陰口に憧れた彼女とウェイを叫んだ夜の話
「──うっさいよね」
向かい席に座るイチノセさんが、唐突にそんな一言を発した。僕が「うん?」と首をかしげると、彼女は天井に向けた人差し指を小さく回す。
仕切り越しに降ってきたのは、学生と思しき一団のお喋りだ。
──「夏合宿さぁー、一発芸とかマジだるくない!?」
──「いやアレねー! 俺も聞いててマジないと思ったわ!!」
──「幹事長ってホント頑張りどころを間違ってるっつーかさ!」
宵闇に包まれた学生街の、安居酒屋。喧騒の七割、いや八割くらいは学生の会話で占