初心者におすすめのオーディオインターフェイス
MacやPC(Windows)でボーカルやギターなどを録音するためには基本的に「オーディオインターフェイス」という機器が必要になります。
オーディオインターフェイスを選ぶポイントについて説明した上で、おすすめの「オーディオインターフェイス」をいくつか紹介したいと思います。
◆オーディオインターフェイスを選ぶポイント
◇PCやMacに接続する形式
オーディオインターフェイスをPCやMacに接続する形式にはUSB、Thunderbolt、Firewireなどがあります。
初心者向けのオーディオインターフェイスの多くはUSBで接続するものが多いですし、お持ちのPC・MacにThunderboltやFirewireの端子がないということも多いと思いますので、少なくとも最初の1台はUSBで接続するタイプのオーディオインターフェイスが無難だと思います。
◇安定性
オーディオインターフェイスを選ぶ上で最も重要視したほうが良いのがが「安定性」です。
オーディオインターフェイスを実際に使ってみると、急に音が出なくなったり、プチプチというノイズが入ったり・・・と様々なトラブルに出くわすことがあります。
そして、こういったトラブルの原因はドライバだったり、パソコンとの相性だったりと多岐にわたるので、一度トラブルに遭遇すると解決するのに時間がかかったり、最悪のケースだと解決できずに買い換えが必要になるとこともあります。(私もプチノイズ問題が解決できずに買い換えたことがありました。)
特に初心者のうちはトラブルに遭遇した時に対処することは大変だと思いますのでトラブル事例の少ない安定した機種を選んだほうがストレスは少ないと思います。
「安定性」の絶対的な判断方法というものはありませんが、一般的には老舗のメーカーが出している機種、販売されてから時間が経っていてドライバが更新されている機種、人気で台数が多く出回っている機種などは安定していることが多いです。
◇出入力の端子数
オーディオインターフェイスにはマイクやギターなどを接続するための端子と(入力端子)と、スピーカーやヘッドホンなどに音を出すための端子(出力端子)が付いています。
出入力の端子数が増えれば増えるほど価格も高くなる傾向がありますので、最初のうちは入力端子2個、出力はスピーカー用とヘッドホン用がぞれぞれ1系統あれば十分という場合が多いと思います。
ただしライブの同期(ドラマーがクリックを聞きながらPAからシンセの音を流す場合)には出力は4アウト(ステレオの出力が2個とヘッドホンアウト)あると良いです。
ドラムの録音をする場合には入力端子が10個以上あると便利ですが、最初のうちは端子の数が多くても使いこなすのが大変だと思いますので、ドラムの録音は割り切ってスタジオの機材を使ってお願いするほうが良いと思います。
◇ファンタム電源の有無
マイクでボーカルなどを録音する時に「コンデンサーマイク」というタイプのマイクを使う場合にはファンタム電源(ファントム電源、+48V)が必要です。
最近のオーディオインターフェイスにははファンタム電源が付いていることが多いですが、安い機種だと付いていないこともあるので注意が必要です。
◇音質
特にミックスの作業をする人にとってはできるだけ音の分離が良く歪みやノイズの少ないオーディオインターフェイスを使ったほうが自分自身の成長にも繋がります。
最近のオーディオインターフェイスは低価格帯のものでも音質が良いものが増えてきていますが、配信用のオーディオインターフェイスなどは音楽を制作するという観点からすると音質が若干劣るものもありますので注意が必要だったりします。
◇マイクプリアンプ、エフェクトプラグイン
昔はボーカルなどを録音する際にマイクプリアンプという音を増幅させる機器を通すことが多かったのですが、最近のオーディオインターフェイスにはマイクプリアンプが内蔵されているものが増えてきました。
マイクプリアンプの性能は音質に直結しますので音質にこだわる人はマイクプリアンプの質についても気にする必要があります。
最近のオーディオインターフェイスはコンプレッサーやイコライザーといったエフェクトをかけながら録音すできる(いわゆる「掛け録り」)できるものも多いです。
個人的には初心者のうちは「掛け録り」はせずに、録音した後にDAWの中でエフェクトを掛けたほうが失敗は少ないと思いますが、エフェクトが沢山付属しているオーディオインターフェイスのほうがワクワクしてやる気が出るという人もいます。
◇付属するソフト
初心者にとって軽視できないのがオーディオインターフェイスに付属するソフトです。
オーディオインターフェイスの価格と同じくらいの豪華なソフト(DAW、音源、エフェクトなど)が付属していることもあるので、ソフトをあまり持っていないという初心者にとっては、どのくらい豪華なソフトが付属してくるかというにも着目して選ぶと良いかも知れません。
◆おすすめのオーディオインターフェイス
先ほど説明をした「オーディオインターフェイスを選ぶポイント」を踏まえつつ、初心者にもおすすめできるオーディオインターフェイスをいくつか紹介したいと思います。
◇MOTU 「M2」「M4」
MOTUというメーカーは古くから高価格帯のオーディオインターフェイスやPerformerというDAWを販売している音楽業界では有名なメーカーです。
以前は比較的高価のモデルを扱っていましたが、最近になって「M2」と「M4」という低価格帯のオーディオインターフェイスの販売を開始し、
音質が価格の割にはあまりにも良かったため、発売当初は国内でも海外でも品切れで入手できないという状況が続いた程の爆発的なヒットになりました。
この「M2」と「M4」の良い点は価格の安さと音質の良さ(音の分離の良さ、歪み・ノイズの少なさ)です。
