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《短編小説集》なにがしかの話

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物語の半分はほろ苦さでできています
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2020年1月の記事一覧

幼馴染との帰省を決めた12月12日の夜の話

 子どもの頃から泣くのが好きだった。  だから、東京で暮らしたいと思った。  上京した理由を問われてそう答えれば、決まって相手は怪訝そうな顔をした。むしろ俺としてはその反応が意外で、さらに説明を加える羽目になったものだ。  ──東京は、日本で一番キラキラしている場所だと思うんです。  ──キラキラしているものを涙目で見ると、もっと輝いて見えるじゃないですか。  ──だから東京に住めば、泣くのが最高に楽しくなるなって思ったんです。  もう昔の話だ。具体的には、できたてホヤ