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たしかなもの

もう春。早いものだ。
この頃はなかなか忙しい。私を取り巻く環境にも変化が訪れ、落ちつかない気持ちでいる間に、まさかの通勤手段の愛車が壊れた。これから忙しくなると思っていた矢先だけに動揺したが、今は、修理まで一ヶ月待ちながら、代わりの車に乗っている。それだけだった。
私の前に置かれたこの程度のことは、決してたいしたことなんかではないのだ。
ギターは何回手にしたろうか。

休みの日の午後に、ゆるく弾いている。
それもじっくり集中するのでもなく、家事を割り込ませながらの、ながら弾きである。いきなり曲を弾く、初めは指が慣れないのかうまくは弾けないが。2回目は指が慣れ、割とすんなりと聴ける形で音が響く。このゆるゆる過ごす休日。時には所用でちょっと外出もするが、また戻ったら、ギターを抱えたり、抱えなかったり。こうして休日を過ごす。

腕前は、初心者のままである。
そんな私でも少しは進歩は訪れる。苦戦していた16ビート、それが弾けるようになった。動画やその他で得たことを思い出しながら、右手を振ってみたら、出来たのだ。
私的ポイントはピックの持ち方。ピックをしっかり握るのではなく、つまむ、あるいは、はさむ。これくらいの力の入れ具合がちょうどよかった。あくまでこれは、私的感想。
そして、動画で見たとおりに暑い時に扇で仰ぐが如く、パタパタ手首を翻すと、ピックで仰ぐたびに16ビートの音が聞こえてきた。あとは気持ちよく、振り続ける。あいみょんの「マリーゴールド」。やっと弾けた。

じっくりひとつの曲と向かい合う。楽器を弾きながら何度も味わう。いい曲だ。優しくってあまやかで。爽やかで。自然、満たされてしまう。

そして、つぎの曲、back number「水平線」の譜面を開いた。Bコードは弾けるようになるのだろうか。まだ、左手が全く追いつかず、何度も曲を聴くだけのみになってしまった。音と詩を追いかけていくうち、私の左眼から、涙がすっと溢れて落ちた。



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