彼は葉巻を嗜むときは、決まって書斎に籠る。 人とは滅多に紫煙を交わすことはなく、煙草も煙管もパイプも嗜まない。 ただ、ただ、独り静かにユッタリと葉巻を燻(くゆ)らしていた。 「嫌煙家の私を気遣ってかしら」 と書斎だけだった理由を考えながら、紫煙で霞んでいる彼の部屋を浮かべ、私は紫煙を燻(くゆ)らし、 「生まれてきてくれて有り難う」 と小声で紡ぐと、熱く辛くなった葉巻を置いて微笑を湛(たた)える。 きっとそれは、紫煙が彼に届けてくれると思って…。 そして葉巻は、
お祝いを彼に告げてから、幾度か紫煙を燻らしていると、亡くなっている事を身を持って感じだす。 多分、命日だったら実感はできなかったであろう事…。 何故(なぜ)なら、また、仕事で何処(どこ)かに飛んでいて、私とチョット離れているだけと、変わらない日常と感じてしまうから。 今回は長いだけ。 今回は時間が取れないから連絡ができないだけ。 そう、変わらぬ日常と流してしまっていたと思う…。 一服目→ #紫煙に霞む先に#連載#小説#葉巻#紫煙#シガーバー#シガー#cigar#
紫煙に霞む先に 五服目 自分で燻(くゆ)らした煙で視界が霞む。 今日は彼が亡くなってから初めての誕生日。 命日よりも早く来る誕生日。 何故なら命日よりも1ヶ月くらい前にあったから…。 そう、それは、お誕生日を祝って1ヶ月後くらいのことだったの。 当時は衝撃が大きかったけれど、今では救いだと思える。 楽しかった、あの日を思い出せるから…。 ちなみに私は命日がいつか明確には覚えていない。 この日かな?と大体で覚えている。 その前後の鮮明な記憶がないから…。
葬儀の時に誰かが教えてくださったの。 命日よりも誕生日を祝ったほうが良いと。 終りを悲しみに暮れるよりも、生まれてきてくれて有り難うと始まりを楽しく祝う方が良いと。 この巡り合いに有り難うと感謝をする方が良いと。 そう、今日は彼の誕生日…。 一服目→ https://note.com/8umeco8/n/n199d7f178ce0 #紫煙に霞む先に#連載#小説#葉巻#紫煙#シガーバー#シガー#cigar#嫌煙家 #誕生日#お誕生日#お誕生日おめでとう#変わらない年#同い年
目の間には、私がぎこちなく浮かばせた何もない紫煙が重たく広がる。 「お誕生日おめでとう。」 そう、心で呟くと視界が霞む。 私は彼と同い年になってしまっていることが過ぎり、想いが溢れてしまう。 慌てて、タオルハンカチを取り出し、そっと目元に添えた。 彼は年を取らない。 何度、誕生日を迎えても…。 一服目→ #紫煙に霞む先に#連載#小説#葉巻#紫煙#シガーバー#シガー#cigar#嫌煙家 #誕生日#お誕生日#お誕生日おめでとう#変わらない年#同い年#お一人様#涙#
「いらっしゃいませ。」 ガラスの扉を開けると、お背の高い男性が陽気さを含んだお声で仰る。 私は人差し指を顔元に持って行き、一人という仕草をしながら、一名で葉巻も購入したい旨も伝えた。 先ずは奥へ案内されると調べた通り、店内は薄暗く紫煙は燻(くゆ)らている葉巻の所だけで視界は曇らない。 座り心地の良い革のソファーに荷物を置くと葉巻の販売室へ向かった。 彼の愛用していた銘柄すら記憶にない私は、相談した結果、細くて短い初心者向けにすることに。 席に着き、吸口をカットして
うメ子と申します。 Instagramにて立体と文章を掲載しております。 アカウント分利中にて立体の方に移動しきれていない文章も多数あり、整頓中です。 此方では文章を掲載させていただいております。 Instagramでは文字を少なくしてよみやすくしており、小分けになったママ、掲載させていただきます。 文章→ https://www.instagram.com/4.u.me.co.4?igsh=dDRmMDR1ajM1cHJ0 立体→https://www.instagra
薄暗い店内で彼が好んだ葉巻という物を燻(くゆ)らす。 煙の臭いが嫌いな私は、煙管(きせる)やらパイプやら煙草(たばこ)やらと同じく嗜(たしな)み方を全く知らない。 知っているとしたら、嗜むには色々と面倒なくらい。 だから、葉巻販売だけのお店では無理だと思い、 彼が通っていたお店は諦めることにした。 そうして換気が物凄く確りしてて且つ、 入りやすそうなカフェ&シガーバーを見つけてガラスの扉を開いてみていた。 二服目→ 三服目→ 四服目→ 五服目→ 六服目→
