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ここでしか味わえないライブ感を。韓国食事業チームトークセッション|岩井×齋藤×山本

韓国インバウンドの強化へと動き出した8Peaks family。アクティビティと並んで重要なコンテンツとなるのが、この地域ならではの豊かな食文化だ。今回のプロジェクトで「食」パートに携わるメンバーが集まり、それぞれの思いや今後の展望について語った。

<メンバー紹介>
岩井 穂純:「iwai-wines」代表
齋藤 由馬:「8Peaks BREWING」代表
山本 敦史:「たてしな自由農園」代表


土地の魅力が伝わる一皿を提供したい

韓国向け観光事業のトークセッションにて、八ヶ岳エリアを訪れた韓国の方々が「口を開けば『野菜、野菜』」とおっしゃっていたという話がありました。今回の事業における「食」の取り組みについて教えてください。
 
岩井:メインとなったのはアウトドアダイニングです。ファムトリップとメディアトリップで来てくださった韓国の方々に、地元の食材を使ったランチを外で楽しんでいただくという体験を提供しました。料理人の手配やワインのセレクト、テーブルセッティングやサービスなどを私が担当して、料理には「たてしな自由農園」の野菜を使わせていただき、由馬(齋藤)さんのビールも提供しました。

「iwai-wines」代表の岩井

−外でのランチということですが、場所は?

岩井:2回行いまして、1回目は一昨年モニターツアーを行った「中之島カヤックツアー」の内容をベースに、中之島※で実施しました。ただやっぱりちょっときついなということで、2回目は池の平ホテルの敷地の一画をお借りしました。

※中之島とは?
白樺湖の中央に位置する無人島。通常は開放されておらず、年に一度花火大会の打ち上げ場所として利用されてきたが、同モニターツアーをきっかけに貸切利用が可能に。今後は白樺湖の新しい観光スポットとして、アウトドアダイニングやフォトウェディング等での利活用が見込まれている。

−どんなところがきつかったのでしょうか?
 
岩井:オペレーションですね。前回のモニターツアーでもそうだったのですが、ランチの荷物を一式船に乗せて運ぶとなると、かなりの時間がかかるし人手も必要です。体験としてはすごくいいんですけど、今後パッケージ化することを考えるとあまり現実的じゃないなということで、2回目は湖の近くの丘でやりました。

−丘の方ではうまくいきましたか?
 
岩井:そうですね。作業効率が格段に上がりましたし、トイレがないのも中之島の課題でしたが、そこもクリアできました。これならコンテンツとして機能するなという手応えを感じましたね。

−今回は対韓国の施策ということで、特に意識されたことはありますか?
 
岩井:食で土地の魅力を表現することです。八ヶ岳や諏訪湖周辺の風景が浮かんでくるような一皿を提供したいと思い、自由農園さんに料理人をお連れして、実際に野菜を見てメニューを考えてもらいました。ワインに関しても地元の銘柄を中心にセレクトし、由馬さんのビールのラインナップからは個人的にも好きな「Yai Yai Pale Ale」を提供しました。

齋藤:さすが穂純(岩井)さん!「Yai Yai Pale Ale」はオレンジのような風味と苦味があって、お肉料理に非常によく合うビールです。諏訪大社の鹿食免(かじきめん)などからもわかるように、肉を食べる文化はこの地域のアイデンティティですよね。そういった土地の魅力を、味だけではなく体験として韓国の方々に伝えていただけたのがすごく嬉しいです。ありがとうございます。

「8Peaks BREWING」代表の齋藤(右)

−ストーリーが加わることで深みが増しますね。食材を提供されたのは山本さんですが、料理人の方に何かアドバイスされたりしたのでしょうか?
 
山本:いや、そこはあんまり絡んでいないですね。私からは「こんなのもあるけどどう?」くらいの感じで。

「たてしな自由農園」代表の山本

岩井:料理人によって得意・不得意があるので、こちらから食材の指定はあまりせずに、自由に考えてもらいました。あれだけ地元の野菜が集まっている場所ってなかなかないんですよ。敦史(山本)さんのところに行けばこのエリアにどんな食材があるのか一目瞭然だし、料理人にとってもすごくインスピレーションの湧く場所だったと思います。

−今回お呼びした料理人はどんな方ですか?

岩井:1回目と2回目でそれぞれ違う方にお願いしました。1回目は白樺湖近くで「ジャンボン・ド・ヒメキ」という生ハム工房を構えていらっしゃる職人さんで、もともとフレンチの料理人でもあった方。2回目はイタリアンの料理人で、蓼科で特別なキッチンカーを出されたり、プライベートのケータリングをされたりと、幅広く活動していらっしゃる方です。

「ジャンボン・ド・ヒメキ」の藤原伸彦さん

山本:料理人さんのネットワークもどんどん増えていますよね。

岩井:ちょくちょくナンパしています(笑)。そうそう、後で判明したんですけど、実は2回目の方は8Peaksメンバーの矢崎さんの幼馴染だったんですよ。

(左)シェフの石川主真さん

−すごい!偶然ですか?

岩井:そう、本当に偶然。「昔、うちの100メートル先くらいに住んでいて、よく一緒に遊んだ子だ!」って話に(笑)。途中で引っ越してしまい、それからは会えなくなったそうなんですけど、実はその後、同じく8Peaksメンバーの矢島さんの同級生になっていたという。

齋藤:ローカルあるあるですよね(笑)。面白い。

岩井:こういう地縁から生まれる結束感みたいなものも、8Peaksっぽくていいなと思いました。

人と人をつなぐ仕組みづくり

−アウトドアダイニングに対する韓国の方々の反応はいかがでしたか?
 
