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【DTM】「VocAlign 6」「RePitch」のレビューと使い方(Synchro Arts)

Synchro Artsの「VocAlign 6」「RePitch」をLANDRの「Super Plugin Bundle」から購入したのでレビューをしたいと思います。



◆VocAlign 6 Standard

「VocAlign 6」は、複数のボーカルやオーディオトラックのタイミングを自動で揃えてくれる便利なプラグインです。

これまで手動でタイミングを調整していた際には数時間を要していた作業が、「VocAlign 6」を使えば数分で完了するため、購入して本当に良かったと思います。

「VocAlign」にはProバージョンもあります。

「Pro」ではタイミングだけでなくピッチ(音程)も調整可能。

しかし、価格が高いので、私はタイミング調整に特化した「Standard」を選びました。

ピッチ修正は別途「Melodyne」や「Waves Harmony」を使えば十分だと判断したからです。

「VocAlign 6」は非常に便利なツールだと思いますが「VocAlign 6」を実際に使ってみて、イマイチだなと思った点や、実際に使ってみて気付いた点について挙げていきたいと思います。


タイミングのズレが大きいと音質が劣化する

この点はやむを得ない点だと思いますが、複数のボーカルのタイミングのズレが大きいとタイムストレッチをした時と同様に音質が劣化してます。

タイミングのズレが大きい場合には事前にDAWのクオンタイズ機能を使って大まかにタイミングを合わせてから「VocAlign 6」を使ったほうが良いかも知れません。


クオンタイズと違って後から細かい修正ができない

これは自分の中では誤算だったのですが「VocAlign 6」でタイミングを補正した後に「部分的にさらにタイミングを修正したい」と思っても後から細かい修正をすることができないようでした。

DAWのクオンタイズで修正した場合には部分的にタイミングを後から修正できるので、一般的なクオンタイズ機能と「VocAlign 6」でタイミング補正機能を比較すると不便だと感じる人もいると思います。

ただ「VocAlign 6」でタイミング補正機能は結構優秀なので後から細かい修正をする必要はないということなのかも知れません。

環境によってはARAが上手く機能してくれない

「VocAlign 6」はARAに対応しており、DAW上のオーディオ情報を自動で読み込んでくれます。

しかし私が古いバージョンのDAW(Studio One4.5)を使っているからかも知れませんが、自分の環境ではARAが上手く機能しませんでした。

試行錯誤した結果、Studio Oneの画面上でタイミングを揃えたい複数のオーディオファイルを選択し、「ALT」キーを押しながら「VocAlign 6」をオーディオファイルの上にドラッグ&ドロップするとオーディオ情報を読み込んでくれたのですが、最後の数秒間だけが読み込んでくれませんでした。

ARAが上手く機能しない場合には以下のようにトラックに「VocAlign 6」をインサートして使う方法のほうが安定すると思います。


「VocAlign 6」の使い方

ARAを使わない場合の「VocAlign 6」の使い方は以下のとおりです。

・「タイミングを合わせたいオーディオトラック」(タイミングがズレているトラック)に「VocAlign 6」をインサートする

・「サイドチェーン」で「タイミングの軸とするトラック」(タイミングが合っているトラック)を選ぶ


・「Capture」を押してDAWの再生ボタンを押す

これだけで「VocAlign 6をインサートしたトラック」のタイミングが、「再度チェーンで指定したトラック」と同じタイミングになります。

あとはプリセットを選んだり、「MATCH TIMING」のノブを回したりしながら「許容するズレの量」を微調整していきます。

「MATCH TIMING」が「0」だとピッタリタイミングが合いすぎて不自然になることがあるので「10MS~30MS」程度ズラしてあげると自然なダブリングっぽい効果を得ることができます。

ARAを使わずに「VocAlign 6」をトラックにインサートして使う方法の場合、音を再生してキャプチャするという時間と手間がかかるというデメリットがあるので、ARAが上手く機能する場合にはARAを使ってオーディオデータを自動で読み込んだほうが楽だと思います。




