社外登壇してみようぜ、という活動を会社で始めてみた

自社の Slack で「#topic-presentation-at-tech-conference-社外登壇支援部」というチャンネルを立ち上げて、「登壇してみたいけど、、、」な人を応援する活動を始めました。どんな感じのことをしてるか残しておこうと思います。


社外登壇って面白くない?

社外登壇って楽しいんですよね。言うほど実績があるわけじゃない(し、なんなら自分の実績や技術内容はしょっぱい寄りだと思ってる)んですけど、私自身もここ3, 4 年くらいは社外への露出機会を持つように活動してたりします。GitHub のプロフィールにこれまでの実績を書いてます。

社外へのイベントやコミュニティに参加することの意義ってまあ色々あると思います。見出すメリットには実利的な部分もあるでしょうし、メンタル的な要素もあると思います。一番メジャーなのは社外の人と繋がることや情報収集、あたりでしょうか?

自分のモチベはたぶん以下の2つです。

  • 推しトピックについて語りたい

  • 個人としてのプレゼンス向上

メインの原動力は楽しさなんですけど、後付けで理由を挙げるとしたらこの2点かなぁ、と思っています

基本自分のことはコミュ障だと自負しているのですが、トピックに対する推し感情と適切な TPO があればなんとかちゃんと会話できそうだし、コミュ障なりに他人との繋がりは欲しがっている自覚があります。で、それを発散できる場所として登壇を見ている節があります。

自分が「推せる」話題について存分に喋りたいし、興味を共有できる誰かを見つけて意見を交わしたいと思っています。そういうのが一番楽しいです。知識欲と喋りたい欲が強いんでしょうね。その結果として、自分の登壇を見た誰かに何かしら新しいものを提供できたらいいよなーと。そんな感じです。

だいたい上記のような感覚で自分は登壇活動に楽しさを見出してるんですが、登壇して喋るトピックだけじゃなく、やってるうちに登壇すること自体も「推し」トピックの一つになりました。で、もっと同僚諸氏にも広めたいなぁと思いました。
会社的にも技術でプレゼンスを出していくことって大事なので、会社にメリット提供しつつ個人のプレゼンスも向上でき、そして楽しく、かつ学びがあるともなれば勧めん理由はないなと。

言うほど社内全般の事情や人を把握しているわけではないですが、私の視点ではまーーあおおよそ以下のタイプがいるだろうなと見ていました。

  • 興味ない、あるいは否定的(私からは直接観測できないので数は不明)

  • 興味なくはない。でも本業で成果出すことの方が最優先なので(これは本当にごもっとも)

  • 興味はある、でもハードル高くて踏み出せない(ここの層が割とたくさんいる印象)

試しに Slack で「#topic-presentation-at-tech-conference-社外登壇支援部」なるチャンネルを立ち上げて告知してみたんですが、同日中にそれなりの人数がすぐ集まりました。私は「なんだ、結構興味ある人いるんじゃん。そういうことなら多少なり支援できることがありそうだな」と思いました。

チャンネル作って人が集まったので、次は何を提供するか考えました。お仕事が忙しいのは私からは関与しようがないので、それ以外の部分にハードルを感じてる人を後押しする活動ができれば良いだろうと考えました。

何がハードルになるんだろうな?と自分なりに考えて、だいたい以下のような要素が主なんじゃないかと整理しました。

[1] 情報収集のアンテナ
単純にイベントの存在を知らないことでタイミング逃してるパターンです。
ホットなネタを持っててアウトプット意欲が高まっていても、それを披露する場所がタイミング良く重ならないとなかなか、、、という。

[2] アウトプットのアンテナ
よくある「ネタがない」問題です。ブログ書くときと同じで、ある程度は普段の仕事で意識的にしてないと「アウトプットするネタがない…」ってなりがちだと思います。

[3] 心理的なハードル
人前でのプレゼンって緊張しますよね。何言われるかわかったもんじゃないしで。大変よくわかります。
個人的には、登壇に感じるハードルとしてはこれが大方にとっての一番であろうと思っています。他のあらゆる理由はここの心理からスタートして派生したものなんじゃないか?とも思います。(いわゆる「確証バイアス」というやつです)

