赤い実はじけたと思ったら。
正直ストーリーはうろ覚えなのだけれど、ワードとしてずっと憶えているものがある。
「赤い実はじけた」
もし小学校時代、国語の授業で光村図書の教科書を使っていたのなら、ピンときた人もいるかもしれない。
『赤い実はじけた』著:名木田恵子
もう一度言うが、ストーリーはうろ覚えだ。
なので間違っていたとしてもご了承願いたい。
確か、少女の淡い初恋の始まりを題材にした作品だったように記憶している。
それ以来、昔馴染みの友人と「胸キュン」した!といった意味合いで、
「やばい、赤い実はじけた」
と、使用していたものだ。
以来、その癖は抜けず未だにこの表現を使用している。
無意識に使用した時に、そのワードに反応してくれた人がいると、
「おっ、おおぉ〜」
だよね、あれだよね、そうそうあれだよね、とニヤニヤしてしまうのだ。
現在、私は100%テレワークで仕事をしているため、会社に行くことはない。
今から書くことは、私がまだ出社してオフィスで働いていた頃の話だ。
私は背が小さい。小さいといっても155センチ程はあるので極端に小さいというわけではない。ただ、会社のキャビネットの上部に仕舞われている書類を取るには、背が足りない。
その日も、書類のファイリングをしようとキャビネットの中のファイルを確認していた。あろうことか、私が求めているファイルは最上段にある。
脚立は、入室にセキュリティカードが必要な部屋に仕舞われている為、持ってくるのが面倒くさい。
仕方がないので、背伸びをする。
若かりし頃のバレエ経験を基に、自分ができうる限り長細くなる。
指でカリカリとファイルの背表紙を引っ掛けて、少しづつ手繰り寄せる。
その時、背中に人の温もりと自分を覆う影。
指先に生まれる空間。
目線の高さに現れたグレー色のファイル。
「取りたかったのこれ?言ってくれれば良かったのに。気づくの遅くなってごめんね。はい」
パチン。
やっば、赤い身はじけた。
和田アキ子より身長のある、和田アキ子と同性の別嬪さんに。うん、背中の感触柔らかいなって思ってたから、分かってたけど。
もぉ本当イケメンさんだった。少女漫画あるあるご馳走様です。
相手は、同年代の子だったので、とりあえず
「ねぇ、赤い実はじけたんだけど」
と、自己申告したら相手も笑って通じていたので良しとしよう。
実は、その子もオタクという同志であったので、
「漫画でいくらあるあるパターンでも、現実ではなんでこんなにも起こり得ないんだろうね」「食パン食べながら遅刻遅刻って走っていても、絶対道路の角で誰にもぶつからないよね」「本屋で同じ本取ろうとして、テケテン(東京ラブストーリーのあのお決まりの曲の出だし)ってならないよね」
と、現実はそんなものだよねと慰め合いながら、漫画あるあるに華を咲かせたのだった。
そして、今日この記事を書くにあたり「赤い実はじけた」で調べてみたら、なんと著者である名木田さんは、あの『キャンディ・キャンディ』の原作者さんでした。
そりゃ、少女漫画の王道を分かっていらっしゃるわけだ。
あー、最近の私の赤い実全くはじけないんですけど、もう全部はじけ終わったとかそんな悲しいことないよね・・・?・・・え?
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