシアルのバットの上を過ぎ去った。

場内は総立ち。
マウンド上では、お馴染みのドラミングビエイラ。

そして期待と熱気に包まれながら試合は9回裏に入った。

9年ぶりの頂

最終回、先頭は梶谷。ソフトバンクの守護神 森のストレートを見事にセンター前へはじき返してチャンスメイクする。
続く坂本は内野ゴロに倒れるも梶谷は二塁へ進塁。
得点圏にランナーを置いて打席には丸。移籍後2年間、日本シリーズでは力を発揮できず、戦犯とも言われた。
そして今シリーズもここまで打率1割台と苦しんでいた。

ベンチには好調の亀井もいる。
しかし原監督はそのまま丸を送り出した。

「あそこの場面で丸を代えるという考えはありませんでしたね。ヘッド(元木)は亀井も準備させてます。って言ってたけどもね。確かに亀ちゃんも状態は良かったけどね、あの場面は丸です。」

ストライク先行であっという間に追い込まれた。

しかし、丸は驚くほど冷静だった。

遊び球のカットボールが抜けてストライクゾーンに入ってきたのを見逃さなかった。

乾音

歓声

溜息

人々の様々な感情が入り乱れる中、ガッツポーズをしていたのは、丸。

逆転サヨナラホームラン

一人6連覇を達成しながらも、短期決戦に弱いと叩かれてきた男が真の"優勝請負人"となった瞬間だった。

「今日は自分に"はなまる"をあげたいです。」

お立ち台での丸はポーカーフェイスを崩して笑った。


防衛ではなく連覇

球団としてだけでなく、セ・リーグ全体としても8年振りとなる日本一。

原監督は日本一会見で、「我々は長く、苦しい戦いを制して、日本一になりました。選手たちには胸を張ってもらいたい。お前さんたち一人一人の力で勝ち取ったんだと。最高の目標を達成できたんだと。しかし、来季からの目標は"防衛"じゃないぞ と。連覇であることは変わりないけども、"2021年の巨人軍"から"2022年の巨人軍"が奪い取るんだ。そういう気持ちで戦ってもらいたいですね。
...そういうチームを束ねるのは私の仕事ではないのかもしれないですけどもね。」

激動の1年を駆け抜け、目標を達成した巨人軍。
我々ファンも多くの喜びをチームと分かち合う事ができた。素晴らしい、最高のシーズンだった。。。
ファンとはいえ、大きな達成感、満足感、優越感、そして少しの疲労感...

が、歓喜から1週間後の今日、我々は緊張感に包まれていた。


2021年巨人軍→2022年巨人軍へ

この日は菅野智之の海外FA行使の記者会見が予定されていることは数日前に知らされていた。

しかし、その会見の中継映像を見た時、我々は驚きで言葉が出なかった。

同席者には球団社長、全権監督で伯父でもある原辰徳、そして、2022年度読売巨人軍監督としてサプライズ同席していたのは紛れもなく、あの松井秀喜だったからだ。


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