[4] 労力に見合うメリットが感じられない
実際登壇って大変ですしね。人によっては案件の機密保持や会社の統制上の理由など、個人の価値観の問題ではない部分にハードル要素がある人もいらっしゃるでしょう。

だいたいこんな感じで整理しました。

まず [4] について。
会社都合な話であるなら私から直接できることはないです。幸い自社はそのへんのハードルは極めて低い部類だと自負してますが、とはいえ社外の顧客を持つエンジニアにとっては機密保持のハードルが高いということもあるでしょう。
会社都合ではない、個人の価値観の話であるならば、私からは「登壇って面白いよ!」とプレゼンするくらいのことはできそうです。が、何により大きな価値を感じるかはその人の個性ですのでそれ以上は仕方のない話ですね。そもそもほとんどのエンジニアにとって登壇って本業活動じゃないわけですし

[1] については、自分が知ってて定期的な開催実績のあるカンファレンスをリストアップしてみることにしました。
本来的には仕事の成果やインプット/アウトプットが先にあるのであって、登壇情報のリサーチから入るのは邪道というか本末転倒というか、そう思う部分もありました。が、まあ、社外のイベントを知ることで自分のアンテナが刺激されることだってあるだろうと、そう割り切って自分が知る情報を共有してみることにしました。

[2] は「ネタがない」がどうして生じるのか、的な話を書くつもりですがまだ文章化できていません。
一言で言えば『普段の仕事から「今やってる検証、これをブログにするとしたらどういうタイトルと章立てになるかな?」と考えてみてはいかがでしょう?』的な話になります。

[3] の心理的ハードルが高い人に向けては、ご自身がぼやっと感じている恐怖感・不安感を的確に説明してくれる言葉があれば挑戦のきっかけ作りになるだろうと考えました。
だいたいのことは問題を正確に言語化できればアクションが取れるはずなので、自分なりに言語化したものを社内の wiki に書いてみました。

・・・とまあ、こんな感じで整理しました。

以降は社内 wiki に書いてる文章の一部です。後半の FAQ はハードルの [3] に関する話をフォローするつもりで書いたものです。社外に公開しても支障のないコンテンツなので掲載してみます。


発足目的

社外登壇という活動は個人と会社の双方にメリットがあるし、何より楽しみながら学びを得られる活動だと思っているので、もっと仲間を増やしたくて作った
個人のプレゼンスが上がることで会社の魅力も上がり、社外の面白いエンジニアがもっと当社を見つけてくれるようになり、結果当社がもっと面白い会社になる・・・的な意識で活動しています。
活動内容は主に2つあります

  1. 社外登壇にハードルを感じる人の支援(例: CfP の書き方、ネタのブレスト、資料レビュー)

  2. 登壇者を公募している社外イベントの情報共有(※この note では省略)

対象者

登壇活動に興味があれば誰でも

当チャンネルの参加者向け情報

もし「登壇チャレンジしてみようかな?」と思ったら、ぜひチャンネルで教えてください。特に何かあるというわけじゃないんですけど、応援の気持ちをお贈りします。
また、何かアドバイスできそうなことがあれば、気軽にご相談ください。経験者枠として多少は相談に乗れると思います。

FAQ

Q1. 何準備したらいいのか想像できなくて腰が重い

「準備編」で必要なことを書いていきます。とはいえ、だいたいは CfP 書いて出せばハードルはほぼクリアしたと言ってよいと思います(締め切り圧があれば資料は勝手に錬成されるので)

Q2. 雰囲気がわからない、叩かれるかも、こわい

ちゃんとしたコミュニティやカンファレンスほどアウトプットを応援してくれる雰囲気なので大丈夫です。少なくとも私の知るカンファレンスはそんな感じです。言うほど怖くないです。学会とか大学ゼミの発表で連想されがちな(偏見)えげつない質問とかはほぼありません。

不誠実なことをしない、悪意に基づく虚偽を述べたりしない、過剰な脚色をしない、などのモラルが守れていれば大丈夫だと思ってます。また、稀に SNS にクレイジーな輩が湧くこともありますが、そういう輩はたいがい他方面でもヤバいので無言でミュートしましょう。

もしそれでも心配なら、過去の開催の様子やセッションリストを見てみると良いでしょう。昨今の情勢でリモートイベントが非常に増えました。Youtube で過去のアーカイブを出しているものも数多くあります。

