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ライブで自分のギターの音が聞こえない時の対処法

ライブで演奏をしている時に「自分のギターの音が聞こえなくて困った」という経験をしたことがあるギタリストも多いと思います。

大きい会場を以外では、返し(モニター)が無くても演奏できるようになるのが理想ですが、ベースやドラムと違って、中音域の成分が多いギターやボーカルは、ライブ会場の中音(なかおと。ステージの中で聞こえる音)が不足する傾向があります。

特に小さめのライブハウス、飲み屋さん、公共施設、結婚式場などの場合、モニター関係の機材が貧弱だったり、そもそもモニター(返し、ころがし)が置いていないこともあったりします。

またライブハウスの機材やPAさんの経験などが原因で希望した「返し」をもらうことが出来ないということもあります。

そこで個人的な経験や失敗なども踏まえた上で、ライブで自分のギターの音が聞こえない時の対処法についてお話をしていきたいと思います。




PAさんに返し(モニター)の音量を上げるようお願いする

最初にシンプルな対処法としてPAさんに「ギターの返しを大きくしてください」というお願いをする、という方法が考えられます。

ただ自分の経験からするとPAさんのにお願いをしてギターのモニター問題が解決するケースは半分以下という印象です。

モニターの機材がしっかりしていて、かつPAさんも十分な知識・経験があるという場合には、通常は演者側から敢えてお願いをしなくても最初から「良い感じの返し」をモニタースピーカーから出してもらえることが多いです。

演者側が「返しを大きくしてください」と敢えて言わなければいけないような会場の場合、そもそもモニター関係の機材が不足していたり、PAさんの経験不足などが原因であることが多いため、「ギターの返しを大きくしてください」とお願いしたところで改善しないというケースも良くあります。

アウトレイジ系なライブハウスだと、「返しを大きくして欲しいです」とお願いしたボーカルが「もっとデカい声で歌えよ!」と怒鳴られているのを見て、他のメンバーも何も言えなくなる・・・なんてこともあったりします。

そのような場合にはPAさんにお願いをしても問題は解決しないので、自分で問題を解決する必要があります。


立ち位置を工夫する

モニタースピーカー(ころがし)は、音が出る部分が斜めになっていますが、この「斜めの部分」と垂直に交わる部分の延長線上に自分の耳があるとモニターの音が聞こえやすくなります。

そのため、モニターの音が聞こえにくい場合には自分の立ち位置を移動することで解決することがあります。

ただ立ち位置を工夫してもモニターの音が聞こえないこともありますし、狭い会場の場合や、メンバーが多い場合には、自分が最適な場所に立つことができないこともあります。

バンドメンバーから「もっとそっち行って」「後ろに下がって」などと言われて、どんどんモニタースピーカーから遠い位置に追いやられてしまう、という悲しい経験をしたことがある人もいるかも知れません。

そのような場合には別の方法を検討する必要があります。

ギターアンプから出ている音を聞く

小さ目のライブハウスなどではモニター(返し)に頼らずに「ギターアンプから出ている自分のギターの音を聞く」という方法をとることも多いです。

ボーカルと違ってギターは背面にあるギターアンプから音が出ている訳ですから、敢えてモニター(返し)の音に頼らなくても、ギターアンプの音量を上げてアンプから出ている音さえ聞こえれば演奏は可能、というケースも多いです。

海外だと中規模くらいのライブ会場であってもギターアンプから出た音をマイクで拾わずに、そのまま外音(そとおと)かつ中音(なかおと)として使うという場合も多いです。

日本でも学校の文化祭などで機材が用意できないためギターアンプの音をマイクで拾わずにライブをやった、という経験がある人もいると思います。

このように「ギターアンプから出ている自分のギターの音を聞く」という方法に慣れていれば、モニター(返し)に頼らずに演奏できるというケースがあります。

ただ、この方法が上手く使えない場合もあります。

日本のPAさんは「マイクで拾った音を自分(PA)がコントロールして外音(そとおと)用のPAスピーカーから出したい」と考える人も多いためか、「ギターアンプの音量を下げて」と言ってくるPAさんも一定割合でいます。

