【駄文#2】「言いたいことは曲で言え」に思うこと

皆さんは、「言いたいことは曲にして言え」「自分の思いは曲に詰め込んで伝える」といった文言を耳にしたことはないだろうか?
こういうことは主に作者側が作詞におけるある種の意思表明として発言することがほとんどだが、私はミュージシャンとしてもリスナーとしても、これについてあまり共感することはできない。
言い換えれば、「曲にしない方がよいこと」だってあるはずなのだ。

曲にしない方がよい話題

最初に断っておくが、決して実体験を元に歌詞を書くなと言っているわけではない。
そのような歌詞にも数えきれないほどの名作があるし、私もそのような楽曲を作ったことがある。
では、曲にしない方がよい話題とは一体なんなのか。私の考えはこうだ。
「リスナーやファンに歪曲して伝わって欲しくない事柄」は、絶対に【歌詞以外の方法で】伝えるべきだと思っている。
もし、このような事柄を歌詞にして発表し、意図しない解釈をされて自分という人間が誤解されてしまうような事態になったら、これはもう取り返しのつかない事態になる。
1960年代当時のフォークソング等なら「時代の象徴」として見過ごされるかもしれないが、今はSNS時代。すぐに拡散されて炎上することは目に見えている。
自分のそうした行いで不名誉なレッテルを貼られては、一体なんのために歌詞で意思表明をしたのかわからなくなってしまう。
後から解説をするにしても、そんなことするくらいなら最初から文章で言えば良いだけの話である。
文章で誤解が生じないわけではないが、歌詞にすることに比べたらその確率はぐんと下がるだろう。
そもそも、歌詞というのは比喩や抽象的表現を使ったり、あえて言葉足らずな表現にしてメロディとのバランスを取ったりして作るものである。
言葉足らずな文章ではあらぬ誤解を生んでしまうということは、誰でも想像がつくだろう。
それは歌詞でも全く同じことだ。
どうしてもそのような歌詞をつけたいなら、出来る限り誤解を招かないよう言葉選びに配慮する必要がある。
逆に言ってしまえばそれ以外、つまり多様な解釈をされても差し支えない内容なら公序良俗に反しない限りなんでも歌詞にして良いと思っている。
普通に話せば寒いことでも、歌詞にすればすんなりと伝えられる。これが作詞の醍醐味だと私は思う。
最近では、歌詞の考察がどこでも盛り上がっているように感じる。だからこそミュージシャン達は、言葉選びに慎重になるくらいなら「これは曲にしないで、自分の口から伝えよう」とか、「文章で話せないようなことを歌詞にするのはやめよう」という判断を下す勇気も、作詞においては重要だと考えている。

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