愛燦燦と
(これはフィクションです。実在する人物・団体とは関係ありません。)
「友達がタロットカードでソイツを占ってくれたんだよ。そしたらさ、過去が【THE LOVERSの逆さ向き】ふしだらな気持ち、現在が【DEATH】転換期・悪く言えば転落、未来が【THE WORLDの逆さ向き】窮屈。綺麗にオチがついちゃったよね」
彼女は掛かったように笑っていた。
彼女とソイツとは10年ほど付き合ったり別れたりを繰り返していて、彼女たちに言わせれば「soul mate」、側から見ていると「腐れ縁」だった。
彼女たちは趣味が似ていて、雰囲気も似ていた。
お互いに影響し合って、どんどん似ていった。
映画や音楽など共通項が増えていくことは、恋愛関係にはよくあることだけれど、なんとなくもう少しディープなようだった。
レゲエのレコードを貸し借りしたり、特撮映画に鼻を膨らましたりする彼女たちの共通項は、絡まって知恵の輪みたいになった鎖のように思えた。
正直10年もあれば色んなことがあって、それぞれ違うパートナーができたこともあった。
その度、「パートナーができたよ」なんて、言ったり言わなかったりした。
私はソイツよりも、兎に角彼女に幸せになってほしいと思っていた。
彼女が幸せになれるなら、ソイツと添い遂げても、別の男と結婚しても、はたまた恋愛しなくても、なんでも良かった。
けれど彼女がソイツを大切にしているから、やはり二人が一生を共にすることを願っていた。
しかし、ソイツは別の人と結婚した。
付き合って間もない女の子と、できちゃった結婚だった。当然だが、いきなりだった。
彼女は自身の気持ちを織り混ぜながら、ソイツが結婚することを私に話した。
結婚って、私もしたけど、どんな感じだっけ…そんな錯乱が起こるような話し方だった。
彼女たちの分岐点が、こんなに現実的な展開だとは思わず、話を聞いていくうち腰が抜けそうになった。
彼女の過去や生き方を一番近くで理解していたソイツが、彼女から最も遠い存在になった気がした。
それでも、彼女が「分岐」という言葉を使うことが唯一の救いだった。寄り添った過去は変わらない。
タロットカードは、ソイツのことを想像しながら、彼女が引いたものだった。
彼女が、彼女の為に引いたカードは、きっとソイツにはなんにも関係がない。
人生って不思議なものですね。
彼女の幸せを心から祈り、美空ひばりの偉大さを知る。
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