PAさんによってはギターアンプの音量をかなり下げるよう言ってきたり、ステージに上がってきて無言でアンプの音量を下げてくる人もいます。

また会場が狭い場合にはギターアンプの音量を十分に上げることができないこともあります。

そのような場合にはギターアンプから出てくる音がドラムの音圧などに負けてしまい「ギターアンプから出てくる音もほとんど聞こえない」という事態になることがあります。

そこで、他の解決策についてもいくつか紹介したいと思います。


ギターアンプを内側に向ける

PAさんが「ギターアンプからマイクで拾った音を自分(PA)がコントロールして外音(そとおと)用のPAスピーカーから出したい」というタイプの人の場合や、会場が狭い場合には、ギターアンプを客席側と90度の角度に設置することで問題が解決することがあります。

ギターアンプを内側に向けて客席側にアンプの音が直接飛んでいかないようにすることで、ギターアンプの音量を十分に上げることができるようになり、結果的に「ギターアンプから出ている自分のギターの音を聞く」ことができる場合があります。

また真空管アンプの場合、アンプの音量が小さいと本来のサウンドが出せないことも多いため、そのような場合にもこの方法が有効な場合があります。

昔は100Wのマーシャルのヘッドを4発のキャビに繋いでいるような場合には、客席側にギターアンプの爆音が飛んでいかないように「ギターアンプを内側に向ける」という方法をとることもありました。

ただ、この方法は最近はあまり見かけなくなったように思います。

PAさんによっては「ギターアンプを内側に向ける」ことを嫌がる人もいるので、その場合にはまた別の方法も考えておかなければなりません。


アンプスタンドを使う

「ギターアンプから出てくる音もほとんど聞こえない」という場合、アンプスタンドを使うことで、ギターアンプの音が聞こえやすくなることがあります。

アンプスタンドはギターアンプの位置を高くしたり、角度を付けてスピーカーがギタリストの耳の方向を向くように調整できるものが多いため、床にアンプを置いている時と比べて小音量でもギターアンプから出ている音が聞こえやすくなります。

私はBOSSの「BAS-1」という折りたたみ式のアンプスタンドを常に車に置いているようにして、困った時にすぐにライブハウスに持ち込めるようにしています。

アンプスタンドがない場合には、アンプの大きさによってはライブ会場に置いてある椅子などで代用することが可能な場合もあります。

ただし椅子を使う場合にはアンプに角度を付けることができないため、アンプスタンドを使う場合に比べると効果は小さ目です。

この方法のデメリットは基本的にコンボアンプ(ヘッドとキャビネットが一体になっているアンプ)ではないと、アンプスタンドは使えないということです。

ヘッドとキャビネットが分かれているアンプでも、1発か2発入りのキャビネットであればアンプスタンドに載せることが出来なくもないですが、基本的にヘッドはキャビネットの上に載せるものなので、キャビネットだけアンプスタンドに置くのは危ないですし、PAさんにも嫌がられる可能性があります。

またギターアンプとの距離が遠かったりするとアンプスタンドを使っても「自分のギターの音があまり聞こえない」ということもあるので、さらに別の方法を検討する必要があります。

自分用のモニタースピーカーを持ち込む

ライブハウスのモニター(返し)から音が聞こえないということであれば、「自分専用のモニタースピーカーを持ち込んでしまう」という方法があります。

ボーカリストにもたまにマイモニタースピーカーを持ち込む人がいます。

個人で持ち運べるサイズのモニタースピーカーは様々ですが、大きいサイズのスピーカーを持ち込むとPAさんに嫌な顔をされることがありますし、ステージが狭いと置き場所に困ることもあるのでコンパクトなサイズのスピーカーが無難だと思います。

