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梔子書房|作品発表の書斎
2022年7月27日 17:15
700字程度の掌編小説です。記憶の中にありました。私は色が好きだった。昔から絵をかくのが好きで、色の出方にこだわりがあった。赤は鮮やかに、ピンクは華やかに、緑は草木のように、青は心がすうっと軽くなるように。絵を描く時間よりも絵具を混ぜて色を作っている時間の方が長かった記憶がある。もしかすると、絵を「完成」させるというよりも、色を「完成」させていたのかもしれない。 十数年前のある日、5才だっ
2022年7月6日 13:06
700字程度の掌編小説です。久々に街へ出た。私の知っていた景色とは随分と違うことに少し動揺しながらも、ふと見つけた「鏡」という店に立ち寄った。店の中に席は多くないものの、多くの客が訪れているようだった。鏡という店名からは想像できないであろう、異国の“トウフ”という食べ物を使った甘い菓子を出している。味には自信があるようで私の他にも既に数名の客が匙を器用に使いながら食べていた。