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ボーカル用マイクの音質比較(ブラインドテスト)
Youtube上には多数のマイクの比較動画があって参考になるものも多いです。
ただ人間は「高い製品のほうが良い音がするだろう」という先入観があるので、製品名と価格が分かった上で比較動画を見ても正確な判断が難しいことも多いと思います。
また、生のボーカルやギター演奏を録音した比較動画も実際に使ってみた際の挙動などが分かるため参考になるのですが、ボーカリストの立ち位置が微妙にずれていたり、ボーカリストの歌い方が変わっていたりしして、マイクの微妙な違いが分かりにくいこともあります。
そこで、以下のような条件でマイクをブラインドテスト用の動画を作ってみました。
・製品名と価格が分からない状態で音を聞けるようにする
・音源は同じもの(サンプル)を使う
・音源はモニタースピーカー(Focal ALPHA EVO 50)1台のみから出すこととし、他の音はできるだけ周り込まないようにする
・マイクの位置は毎回メジャーで測定して同じ位置と角度で設置する
・出音の音量はできるだけ同じにする(音量が違うと大きい音のほうが良いと錯覚してしまうため)
コンデンサーマイクはほぼ同じ位置と角度で設置できていると思いますが、ダイナミックマイクはダイアフラムの位置が異なり、全く同じ位置に設置することが物理的に難しかったので、その点はご了承いただければです。
今回比較に使うマイクは自宅にあったマイクの中からAudioTechnica(オーディオテクニカ)の以下の4本を選びました。
AT4050 (約8万5000円 2025/01/26時点)
AT4040 (約4万0000円 2025/01/26時点)
AT2035 (約2万0000円 2025/01/26時点)
AE6100 (約1万8000円 2025/01/26時点)
ブラインドテストでどの音がマイクか当てられるか是非試してみていただければです。
ATシリーズの3本はコンデンサーマイクで、AE6100はダイナミックマイクなので、AE6100だけはすぐに分かると思います。
AT2035はバックエレクトレット式で、AT4040とAT4050とは構造が違うので、バックエレクトレット式の特徴を知っている人であれば分かるかも知れませんが、個人的にはAT2035とAT4040の違いが少し分かりにくいと感じました。
AT4050は周波数特性が他の3本と違うので、特徴を知っている人であればすぐに分かると思います。
この動画を作ったきっかけは、以前にAT4050を購入した人が
「AT4050は他の下位モデルよりも全然音が良い」
と他の人にマウントをとるような発言をしていたので、ブラインドテストで本当に「全然音が良い」と感じることができるか試してみたかったからです。
個人的には(自分が繊細な耳を持っていないということもあると思いますが)「このマイクがずば抜けて音が良い」というよりも、「それぞれのマイクに特徴や味がある」「周波数特性が異なる」という印象で、人によって好みが分かれそうだなと思いました。
価格帯が上のマイクのほうが「音が太い」と感じる人もいると思いますが、「高いマイクは音が暗い」と感じる人もいると思います。
高いマイクでボーカルを録音しても、他の楽器の音が多いポップスやロック系の曲だと低域を抑えることも多いので、オケに混ぜてしまうと違いがあまり分からないということもあると思いますし、3万円~4万円くらいのエントリークラスのマイクのほうが録音後の処理が楽なケースもあると思います。
AT4040はリサイクルショップの移転セールの際に1万円で投げ売りされていたものを購入したのですが、個人的にはAT4040の音は後処理が楽ですし、壊れても仕方ないと思える価格帯で天気や季節を気にせずに気軽に持ち運べるので気に入っています。(AT4050よりも使用頻度が多いかも知れません。)
AT2035はバックエレクトレット式ということもあり、移動や保管にあまり気を使わなくて良いので野外ライブの録音などに便利ですし、配信のためにマイクを出しっぱなしにしておきたいという人にも使い勝手が良いと思います。
AE6100はハンドヘルド型なので、コンデンサーマイクに慣れていない初心者のボーカリストが戸惑っている時に使ってあげると、ボーカルがリラックスをしてくれて、コンデンサーマイクで録音するよりも良い歌が録れたりします。
AT4050は拾える帯域が広いので、アコースティック系の楽曲の録音の場合や、アカペラ系の楽曲の録音の時には、他のマイクよりも能力の違いがはっきり分かれてくると思います。
「どの価格帯のマイクを買ったほうが悩んでいる」という人は、上記の動画でブラインドテストをしてみて、価格差に見合うだけの違いがあるか、自分の耳で判断していただくのも良いかなと思います。