ROLANDの「 CM-30」はマイクスタンドに取り付けて使用することがが可能なため、ギタリストの耳に近い高さにモニターを設置することができます。

マイクスタンドによってはブーム部分を外してストレートのマイクスタンドになるタイプのものも多いので、「 CM-30」を床に逆さまに置いてストレートタイプにしたマイクスタンドを上から挿してクルクル回すと安全に取付けができます。

「 CM-30」アンプシミュレーターやマルチエフェクターと接続することで、自宅やスタジオなどで練習用のキャビネットとして使用することも可能ですし、ボーカル用の簡易スピーカーとしても使えるので便利な機材です。

「 CM-30」のデメリットは床置きをした時に角度を付けることが出来ないため、立っているギタリストにはモニター音が聞こえにくいことがある、という点です。

スピーカーの下に物(箱やドアストッパーなど)を挟むことで角度を付けることは可能ですが、床置きをするのであれば最初から角度が付いたモニタースピーカーが便利だと思います。


「モニタースピーカーを持ち込むにしても、モニタースピーカーにどうやってギターアンプの音を入力するのか?」と疑問に思う人も多いと思います。

最近のマルチエフェクター(マルチエプロセッサー)やアンプシミュレーターには出力端子が2系統搭載されているものも多いので、そういった機材を使っている場合にはメインアウトをアンプに繋ぎ、サブアウトをモニタースピーカーに接続することができます。


BOSS GT-1000 取扱説明書

またアンプによっては「LINE OUT」端子が搭載されているので、「LINE OUT」端子からモニタースピーカーを接続することで簡単にモニター環境を構築できるものもあります。

BOSS KATANA  取扱説明書

エフェクターもアンプにも出力が1系統しかない場合には、基本的に「SM57」などギターの集音に定評のあるマイクをモニタスピーカーに繋ぐという方法があります。

ライブ会場ではアンプにPA用のマイクも立ててあるためマイクを2本立てることになります。

マイクスタンドやマイクケーブルははライブハウスにあるものを借りることができることも多いですが、断られることもありますし、ライブハウスに置いてある予備のケーブルは古いものだったりすることもあるので、ショートブームの小さめのマイクスタンドとモニタースピーカーの端子に対応するケーブルを持っていったほうが安心だと思います。



イヤモニを使う

「モニタースピーカーは重いので持って行きたくない」「モニタースピーカはハウリングするのが怖い」という場合に便利なのが「イヤホンモニター」(イヤモニ)です。

プロのアーティストがライブで耳にイヤホンを付けているのを見たことがある人もいると思いますが、あのイヤホンです。

イヤモニはモニター音をイヤホンで聞くため、ステージ内部の音が飽和している(まわっている)状態でも聞き取ることができ、ハウリングがしにくいというメリットがあります。

イヤモニは基本的にPAのミキサーにワイヤレスの発信器を接続し、PAさんにモニター音を出してもらい、演者側の受信機にイヤホンを繋いで聞く、というパターンが多いです。

ワイヤレスの発信器・受信機はいくつかのメーカーが販売していますが、XVIVEが有名だと思います。

「できるだけ安いものが良い」という場合には、「LEKATO」などの名称で販売されている中華系の安い発信器・受信機がコスパが良いですが、安い製品は使用可能な1チャンネルしかなかったりするので、万が一会場の付近に他の電波が飛んでいたりすると混線のリスクがない訳ではないです。

イヤホンは密閉性が高いカナル型であれば何でも良いと思いますが、SHUREのイヤホンがコスパが良く暗いステージ上でも見失いにくいと思います。

私はSONYの「MDR-EX800ST」を使うことが多いです。(ふるさと納税でもらえるので)

イヤモニのデメリットは、

・PAさんにワイヤレスの発信器を渡した時に断れられることがある

・慣れるまでちょっと大変

という点だと思います。

最近はイヤモニを断られることは減ってきましたが、それでも嫌がるPAさんがいたり、イヤモニの扱いに慣れていないPAさんにいたりします。

イヤモニを使う予定がある場合にはPAミキサーに発信器を繋いでもらえるか事前にライブハウスに確認をしておいたほうが良いです。

なお前記のようにマルチエフェクターやアンプの出力が複数ある場合には、PAさんを頼らなくても自分の機材の「サブアウト」や「LINE OUT」に発信器を接続することで、イヤモニを使ったモニター環境を構築できます。