価格も「M2」が3万円強、「M4」が4万円半ばと、音質を考えるとかなりコストパフォーマンスの高い製品です。
(「M2」と「M4」の違いは主に入出力端子の数です。)
デメリットは機能が少ないことと、付属するソフトが「Performer Lite」や「Ableton Live 10 Lite」など、日本人にはあまり馴染みのないソフトばかりであることです。
ただ機能の少なさはは初心者にとっては「迷うポイントが少ない」というメリットでもあります。
発売当初はドライバが不安定であるという情報もいくつかありましたが、現在はドライバも改善されていたり、出回っている台数も多いので安定性は高いほうだと思います。
あまり予算は出せないけれども音質はこだわりたいという人にはおすすめです。
◇RME「Babyface Pro FS」
RME「Babyface Pro FS」はプロでも使用している人が多い人気の機種です。
RMEのオーディオインターフェイスの一番の特徴は「安定性」です。
市場に出回っている台数が多い機種ですがRMEのオーディオインターフェイスを使っていてトラブルにあったという話をあまり聞きませんしドライバも頻繁に更新されます。
そのため初心者にとってもトラブルが少ないという点でおすすめできる機種です。
デメリットは価格の高さです。
以前は10万円弱で購入できましたがコロナのあたりから在庫切れが続き最近では14万円程度で販売されていますので初心者にとってはハードルの高い価格だと思います。
ただRMEのオーディオインターフェイスは一度買えば(壊れない限り)買い換えの必要がないくらい完成された機種ですので、10年程度使うことを考えると、価格に見合った価値はあるとは思います。
「おまけ」的なソフトは付属しません。
音質は色付けが少なく、音の分離も良くノイズも歪みもほとんどないため、個人が購入できるオーディオインターフェイスの中では最高レベルの音質といって差し支えないと思いますが、「まるで測定機器」「機械的」「冷たい音」と言われることもあり「音楽的ではない音」と感じる人もいると思います。
分析的で正確な音が出るので、ミックスなどの「作業」をする上では問題はないですが、音楽を純粋に楽しんで聞くという場合には少し不満を持つ人もいるかも知れません。
個人的にこの「Babyface Pro FS」は、上に物が置けない形状であること、端子が左右及び後部の3箇所に分かれており、ケーブルを繋いでいくと意外に大きなスペースが必要になってくるのもデメリットだなと思っています。
◇STEINBERG「UR」シリーズ
「MOTUやRMEは高すぎる」「もっと安いものが欲しい」という人には、STEINBERG「UR」シリーズが最初の1台として無難かも知れません。
様々なメディアの情報を見る限りでは、おそらく日本国内でトップレベルで売れているのが、このSTEINBERG「UR」シリーズだと思います。
「UR」シリーズのメリットは
・安い割には音質は悪くない
・台数が出回っているので比較的安定しておりトラブルに遭遇してもネットで調べて解決できる可能性が高い
・国内でシェアが高い「Cubase」というDAWの下位版のソフトが付属するので「UR」シリーズを買えば別にソフトを買わなくても録音ができる
といったあたりだと思います。
STEINBERGは以前にRupert Neve Designsというプロオーディオ界では定番の有名メーカーとタッグを組んでNeveのトランスフォーマーを採用したオーディオインターフェイスも販売していました。
こちらは現在は残念ながら廃盤となっているようですが中古で安く出回っているので気軽にNeveの音を体験してみたいという人には良い製品だと思います。
◇FOCUSRITE 「Scarlett」シリーズ
FOCUSRITE 「Scarlett」シリーズも安くてソフトが充実しています。
FOCUSRITEはオーディオインターフェイスなどの音楽機器では世界的に有名な老舗で、この「Scarlett」シリーズは世界で1番売れているという情報もあるくらいメジャーな機種です。
「Scarlett」シリーズのメリットは
・安い割には音質は悪くない
・台数が出回っているので比較的安定している
・付属ソフトが充実している
というあたりだと思います。
付属のDAWはAbletonの「Live Lite」という日本では少しマイナーなものなのが少し残念ですが、 softubeという有名なメーカーのエフェクトのプラグインが複数付いていたり、「Addictive Keys」という使い勝手の良いキーボード音源が付いていたりするので、付属するソフトの価格を考えるとかなり「お買い得」であると言えます。
◆その他のおすすめのオーディオインターフェイス
ANTELOPE AUDIO「Zen Go Synergy Core」
手放しで「初心者におすすめ」と言えるか微妙なところですが、最近発売されたオーディオインターフェイスで様々な意味で話題になっていたのがANTELOPE AUDIOの「Zen Go Synergy Core」です。
この「Zen Go Synergy Core」は高級機に近いようなスペックを備えつつ、大量のエフェクトが付属しており、しかも価格は6万円程度であったため、発売当初から人気になっていました。
ただ、発売当初は不具合やバグなどもあり、不具合に対するメーカー側の対応がSNSで話題になったりもしたため、手放しで初心者にはおすすめしづらい機種でもあります。
また機能が多い分、初心者には分かりにくい部分もあると思います。
最近はメーカーも不具合を修正する等の対応をしているので動作も安定してきているとは思いますし、性能や付属するエフェクトなどを考えるとコストパフォーマンスは圧倒的に良いので、ある程度のトラブルがあっても対応する気力がある人にとってはおすすめの機種だと思います。