ギターにも使えるが使える場面は限定されるかも

「VocAlign 6」を紹介されているYoutubeで「ギターにも使える」という情報があったためギターのタイミング補正にも使ってみました。

ギターのタイミング補正で使ってみた印象としては

・一般的なクオンタイズとして使うのは難しい

・ダブリングをする場合には使える

という感じでした。


私が普段から参考にさせていただいている「しーたけびーつ」さんのYoutubeでは「合わせたいギターのフレーズをMIDIトラックに打ち込むことで、ズレているギターをグリッドに合わせることができる」(一般的なクオンタイズと同じように使える)と説明されていましたので、試しにやってみました。

しかし自分が試してみたところでは、なかなか上手くいきませんでした。

音数の少ないギターソロのような比較的単純なフレーズの場合には上手くいくこともあるのですが、カッティングやミュートを含んだようなフレーズの場合には、タイミングがさらにズレてしまい音が崩壊してしまうケースが多かったです。

MIDIデータでカッティング・ミュートも含めて正確に再現をすればタイミングも合うと思いますが、それならばDAWのクオンタイズ機能を使ったほうが早いかな、という印象です。

ただ、ギターにも「VocAlign 6」を活用できる場面はあります。

ギターは複数のテイクを録音して左右に振ってダブリングすることが良くあると思います。

この時に1回目のテイクをDAWのクオンタイズ機能を使ってタイミングを合わせた上で、2回目以降のテイクを「VocAlign 6」を使ってタイミング補正をしてあげると、全てのテイクをクオンタイズするよりも作業が早く終わります。

メタルやハードロック系の音楽の場合には同じフレーズを4回から6回程度弾いて重ねていくこともありますし、ギターをダブリングすることが多いギタリストにとっても「VocAlign 6」があると便利だと思います。


◆RePitch Standard


「RePitch」は、ボーカルのピッチ(音程)を直感的かつ簡単に修正できるプラグインです。

近年リリースされている楽曲はアマチュア・プロ問わず、ゴリゴリにピッチ修正されているものがほとんどであるため、ピッチ修正されていない音源だと「古い」という印象を与えてしまうことがあります。

そのためボーカルを丁寧にピッチ修正するという作業は必須になっています。

ピッチ修正用のプラグインとしては、これまでは「Autotune」や「Melodyne」などが有名でした。

「Autotune」は以前は業界標準的な立ち位置にありましたが、価格が高く、ケロりやすい(機械っぽい不自然なサウンドになることがある)というデメリットがありました。

「Melodyne」は自然なサウンドになりやすく「Essential」という最安のグレードは1万円程度から購入できるたため予算に合わせて選べるというメリットがありました。

しかし「Melodyne」は音程のラインを鉛筆ツールで手書きすることができず(線で音程を書き込むことができない)、音程を細かく修正する場合にはノート(音程を表す棒のようなもの)を「ノート分割ツール」で複数に切り取って上下させる必要がある、というデメリットがありました。

そのため、私は音程を手書きしたい時はWAVESの「Tune」というプラグインを使っていたのですが、「WAVES Tune」にも

・画面が小さく作業がしにくい

・うっかり「Ctrl+Z」を押すとそれまでの作業が吹き飛ぶことがある

・部分的に変更内容をデフォルト状態に戻すことができない

などのデメリットがありました。

このような「Autotune」「Melodyne」「WAVES Tune」のデメリットを解消してくれるピッチ修正ソフトが「RePitch」です。

「RePitch」はLANDR「Super Plugin Bundle」のセールで購入すれば「Autotune」や「Melodyne」よりも安く入手することができ、音程のラインを鉛筆ツールで手書きすることができるので「Melodyne」よりも簡単に細かい修正をすることができます。

また個人的には「Autotune」よりも自然な印象があります。

画面も大きく表示することができ、部分的に作業内容を初期状態に戻すことも可能なので「WAVES Tune」よりも使い勝手が良く上位互換的なプラグインと言えると思います。


しかも各ノートの音量調整も簡単です。

「Melodyne」の場合には各ノートの音量はノートの「太さ」で表現されているため分かりにくいことがありました。

しかし「RePitch」では「Level Display」というボタンを押すと、音量がノートの「高さ」で表現されるため、各ノートの音量の差が一目瞭然となり、非常に作業がしやすいです。

