取り壊した先祖代々伝わる小さな神社を、VRで8割増豪華に再建した話
clusterアドベントカレンダーの最終日ですね、今年ももう残りわずかです。はじめましての人も知ってる人も、9191(クイクイ)と申します。この名前も便宜上のもので、clusterでは名無しのIDが9191というシンプルなもので、かつ透明なアバターで人知れずワールドをさ迷うことでも一部では知られてます。
貴方は何故clusterを始めたの?そしてワールドを作ったの?
みなさん色々な理由があると思います、今の頃だとイベントとかを通じてというのが多いのではないでしょうか?。自分の場合はちょうどCOVID-19による自粛や様々なイベントの中止などが始まった2020年の春先でした。
知人の義足エンジニアである遠藤謙さんという方が新作の義足の板バネの発表を行うのにVRでやろうということになりました。思えばメタバースとの出会いはここから始まったのかもしれません。
そこから、clusterの知名度が上がるにつれて作品展・写真展などをcluster上で開催する人が増えてきました。もちろん実際に作品を目にする機会やその空気感を目にすることは何物にも代えがたいですが、いかんせん個展などをギャラリーを借りて行う負担はシビアです。イベントも、安全対策や諸々で気軽に行えない。つまり現実に置いて何らかの制約があったのでメタバースという新天地に流れ着いたわけです。
ちょっと700年くらい昔の話をしよう
9191の家は古い豪族(というと立派過ぎるけど)で、先の大戦で殆どの土地をなくして今は見る影もないという一族です。早世した祖父に至っては散財遊楽で、弓道をやるにあたり庭に弓道場を作って京都から先生を呼ぶ、すき焼きを一人で食べるなども伝え聞いています。また祖母も祖父亡き後は長兄に三つ指を突き、いわゆる「幼少時は父兄に、結婚したら夫に、夫の死後は子に従うこと」とする家でした。
あ、ちなみに9191はディズニーランドもなく、ベトナム戦争がようやく終わるかという頃の昭和の人間です。昭和のおっちゃんが令和でメタバースを語るってのも不思議な時代になったものです。
土地=名字だったりするのもあり、700年ほど昔には城があったりと(と言っても砦みたいなもの)歴史はあるようなのですが、残念ながらその末裔は今日を生きるのに精いっぱいということで、相続の問題もあるしで飛び地になってる残った土地を整理したりと着々と一族の終焉を目の当たりにしています。
手放した稲荷神社
当時の頃は自分が大病したのもあり、若干記憶が曖昧なのですが色々な整理の為に飛び地の土地にあった稲荷神社を手放すことになりました。少し遠い場所で滅多に行く場所ではありませんでしたが、年始の時など車で連れて枯れて遊んだりした場所でもありました。なんでもこの地域の東西南北に稲荷神社があり、その一つでもあったそうです。とはいえ詳しくはわからないですが、神社は神主さんを呼んで「神様を引き上げた」とのことでした。
ワールド「カミサマノイルトコロ」が生まれる
そんなわけで今年、ふとそんな昔のことを思い出し「メタバースになら神社を再建できるのでは?」と急に思い立ちました。そこまで立派な神社でもないし、でも人が入れるお堂みたいな大きさだったしと何となく物色して小さな神社アセットを用意しました。鳥居も豪華にして5~8割増しに立派に神社を再建してみました。文字通りカミサマをメタバース上に祀ったからこその「カミサマノイルトコロ」です
実家を出ているので当時の写真もないし、記憶をたよりに「それっぽく」してみました。ただ、それだけでは華がないというか、特にこうした神社は人に祀られてなんぼというか生活に溶け込んでる神様だと思ったんですよね。自分だけがバーチャル参拝するだけではないようにしたい、ということで懐かしい昭和の街並みをテーマにしたワールドにしてみました。尚、港町になってますが実際の神社の場所は海なし県なのでこれは作者の趣味です。
そして人にいっぱい来てもらうにはどうしたらよいだろうか?と考えた結果、WATさんの時計ギミックが目に留まりました。これは現実の時間通りにワールド内の時計が動くというもので「これなら現実の時間とリンクさせて時とともに変わる景色を作れないだろうか??」と考えて魔改装をしました、それはもう「ここから先はいじっちゃダメ」という警告も無視して。
結果として朝昼夕晩と深夜という5つの時間帯を表現することができました。・・・・・・とアッサリ言ってますが相当苦労しました、当時はもうバグがひどくて散々でした。
ちなみに夕方はホラーワールドになってます。これは舞台となった町のアセットが「アカイユメ」というホラーワールドで使わるる予定だったからです。アカイユメはガルペノ氏との合作ホラーワールドで、不思議な世界?に迷い込んだプレイヤーが真っ赤な世界を旅して脱出するというものです。ネタバレにはなりますが、プレイヤーは井戸に飛び込むシーンがあり、その先が本当は真っ赤な夕焼けの町に迷い込むというものがあります。そのため、アカイユメの井戸の水面にはこの町のアパートの部屋を写しています。
ただ、構想が大きくなりすぎて没にしましたが、もったいないし使おうかなと思ったので夕方はホラーワールドとなり、今ではちょっとした名物になっています。
ちょっと巻きですすめます
えっと、まったくもって語りつくせないのですが、その後このワールドに転機が訪れました。おはよう真夜中さんという方が「このワールドに住んでみたい」と何気なくいったのです。その時なんとなく「セーブ機能を生かせば可能ではないのか??」とひらめいて「住民システム」というものが生まれました。
住民システムとは、住民となったプレイヤーがこのワールドに訪れたときのスタート地点を「自分の部屋」にするというものです。
そうすることでこのワールドに親近感を持ってもらい、人の往来のあるワールドに祀られた神様も喜ぶのかな?というものです(まぁ無神論者なのですが)ワールドにプレイヤーの生活というか暮らしを疑似的に取り込んでみるという変わった試みでもあります。
今ではその住民も60名以上となり、物凄い大所帯になりました。秋には「カミトコ祭り」というものも開催し、延べ1000人以上の来客もあるという神様もびっくりなイベントとなりました。
さらに驚いたのは、このワールドが今日の時点でのべ3万5千名の来客と、1100以上のいいね(❤)を頂いているというものです。
(本当はその変遷も書きたかったのですが、今日は成り立ちのお話ということで)
これがカミサマの御利益というものなのかはちょっとよくわからないですが、まだ公開して4ヶ月というのを考えるとちょっとした記録なのかもしれません。
とはいえこのワールドは、過去に存在した神社をメタバースで再建したものだ。というくらいは何処か覚えていただければと思います。
もしかしたらこういうカタチで、かつて世の中にあったものがメタバースの中に残される時代が来るのかもしれません。メタバースは未来と共に過去もまた内包していくのかもしれません。たぶん
(イイカンジなこと言った風)
良いお年を