仕事の合間に、お茶を飲むことを繰り返していた。 何度かお茶のお代わりを尋ねられ、一度お願いしていたのでお茶はあるし温かい。 それは、何度もお代わりするのも失礼かなと一度だけお願いしたものだった。 一息ついていると、再びピアノが響き出す。 18時。 歌とピアノの音色を聴きながら、お茶を啜る。 白い小さな器に白い苺が1番上に乗っていた。 私は視界がボヤけるのを感じながら見つめる。 少しして、後一口であろうミカギイチゴのスパークリングワインに白い苺をソッと落とす。 ポトン
ショートケーキを食べ終えて、お茶が来たので休憩をしていた。 少しして、他の一品に手を伸ばす。 ゆっくり、ユックリ、ゆっくりと食べた。 そして、最後の一品、三種の苺だけになる。 一休みとお茶を飲んでから私はとうとう仕事を始めてしまう。 彼からは未だ未だ連絡は無い。
真ん中の段と別皿を食べ終えて、ポットのお茶も少ないですし頼みましょうと頼む。 上の段の目の前の一品は真珠の様に輝くお菓子が乗るショートケーキ。 初めから此れは、ミガキイイチゴのスパークリングワインと共にと思っていた。 さてとと一息入れてから食べようと、一息入れていると、バーカウンターにもう一度、先程と同じセットが並ぶ。 ただ、先程と違うのはMARTINIの隣に透き通る水色の瓶のBombay Sapphireが並べられていること。 シャカシャカ。 「もう嫌だわ」
真ん中の段の二品でお腹が少し一杯と感じてしまう。 如何しましょう? と一旦休憩をして、スコーンは別皿の甘食のソースを付けて食べたいなとジャムとクリームチーズと蜂蜜は諦めて…と考えていた。 なので、苺ジャムはティーカップへと咲かせた。 其れから、お茶の量といつ注文するかなどメニューを見ながら、一息入れ、バーカウンターを愛しいそうに眺めた。 落ち着いた所で、苺の形のピンクのスイーツにソースが掛かる一品をユックリと食べ、二杯目のお茶には蜂蜜を咲かせ、残りのピンクのソースと
お茶が届き、真ん中の段に突入。 目の前のスコーンは甘食なので後にし、後ろの二品を先にと手を付ける。 空腹感が無くなりペースが落ち着き、真ん中の段の一品目をユックリ味わって食べ終え、ふと、目線を上げると、目の前のバーカウンターにカクテルグラスが置かれていた。 グラスと中にオリーブが在ることからマティーニかな?と思う。 その側にはMARTINIの文字の緑のボトル。 シャカシャカ。 「ふふふ」 スーッと彼との思い出が過ぎる。 初めてのBARで憧れのマティーニを味わった時に出逢っ
アフターヌーンティーの為にと朝に軽く食べてからは口にしていなかった。 ですから、お恥ずかしながら勢い良く下の段をたいらげてしまう。 其のお陰で、一品取り忘れていることに気付き軽く落ち込んでしまうことに。 可愛い一品だったのに…と。 そうこうしていると、お供の一つのミカギイチゴのスパークリングワインは呑み過ぎないようにと一杯だけと決めていたので大切に呑んでいた為に、下の段を食べ終える頃には既にポットのお茶は空っぽだった。 次は今回用に調合されたと思うフレーバーのお茶をお願い
飲み物が運ばれる。 先ずはミガキイチゴのスパークリングワイン。 少し味わっていると、カモミールティー。 お御馳走と一緒に呑みたいので、ミカギイチゴのスパークリングワインは一旦置いて、カモミールティーをと落ち着いていたら、お御馳走が来る。 「此れが噂の外すとクリームが流れるのですね!」 「はい」 別皿のフィルムを外すとクリームが流れる一品は動画でも拝見していた。 そして、三段皿が来て説明をしていただいて、フィルムを外していただく前に 「撮影されますか?」 と仰っていただき、私は
談笑しながら席へ向かい、案内されたのはBARカウンターの前。 しかも、ピアノ席が後方と近かった。 直ぐに苺のアフターヌーンティーのメニューが運ばれる。 そう、既に目的をお伝えしていたので早かったのです。 「お飲みものは何になさいますか?」 私はシャンパーニュは止めようと思っていたけれど、ミガキイチゴ100%スパークリングに目が止まってしまう…。 思わず 「苺のスパークリングワインがあるんですね」 と漏らしていた。 店員さんがミガキイイチゴが珍しいと仰るのも相まって、頼んでしま