原政権を支えた大型契約組の影で入団したトレード組たち
早くも開幕から3ヶ月が経とうとしている球界。
すっかり梅雨入りしてジメジメするし、6月は祝日も無ぇし何なんだよこの時期...と皆さんの愚痴を複雑な心境で聞く6月生まれの私にとっても肩身が狭い時期になりました。
まぁそんなことはどうだっていいんですが、そんなこの時期の数少ない楽しみといえばトレードですよね。
例年トレード期限が7月31日に設定してあり、交流戦も終えて普段なかなか見れない他リーグの選手や球団の情報も入りやすい6月半ば〜7月のこの時期はトレードが成立しやすいのです。
先日もDeNAとロッテの間でトレードが成立しましたが、トレードといえば読売巨人軍ですよね。
昨年の6月はウィーラー、7月は高梨雄平、一昨年にも6月には鍵谷陽平(と藤岡貴裕)と、第3次原政権の屋台骨になる選手の獲得もこの時期のトレードでした。
トレードって大きなお金が動くFAなどに比べて地味なイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、大型契約組に負けない成果を挙げたトレードも多く存在します。今回はそれらをいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
2019年
鍵谷陽平 (日本ハム→巨人)
(鍵谷陽平,藤岡貴裕 ↔ 吉川光夫,宇佐見真吾)
まずは冒頭でも触れた、2019年に藤岡貴裕と共に移籍してきた鍵谷陽平。
この年といえば第3次原政権が発足した年であり、広島から2年連続MVPの丸佳浩,西武から日本代表経験もある炭谷銀仁朗をFAで獲得し、マリナーズから岩隈久志,オリックスから中島宏之...と大型補強を敢行した年として記憶に新しい。
そんなこの年の6月26日に令和初のトレードで入団した鍵谷は、リリーフとして27試合に登板し、6ホールド,防御率3.00と夏場の苦しいブルペンを支えてチームの5年ぶりのリーグ優勝に貢献。
また、翌2020年はチームトップの46試合に登板し、13ホールド,防御率2.89を記録し、リーグ連覇に大きく貢献した。今季も頼れるブルペンリーダーとして多様な起用に応え続けている。
ちなみに鍵谷ら移籍の4日前に入団したのが守護神,R.デラロサで、言わずもがな第3次原政権に欠かせない存在であり、彼らの獲得はかなり大きいし、丸たちにも引けを取らない貢献度があると言える。
2008年
鶴岡一成 (横浜→巨人)
(鶴岡一成 ↔ 真田裕貴)
2人目は2008年に横浜から移籍してきた鶴岡一成。
この年といえば、ヤクルトから最多勝投手のS.グライシンガーと主砲のA.ラミレス,横浜からクローザーのM.クルーンを同時に獲得したことで有名な年だ。
同一リーグの主力外国人をまとめて3人獲得という後にも先にも例のない超横暴な補強の影で、6月10日にひっそりと入団したのが鶴岡一成だ。
鶴岡は、正捕手の阿部慎之助のバックアップ要因、所謂二番手捕手の役割を2011年までの4年間全うした。
移籍初年度の2008年はCSでホームランを放つなど日本シリーズ進出に貢献。日本シリーズは怪我で守備に就けなかった阿部に代わり全試合に出場した。
翌2009年はいずれもキャリアハイとなる160打席,2打席連続含む5本塁打,18打点を残し打率.261と、バットでもアピール。また"同期"入団のグライシンガーの専属女房としても印象に残っている。
2010年,2011年も出場機会は多くないが、二番手捕手として、かなり頼りになる存在だった。
本人がどう捉えるかは分からないが、個人的に"二番手捕手"と聞いて真っ先に思い出すのは鶴岡一成である。
2006年オフ
谷佳知 (オリックス→巨人)
(谷佳知 ↔ 鴨志田貴司,長田昌浩)
3人目は2006年のオフに入団した谷佳知だ。
彼については個人的に特に好きな選手の1人ということもあり、別で詳しく書いた記事があるのでそちらをご覧頂きたい。
2006年のオフといえば4年連続でV逸となったことで、2007年の優勝が至上命題だったこともあり、日本ハムからパ・リーグMVPの小笠原道大,横浜から先発の門倉健をFAで獲得した年だ。
