紫煙に霞む先に 七服目
彼は葉巻を嗜むときは、決まって書斎に籠る。
人とは滅多に紫煙を交わすことはなく、煙草も煙管もパイプも嗜まない。
ただ、ただ、独り静かにユッタリと葉巻を燻(くゆ)らしていた。
「嫌煙家の私を気遣ってかしら」
と書斎だけだった理由を考えながら、紫煙で霞んでいる彼の部屋を浮かべ、私は紫煙を燻(くゆ)らし、
「生まれてきてくれて有り難う」
と小声で紡ぐと、熱く辛くなった葉巻を置いて微笑を湛(たた)える。
きっとそれは、紫煙が彼に届けてくれると思って…。
そして葉巻は、スッと熱を失う。
視界を上げてると店内が明るく感じた。
一服目→
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