岩井:おかげさまで喜んでいただけたのですが、食材や背景などの一歩踏み込んだ内容を伝えるには、言語面の準備が少し足りなかったなと思います。もっとメニュー表の作り込みをしておく必要があるし、その他の伝える手段も考えておくべきでした。そこは今後の課題かなと思います。

齋藤:僕もそう思います。今回、うちのビール工場も案内して、韓国の方々の反応を見させていただいたんですけど、やっぱり景観とかわかりやすいものの方が刺さるなという印象でした。さっき地域のアイデンティティの話をしましたが、正直そのあたりにはそんなに興味をお持ちではない。この地域の背景や精神文化まで踏み込んで伝えるには、双方の立場をきちんと理解している方に、精度の高い翻訳をしていただく必要があると感じました。

−食材を提供された山本さんはどう思われましたか?
 
山本:実際に食材を食べていただくことで、魅力をアピールできたのはすごくよかったと思います。と言うのも、現状、旅行でうちの店に来られる海外の方ってほぼ皆無なんですよ。いらっしゃるとすれば、日本在住で別荘をこっちに持っている方くらい。たまに旅行で来られても、野菜や果物は持ち込みに制限があるから、記念撮影だけして帰られる方が多いんですよね。

−それはもったいないですね。
 
山本:そうなんです。今回、観光チームの枌さんも「生とうもろこしが大ヒットだった」とおっしゃっていましたし、寒暖差によって甘味が増す野菜とか、この地域ならではの食材が韓国の方に好まれることがよくわかりました。あとは提供の仕方をどうするか。例えば農家さんに協力していただいて、農業体験と絡めて野菜を味わってもらうなどのコンテンツがあってもいいのかなと思いました。

岩井:それはいいですね!

山本:私たちもそうですけど、海外に行ってもお店に並んでいるものを見て買うだけで、作っている人のことまではなかなか考えないじゃないですか。うちの野菜は首都圏とは違って採れたてですし、農家さんとの距離が近く、おすすめの食べ方まで教えてもらえます。育てた人の顔を思い浮かべながら食べると、その食材がより一層美味しく感じられますよね。そんな風に、人と人をつなぐような仕組みづくりがこの事業でできたらいいなと思います。
 
岩井:まず農家さんがどう野菜を作っているのかを見て、それから自由農園さんで野菜の説明を受けると、より生きた食材として捉えることができますよね。その後にアウトドアダイニングでランチを食べると、あの野菜がこんな味になるんだっていう高揚感につながる。もし海外でそれをやってもらえたら、自分だったらめちゃくちゃ嬉しい!

山本:一般的な農業体験は昼間に行われることが多いと思うんですけど、この地域のセロリとかだと、早い家では夜中の12時から収穫が始まるんですよ。それで早朝5時に私が畑に行くと、もうみなさん朝ごはんのおにぎりを食べ終わっていて、食後のお茶を飲みながら一休みされているんですね。その時、ちょうど八ヶ岳から朝日が昇るんです。これが本当にいい景色で。
 
−想像しただけで素敵です!

山本:だから例えばですけど、暗いうちからセロリ畑に行って、体験というよりは労働力としてガッツリ収穫して汗を流していただいて、朝日を見ながらおにぎりを食べるところまでやる。そこから一度休憩を挟んで、朝9時にうちの店に来て、さっき収穫した野菜がこんな風に並ぶんだというのを見て、野菜の説明を受けて、食べたいものをチョイスする。それを料理人の方が調理して、ランチとして召し上がっていただく。まあ理想論にはなっちゃいますけど、そういうライブ感はこの地域でしか味わえないことなのかなと思います。

自然、文化、人があってこその「食」

−岩井さんと齋藤さんの今後の展望についても聞きたいです。
 
岩井:これまで色々作り込んでアウトドアダイニングをやってきましたけど、なんか今日話をしていて、ぶっちゃけバーベキューの方がいいのかなって思ってしまいました(笑)。あえて作り込まない方が、この地域の生の魅力がもっと伝わるのかもしれない。ということで、バーベキュープランについても少し練ってみようと思います。

齋藤:僕は単にビールを売るのではなく、その先の体験も提供していきたいですね。うちは店舗がない分、周辺の宿泊施設や料理人、ソムリエ、生産者など、素晴らしいステークホルダーの方々と相乗効果を図ることができます。例えば穂純さんプロデュースのバーベキュープランで、敦史さんのところで買って来た野菜を「TINY GARDEN 蓼科」のキャンプ場でグリルして、それだけでも旨いんだけど、うちのビールを合わせるとさらにいい体験になるぞという流れにまで持っていけたらいいですよね。

−まさに8Peaks familyだからこそ提供できる体験ですね。今回お話を聞いて、インバウンド施策の強力な武器は「食」だと改めて感じました。
 
齋藤:この地域の魅力を伝えるには、食べることで旬を感じてもらうのが一番かもしれませんね。自然、文化、人があってこその「食」ですから。

岩井:そう考えると、先程の農業体験はインバウンド施策の核になると思います。農家さんの協力を得るのは大変かもしれないけど、色々事情を知っていらっしゃる敦史さんがお願いすればOKしてくれそうですよね。この事業の主役は、実は敦史さんなのかも。

−そんな山本さん、最後に言い残したことはありますか?

山本:まあ、あとは、さっきの検疫の問題(野菜や果物は持ち込みに制限)の解決策として、この地域の野菜や果物を使ったお土産品を自分のところで作って持ち帰っていただくとかですかね。そこまでできればもっと色々回っていくと思うんだけど。

−先日、矢崎さんが「今、各所からお土産を作ってくれと催促されている」と嘆いていらっしゃいました。では、お土産担当は山本さんということで……。
 
山本:いやいやいや(笑)。だったら二人も協力してくださいね!

岩井・齋藤:(笑)。

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