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800字の掌編です。
こんな感情はよくあることです。
影踏をして戯びましょう。
あなたは《カゲ》で、私たちは《ヒ》なのです。
あなたは《コ》で、私たちは《シュウ》なのです。
あなたは《イ》で、私たちは《ジョウ》なのです。
故、影踏をして戯びましょう。
月は心を貪ルモノ。
人ハ頤を叩くモノ。
気ハ全てを呑ミ込むモノ。
欲ハ夜ヲ狂ワスモノ。
アナタハコノヨヲクズスモノ。
故、影踏遠シテ戯ビマショウ。
アハ。
アハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハ。
*
何もないのに、何でもないのに、恐怖が湧き上がってくる。
お陰で眠気も催さない体になった。
寝れないうちに可笑しくなった。
聞いたことのない声がする。
意味のわからないことをいう悪魔がいる。
よくわからないが私は「コ」とか「イ」のようだ。
どうやら私は可笑しくなった。
身動きが取れずに、暗闇のただ一点を見つめている。
悪魔の囀りのせいで可笑しくなった。
なぜあの月は光るのか。
なぜ虫は音を発すのか。
風の匂いはなんだ。
なぜ身動きが取れない。
なぜ私は生きていられるのだ。
私に何ができる。
去んでいても可笑しくないはずだ。
暗闇の中から伸びた手。
私の口は塞がれた。
暗闇に浮かぶ二つの赤い光に見られている気がする。
いや、間違いない見られている。
おそらく、私の口を塞ぐ手の主はこの二つ目の”なにか”のものだろう。
その”なにか”がいうのだろう。
*
影踏をして戯びましょう。
あなたは《陰》、私たちは《陽》なのです。
あなたは《個》、私たちは《衆》なのです。
あなたは《異》で、私たちは《常》なのです。
故、影踏をして戯びましょう。
月は対なる機会をつなぐモノ。
人ハ日を弔ウモノ。
気ハ全てを呑ミ込むモノ。
欲ハ夜ヲ狂ワスモノ。
アナタハコノヨヲクズスモノ。
故、影踏遠シテ戯ビマショウ。
アハ。
アハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハ。
*
複数の無機質な手に押しつぶされて亡くなった。
陰は何をすることも出来ず、逆光に押しつぶされたのだ。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
是非クリエイターページへもお越しください。
梔子。
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