谷は1年目から強打の2番打者としてチームトップの打率.318をマークするなど、この年の"主役"の小笠原と共に中軸打者としてチームのリーグ優勝に大きく貢献した。
その後も2008年,2009年と100試合以上に出場するなどスタメンでも代打でも大きな存在感を放った。
また、2013年まで7年間在籍という、トレード組では異例の長期在籍選手でもあった。
2006年
実松一成 (日本ハム→巨人)
古城茂幸 (日本ハム→巨人)
(実松一成,古城茂幸 ↔ 岡島秀樹)
木村拓也 (広島→巨人)
(木村拓也 ↔ 山田真介)
最後に紹介するのは今から15年前の2006年。
2件のトレードで3名の選手を獲得した。
この年はロッテから"アジアの大砲"李承燁,FAで中日から先発の野口茂樹,西武から抑えの豊田清を獲得した年だ。
彼らの陰に隠れて入団したのが実松一成,古城茂幸,木村拓也の3名だ。
まず日本ハムから移籍してきた実松と古城だが、交換相手が巨人で長くプルペンを支えてきた岡島秀樹ということもあり、多少は出血覚悟な上での獲得だった。
実松は当初一軍での出番は極極わずかだったが、前述の鶴岡の退団後は阿部のバックアップ捕手として重宝された。
またバッティングでも意外性を発揮し、2011年には阪神の藤川球児からサヨナラ打を放ち、お立ち台での「覚えてません」はあのシーズンの1つの名場面となった。
決して表立ってフューチャーされる場面や出場機会はそのものも多くなかったが、それでもトレード移籍後12シーズンも在籍したという点を見ると、数字には現れない、計り知れない貢献をしていたに違いない。
古城は内野全てを守れるユーティリティプレーヤーとしてチームに貢献。こちらも意外性のあるバッティングが魅力で、実松同様2011年に藤川球児から自身初のサヨナラホームランを放ち茂ちゃんフィーバーを巻き起こした。
原監督は古城について、「綺麗に言うと個性的だけど、悪く言えばやらかしちゃう。でも面白い選手だった」と振り返っている。
そして木村拓也は投手以外の全てのポジションを守れるユーティリティさに加えて勝負強いバッティングもできるスイッチヒッターという、非常に器用で使い勝手のいい選手だった。
2009年のチームを救った捕手出場試合は今でも忘れることは出来ない。
2007年,2008年はスタメン起用も多く、特に2008年には規定打席には僅かに届かなかったものの、2番打者としてキャリアハイの打率.293,5年ぶりの100安打,チームトップの26犠打と、繋ぎの打者としてだけでなく、逆転サヨナラ打を放つなど自分で決める試合もあるなど、リーグ優勝に大きく貢献した。
この3名に共通して言えるのは、優勝に貢献した名バイプレーヤーという点もそうだが、引退後も巨人軍に携わっているということだ。
実松は引退したのは日本ハムだったが、コーチとして2020年に巨人に復帰しており、古城も引退後ジャイアンツアカデミーのコーチ,スカウトを経て一軍コーチも務めた。(現在は二軍野手総合コーチ)
木村も引退後すぐ内野守備走塁コーチに就任するなど、移籍組にも関わらず長く巨人に携わっているという点は素晴らしいことだと思う。
まとめ
今回は大型契約組の陰で入団したトレード戦士たちというテーマでお届けしました。
今回は"大型契約組の影"という視点でしたが、他にもトレードで移籍して活躍した選手は多くいます。
また、球界全体で見ても、トレード自体は最近さらに活発になってきており、いい傾向だと思いますし、伸び悩む選手が飛躍するきっかけになって欲しいと心から思います。
また、今回紹介した選手たちのように移籍先で息の長い活躍が出来ればこんなに素晴らしいこともないと思います。
今季もこれからさらにトレードの発表があると思いますが、トレードもひとつのきっかけとして球界全体の風通しが良くなっていけば良いですね。
最後に、丸と梶谷の同時昇格により降格が濃厚な2012年トレード組の立岡宗一郎に心からエールを送り、締めとさせて頂きます。
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