見出し画像

弾く

さて。私は、意気揚々とローコードの練習を始めた。やっと弾くのか。そう思った方も多いでしょう。確かに、ギターのことを書いているのに、ここまでろくに弾いてなかった‥。CとかGとかDとかEとかA。
やっと、ここまで。

なんとなくCは基本のコードと思っていた。
左手の弦をおさえる位置もぼんやり覚えていた。ピックを持って弾き降ろす。ぼわーん。うん?なんか…。
コードCは私の感覚では、もっと明るい、そう、陽の当たる、正統派の音の塊、だったはず。
私の奏でたCには、陽が当たっていないのだ。ズンというか、スカッというか、必要な軽やかな音が抜けている。開放弦の1弦の音が出ていない。2弦を押さえている人差し指が1絃にあたってしまっている。何度押さえ直しても、爪を切ってもやっぱり同じことだった。
Cの音すらでない。これには相当凹んだ。
よくFがでない話は聞くし、ご多分に洩れず、当時高校生だった私もそうだったような。だが、しかし現実は、さに在らず。
これは、ギター初心者界隈では由々しきことではないのだろうか。知らないけど。

「あらやだー、あの人Cすらまともに弾けないんだってよ。ヒソヒソ‥。」なんて声が聞こえてくるような気さえした。とんだ被害妄想である。

そういえば、私の手は小さくて、指は短く。指先はポニョっと丸っこい。あー、この指の形だからかな。半ば、指の形と手の大きさのせいにし諦める。ギターに向いてない手。ジっと手を見る。
‥うん、次、行こう。
あまりに恥入り、でもしょうがないので、あえて、そこには触れないことにした。知らないふりだ。素知らぬふりでCを鳴らそう。誰も気がつかない。気がつくか、ガッカリ。
G、これはまあまあ。音は出る。
D,ムムム。音は出るようであるものの、「はい、すぐ押さえて。」と言われてもなかなか。ちょっと時間がかかります。お待ちください状態であった。どうやら私はD周りも苦手らしい。
それら全部をひっくるめて、ボワーン、う、うジャヂャ、うジャカ、ジャカ。と練習は続く。
ほんとは、ジャン、ジャカジャカジャカ、である。
とにかく気にしてもできないものは、仕方がないので、そのまま弾き続けた。

6月の蒸し暑い夕暮れに、
鳴らしているギターからの、時折、なんとも言えない甘い香りがするのを感じながら。
超へたっぴだけど、そのまま弾き続けた。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?