贈与論レポート「返礼の義務を無効化するには?」
結論から言います。
返礼の義務を「健全な形で」無効化するのはむり(もっと頭いい人がんばって)。
返礼の義務を拒絶したり交換へと変化させることでこの義務を無効化することは可能です。
ただ、年賀状おくったのに返ってこない、なんていう事例はその関係性を損なうということをみなさんが知っているように、「関係性」を築いていく贈与においては致命的です。
このレポートでは先行研究として白紙@mzfzrdさんのスライドを参考にさせて頂いてます。
1、返礼の義務とは?
返礼の義務とは
「受け取った物に謎の力(ハウ)が付与されていて、お返しを強制させる力があるよ」
ということです。これは贈与論で見た南の島の事例ですが、現代でも年賀状やお歳暮などが返礼の義務を明確に表す事例として挙げられます。
贈与論によると
返礼の義務を怠る=関係性の断絶(または従属)
を意味することになります。
冒頭で挙げた年賀状が良い事例であり、これ以上の関係はあなたとは望まないというサインです。このような理由から「健全な」状態を保持したまま返礼の義務を無効化することは不可能だと考えました。
※ここで述べている「健全な〜」とは相手と1年に1回上連絡を取り合う対等な関係性を維持している状態のこと。
また返礼の義務の緩和を達成するための前提として、緩和されたことを「自分も相手もわかっている」状態が成立している必要があるとします。
ここで意見の食い違いが起きたら意味をなさないですからね。
そこで、このレポートでは返礼の義務を緩和する際に必要な条件について考えていきます。
2、先行研究
白紙@mzfzrdさんの贈与スライド
プロ奢Slackから見ることができます。
3、体験
事例としてぼくの元カノとの贈与体験を挙げます。当時ぼくはベタ惚れされていた側の人間でした。そのため時計やら漫画やらをもらったり相当な額を相手に使わせてしまった記憶がありますが、ぼく自身は大した返礼をすることもないまま、何の問題もなく関係性を維持することができました。恋愛関係が終わった後もたまに連絡がくるので、関係性が断絶していないとみなします。特殊な例ですが、ここには返礼の義務の緩和を見出すことができるのではないでしょうか?
4、考察
まずはじめに返礼の義務を緩和する対象が「自分」と「相手」のどちらかでそこに至るまでのアプローチが違う(はずだ)ということをみなさんに知っていただきたいです。
<緩和の対象が自分の場合>
みんなが喜ぶウンコを排出できるようにする
<緩和の対象が自分or相手の場合>
王になる
この2つどちらかが返礼の義務を緩和するために必要な条件です。
考察① みんなが喜ぶウンコを排出できるようにする
これに関しては至って普通の方法で、自分にとって価値が低いものを返礼として贈与できる状態にしておくということです。他の方も触れているため一般化された説明は省略します。
#贈与論レポート で調べると検索できます
ぼくの事例に当てはめると、元カノにとって価値が高いものはぼくの存在“そのもの”だからぼくはそこに存在するだけで返礼の義務を緩和し続けていたわけです。ぼくが存在するためには生きていれば良い。とすると生きている+αで余計なことをする必要がないから必要最低限のコスト(つまり💩)で返礼の義務を緩和することができます。
返礼の義務そのものを緩和するのではなく、返礼の義務によって生じる「負担」を緩和させるという考え方なんだなと思ってください。
考察② 王になる
つまり上下関係の構築をするということです。ぼくの事例を考えるとここでは明確な上下関係をみることができます。
立場が上の場合、特に恋愛関係においては自分が恋人のために行う行動そのものが返礼、もしくは贈与として成立します。
これは体験の贈与、言うなれば無形の贈与となります。無形の贈与はプライスレスです。また、いつ自分が贈与を受けたのかがわかりにくい、体験そのものが贈与であるため、複雑化され互酬性が働きにくいことが特徴です。
形として残りにくい贈与物というのは返礼の義務を感じさせにくい。記憶のどこかに残るだけです。これを頑張って応用すれば物品の贈与でも体験の贈与に無理やり変換することで返礼の義務を緩和することができるかもしれません。
つまり、返礼の義務を緩和させるには
「贈与に複雑性を持たせる」ことで贈与されたと認識できないようにするのが大切だ、ということです。
このように、上下関係がある中での贈与は無形の贈与を行いやすい、つまり返礼の義務が緩和されやすいということになります。
考察①、②小まとめ
・価値の差額を利用する
・贈与に複雑性を持たせる
ただ、ここで考察した範囲では自分の返礼の義務を緩和することが少し難しいため、返礼の義務が緩和されていることが相手にわかりづらいです。
返礼の義務の緩和というものは、自分と相手がそのことを共有していなければその関係性が断絶する危険性が高いから。
「10贈与したのにトータルで見ても1.5しか返ってこない!」と感じさせてしまった時点で僕の理論は破綻するわけです。
そこで少し別の方法を考えてみます。
考察③
最初の考察でも触れましたが、日常的に相手に贈与をしている場合が鍵となりそうです。
再度ぼくの事例で考えてみます。ぼくは謎のマグカップやチョコなどを1週間に1回程度の割合で細かく、かつ手紙やテキトーなストーリーを付属して呪いを少し高めた状態で贈与していました。
こうなると自分は贈与ストックが溜まっているわけですから当然、返礼の義務を感じることなく様々なものを受け取ることができます。
既に贈与が別の場所で成立しているケースですね。
ここで大切なのが「日常的な贈与は安く済む」ということです。これを1つにまとめて贈与すると贈った側も受け取った側も「なんかスゲーやり取りしちゃったな」と思いますが、細かい贈与は心的負担を軽減してくれます。
テレビあげるより、謎のタイミングでコンスタントにプリン贈与し続けた方が傷は少ないですよね。こまめに色々やるのが既にストレスだという人も存在しますが、諦めてください。
また、おまけ程度のものですが、ここでは受け取る側の考え方を変えるとより効果的です。全て自分の行動が相手に贈与されていると傲慢に考えるということです。ただしこの方法はドンキーコング並みのゴリゴリのパワープレイです。その上、明確な上下関係や、傲慢さを感じさせないプレイスキルが必要です。もしもこの方法を試すのであれば恋人が1番オススメだと思います。
「贈与のストック」をする
(この方法では返礼の義務を緩和したというよりは「先延ばしにさせた」という表現の方がより適切かもしれません。)
5、課題
以前、伊予柑さんが紹介した「ダンバー数」(友達には階層があるよ)という分類によって返礼の義務の緩和に必要な条件が変わるのではないか?
今回ぼくが例に挙げたものでは第0〜1階層のあたりまでしか通用しないような気がします。無形の贈与では可能ですが、日常的に呪いをかけるという行為は少し難しいです。2、3階層に対しての返礼の義務を緩和できるような方法がまだまだありそうです。
6、結論
<返礼の義務を緩和するためには>
・価値の差額を利用する
・贈与を複雑化する
・贈与のストックをする
これらが有効な手立ての一部かもしれません。
最後に
このレポート、えらい大変な割に大きく踏み込んだ結論に達することができませんでしたが、時間を忘れて没頭できて楽しかったです。ぼくのレポートに多大な貢献をしてくださった白紙さんと先行研究、贈与研究所のおもしろい皆さんには本当に感謝してます。ここでも既に贈与が発生している気がするのでここは緩和せずにきちんと返礼していきたいですね〜。
ではまた次のnoteでお会いしましょう。
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