それでもまだ不安であれば、まずは見る専として自分の気になるトピックの勉強会に参加してみると良いです。個人的には Connpass さんが最もオープンな勉強会を多くチェックできるのでおすすめです。特に Forkwell さんの勉強会は頻度が高くかつジャンルも広範で、かつ Youtube Live による見る専参加が容易です。社外主催の勉強会では特におすすめです。
Link: Forkwell (Youtube)

Q3. まだキリの良いところまでわかっていないから、もっと自分の中でまとまってから登壇したい

「キリの良いタイミング」なんて永遠に来ないので、どこかしらで諦めましょう

向上心を持ち続ける限り、学べば学ぶだけ自分の世界は広がって、その分だけまた自分の不足を感じるのが健全な状態だと思ってます。なので「納得できるキリの良さ」というものは存在しないのだと考えています。

また、世の中には初学者から上級者まで様々な人がいます。今あなたが持っているトピックは(TPO さえ履き違えなければ)どんなに初歩的に感じられようともそれを必要とする人がいます

Q4. 社外で登壇して私に何の利益があるの?

実利的な側面で見ている部分もありますが、一番は社外の価値観と接点を持てることだと考えています。

「社内でしか通用しない人」になりたい人はいないと思いますが、それを評価するものさしは社外に意識を向けることでしか得られないと(私は)考えています。登壇者として社外に関与していくことで得られるフィードバックは充実感とともにそういう物差しを強く実感させてくれるものだと私は考えています。


…こんな感じで、登壇興味あるけどちょっとまだ勇気が、、、という人へ向けた文章を書いておりました。私自身がビビってたクチなので、登壇活動始める前の自分に向けて発破かけるつもりで書きました。

登壇に限ったことではありませんが、挑戦に対する恐怖が「確証バイアス」を生み出してはいないか?と意識してみるのは有用だと思います。

怖さが先立って、「怖いから挑戦したくない。そして、挑戦しないと判断する自分も間違っていない」と思いたいわけです。その怖さを支持・正当化するような理由ばかり集めてしまって、反対側にある理由や情報を無意識で軽視してないか?と。
誰しもが何かしらのジャンルでこうした心理を持ってるわけです。フラットに判断できればいいんですけどね、難しいですね。私も別のジャンルで心当たりがあります。ビビる気持ちが先立ってしまうようなら、いったんこういうバイアスの存在も踏まえて自己を振り返ってみると良いのかもしれません。

最終的に踏み切るきっかけになったのは、自分の先輩にロールモデルになる人がいたからでした。仕事の能力が自分の目指す方向に似ており、その上で登壇活動もやってて社外から一定の認知がある方でした。こんな人になりたいと思ってましたし、今でも尊敬してます。当時の自分は(登壇に)大いにビビっていましたが、ロールモデルの人に対する憧れ的な感情がそれ以上に強かったので踏み切ることができました。登壇するようになった原体験はこんな感じです。

自分がそうであったように、自分自身も他の誰かにとって良い影響力を与えられる人間になれたら良いなと思います。登壇プッシュする活動にはそういう思惑もあるかもしれません(さほど意識していませんが)。どういうジャンルにせよ、顔を見知った関係の中にロールモデルとなる人がいる環境は素晴らしいと思います。正直自分の実績はまだまだショボいですけど、それでもこれから登壇活動に挑戦しようとする同僚たちに道のひとつでも示せたらいいなと思います

最後に、自分の好きな言葉を引用して終わります。

それともお前 何十年も修行して達人にでもなるのを待ってから戦場にでるつもりか?気の長げぇ話だな

三浦健太郎 原作「ベルセルク」

ないもんねだりしてるほどヒマじゃねえ あるもんで最強の闘い方探ってくんだよ 一生な

稲垣理一郎 原作「アイシールド21」

これから芸を身につけようとする人が、「下手くそなうちは、人に見られ
たら恥だ。人知れず猛特訓して上達してから芸を披露するのが格好良い」などと、よく勘違いしがちだ。こんな事を言う人が芸を身につけた例しは何一つとしてない。

徒然草 (吉田兼好著・吾妻利秋訳) 第百五十段
https://tsurezuregusa.com/150dan/


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