経験したことがある人であれば分かると思いますが、イヤモニを装着しながら演奏するのは最初は結構な違和感があります

プロの方でも最初の頃はイヤモニに慣れるまで大変だったとおっしゃっている方や、イヤモニは出来れば使いたくないという人もいたりします。

「ぶっつけ本番」でイヤモニを使うと失敗するリスクがあるのでスタジオ練習の時からイヤモニに慣れておくようにしておいたほうが良いです。


ベースアンプの音量を下げてもらう

ステージの中でギターやボーカルの音が聞こえない原因として良くあるのが「ベースアンプの音が大きい」というケースです。

ベースなどの低音はエネルギーが大きいため、ギターやボーカルなどの中音域をマスキングしてしまうことが多いです。

ベースの音は基本的にダイレクトボックスを通じてPAミキサーに流しているためベースアンプの音を小さくしても、外音(客席側のスピーカー)から出る音が不足することはありません。

そのため中音が聞こえにくい時はベーシストに「音量を下げて」とお願いすると効果的なことも多いです。

ただ経験の少ないベーシストの場合や、「アンプの爆音を聞きながら演奏をしたい」というタイプの人、聴覚が衰えている年配の方だったりすると、いくら言っても音量を下げてくれないこともあったりします・・・。


客席側のメインスピーカーよりも前に身体を乗り出して演奏する

ギタリストよりもボーカルリストがやっていることが多い方法ですが、ステージの中のモニタースピーカーの音が小さい時でも、客席側のメインスピーカーからは十分な音量が出ています。

そのためステージの前のほうに身体を乗り出すと、メインスピーカーから出ている自分の音を聞きながら演奏出来ることがあります。

ライブでボーカリストが観客に接触するくらいの距離まで身を乗り出して歌ったり、ギタリストがメインスピーカーにもたれかかるようにして演奏している場面を見たことがある人もいると思います。

ライブパフォーマンスとして前に身を乗り出していることも多いと思いますが、実際にはステージの中にいると自分の歌やギターの音が聞こえないので、敢えて客席側のほうまで身を乗り出してメインスピーカーの音を聞きながら歌ったり演奏していたりするケースもあります。

ライブハウスによってはステージの真ん中の場所が「出島」のように前に出ていることがあるので、そこに身を乗り出すと外音(そとおと)が聞こえやすくなることもあります。

自分の音が聞こえなくて困ったという場合には、最終手段としてこのような方法もあるということを知っておくと役に立つ場面もあるかも知れません。


返し(モニター)の音が聞こえなくても弾けるように練習しておく

様々な会場でライブをやっていると残念ながら「自分のギターの音が聞こえない」という場面に出くわすことは良くあり、本番までに解決しないということがあります。

自分のギターの音があまり聞こえない状態でライブをやるとなるとテンションも上がりにくいですし、不安な気持ちを抱えながら演奏をしなければなりませんが、ベテランのバンドマンの方はこういった状況に慣れている人も多いですし、経験の少ないPAさんに対しても敬意を払いつつ慌てずに対応している人も多いです。

ベテランギタリストの方は「このハコは返しを全然くれないね」と言いながらも完璧なパフォーマンスをしていることも多いです。

経験の多いベテランのバンドでは、返しが少ない環境でもスタジオと同じようにドラムの音量に合わせて他の楽器の音量を調整していき、返し(モニター)が無い状態でも適切な中音を作っていることが多いです。

また曲が「うろ覚え」の状態で本番を迎えると、自分の演奏音があまり聞こえない状況に陥った時に間違いを連発する事故が発生しやすいので、曲構成をしっかり覚えくという基本的なことを心がけたり、事前に「オケの音量を大き目にしつつ、自分のギターの音を小さ目にして」弾けるように練習をしておくのも、危機管理の方法の一つかなと思います。











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