このように「RePitch」は優れたプラグインですが、個人的に使っていて不便だと感じた点も挙げておきたいと思います。


全体的な作業のしやすさは「Melodyne」のほうが良いかも

私が「Melodyne」に慣れているということもあると思いますが、「音程のラインを鉛筆ツールで手書きすることができる」という点と「音量バランスの視認性が良い」という点以外では、「Melodyne」のほうが使いやすいと感じる場面が多いです。

たとえば各ノートの音程を修正した上で「再生ボタン」を押して修正後の音を確認する時、「RePitch」は修正が反映されるまでにタイムラグがあるので、「再生してみたけど修正がまだ反映されていない」ということが多いです。

この点については「Melodyne」のほうが修正が反映されるスピードが早いため便利だと感じます。

また私の環境では「Pitch Display」を「Level Display」に切り替えた時に表示が「Pitch Display」のままになっていたり、「Level Display」を「Pitch Display」に切り替えた時にも表示が「Level Display」にままになっていたりして、矢印ツールでノートを選択することで表示の変更がはじめて反映されます。

私の使い方の問題かも知れませんが、ユーザーインターフェイスの使いやすさ・視認性の良さは「Melodyne」のほうが良いと感じる場面が多いです。

ただ前記のように「RePitch」のほうが便利な場面も多いので、状況に応じて「Melodyne」と「RePitch」を使い分けるという方法が良いかと思います。


環境によってはARAが上手く機能してくれない


「RePitch」はARAに対応しており、DAW上のオーディオ情報を自動で読み込んでくれます。

しかし「VocAlign」と同様に私の環境ではARAが上手く機能しませんでした。

Studio Oneの画面上でオーディオファイルを選択し、「ALT」キーを押しながら「RePitch」をオーディオファイルの上にドラッグ&ドロップするとオーディオ情報を読み込んでくれたのですが、やはり最後の数秒間だけが読み込まれませんでした。

トラックに「RePitch」をインサートして使うと普通に使えますが、「Capture」を押してDAWの再生ボタンを押して「RePitch」にオーディオデータを流し込むという手間が必要です。


「RePitch」の使い方


「RePitch」の使い方はシンプルなので分かりやすいと思いますが簡単に説明をしたいと思います。

左上の「Chromatic」などと表示されているところからスケールを選択することができます。

スケールを選択した後に画面の上のほうにある「Select a Macro」から音程を自動で補正するかどうかを選択できます。

・No Snapping Notes to Scale
→音程の自動で補正しない

・Snap Notes to Measured Scale
→自動で検出したスケールに音程を補正する

・Snap Notes to Selected Scale
→設定したスケールに音程を補正する

スケールの選択ボタンの右側にはツールが並んでいます。

Selector Tool 
→ノートを選択したり移動させたりするツール

Center Note Tool 
→音程の中央との比較でピッチを合わせる量を調整

Draw Tool
→ピッチを手書きで修正できる(便利)

Shaper Tool
→複数の点を打つことでピッチのラインを描く

Split Tool
→ノートを分割する

Warp Point Tool
→ノートの長さを修正

Pan and Zoom  Display
→このツールを選んで画面をドラッグ&ドロップすることで表示領域を動かすことができるまたALTを押しながらドラッグ&ドロップすることで画面の拡大の割合を変更できる。(地味だけど非常に便利)

Melodyneは画面の拡大縮小にクセがあって使いづらい部分がありあますが、「RePitch」は上記の「Pan and Zoom  Display」の機能で自由自在にヌルヌルと画面の拡大縮小ができるので細かい作業をする時には楽です。


上記の項目の意味が分かっていればほとんどの作業はできると思いますが、細かい使い方については「synchroarts」の公式サイト(英語)や、「クランとリオン OFFICIAL WEBSITE」さんの解説がわかりやすいと思います。



◆購入をする場合

「RePitch Standard」や「VocAlign 6 Standard」は単体でも購入できますが、2024/12/03時点では、LANDRのセールでバンドルで購入したほうが安いという状況になっています。


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