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モバイルバッテリーからエフェクターに電源を供給する方法



◆モバイルバッテリーからエフェクターに電源を供給するメリット



ギター・ベース用のエフェクターに電源を供給する方法としては、

・アダブター
・パワーサプライ
・乾電池・充電池

などがあります。

アダプターやパワーサプライを使用する場合、スタジオやライブ会場でコンセントを探す必要があるというデメリットがあります。また、コンセント経由の電源では、ノイズがエフェクターに混入する可能性もあります。

さらに、電源コードが他のメンバーやスタッフに踏まれたり引っ掛けられたりすることで、断線や電源切断に繋がり、アンプから大音量のノイズが発生する事故が起きることもあります。

そのため、電池を使用するギタリストやベーシストも少なくありません。

電池なら電源コードが不要なため、取り回しが楽でトラブルも防げます。

しかし、エフェクター用の9V角形電池を頻繁に交換するのはコストがかかります。
また、電池の残量が分からないので演奏の途中で急にエフェクターのLEDライトが暗くなり音が出なくなる・・・なんて事故が起こることもあります。


そのため、私は9Vの「充電式」電池を使用していました。
充電式電池は繰り返し使えるためコストを抑えられるのが魅力ですが、残量がすぐに減ってしまうことが多く、頻繁に充電しなければならないというデメリットがありました。
このため、演奏中に電池切れの不安を感じることもありました。

そんな中、最近「モバイルバッテリーを使ってエフェクターに電源を供給すると便利」という話を聞き、試してみることにしました。

モバイルバッテリーはスマートフォンの充電用として、すでに自宅に複数持っている方や日常的に携帯している方も多いと思います。そのため、スマホ用の予備電源とエフェクター用の電源を共有できる点は非常に便利です。

さらに、最近のモバイルバッテリーは容量が1万mAhを超えるものも多く、「9Vの充電池」に比べて数十倍の容量を持っています。このため、頻繁に充電する必要がないというのも大きなメリットです。


◆必要なもの

モバイルバッテリーからエフェクターに電源を供給する際には、

「モバイルバッテリーの電源をエフェクター用に変換するケーブル」

などが必要になります。

コンパクトで低価格な製品としては

One Controlの「DC Porter Nano」

Custom Audio Japanの「Power Cable USB」

などがあります。

One Controlの「DC Porter Nano」はUSBの端子部分と電源ケーブルを取り外すことができるタイプのため、どちらかを無くしてしまいそうですが、レビューを見ると「他の製品ではダメだったけど、DC Porter Nanoで試したら無事に電源供給できた」というようなコメントがいくつかあります。

Custom Audio Japanの「Power Cable USB」はUSBの端子部分と電源ケーブルが一体になっているため片方だけ無くしてしまうというリスクはなさそうですし、デザインもシンプルで使い勝手は良さそうです。

今回はOne Controlの「DC Porter Nano」を試してみることにします。




◆今回用意したモバイルバッテリー

「モバイルバッテリーの電源をエフェクター用に変換する」ケーブルのレビューを確認したところ、使用するモバイルバッテリーによっては正常に電源供給できない場合があるという意見をいくつか見かけました。

そこで、自宅にあった複数のモバイルバッテリーを使い、実際にエフェクターへの電源供給が可能かどうか試してみることにしました。

今回用意したモバイルバッテリーは以下の3つです。


① Anker Power Bank

10000mAh
22.5W
USB-A 出力:5V = 3A / 9V = 2A / 10V = 2.25A


② CORO モバイルバッテリー

12000mAh
USB-A 出力:5V = 2.1A


③ 明誠 モバイルバッテリー

4000mAh2
USB-A 出力:5V = 2.1A


◆検証結果


◇Effects Bakery「Croissant Distortion」(トゥルーバイパス)


① Anker Power Bank

エフェクターを「オフ」にした状態で「DC Porter Nano」と接続した場合、その後エフェクターを「オン」にしても電源が供給されませんでした。
おそらく、何らかの保護機能が働いているのではないかと考えられます。

一方で、エフェクターを「オン」にした状態でモバイルバッテリーを接続すると、正常に電源が供給されました。
その後エフェクターを「オフ」にしてから再び「オン」にしても、問題なく電源が供給され続けました。

分かりやすく整理すると以下のようになります:

(ア) 反応しないパターン

・エフェクターを「オフ」にした状態で「DC Porter Nano」を接続する。

・エフェクターを「オン」にしても電源が入らない(スイッチを押しても反応なし)。


(イ) 反応するパターン
・エフェクターを「オン」にした状態で「DC Porter Nano」を接続する。

・電源が供給され、エフェクターが動作する。

・その後、エフェクターを「オフ」にしてから再度「オン」にしても、正常に反応する。


モバイルバッテリーから電源を供給する際は、エフェクターを「オン」にした状態で「DC Porter Nano」のUSB端子側をモバイルバッテリーに接続する必要があります。
「DC Porter Nano」の9V端子側を外したり接続し直したりしても、モバイルバッテリーは反応しませんでした。

シンプルにまとめると「DC Porter Nano」と接続してもエフェクターに電源が入らない場合には、エフェクターのスイッチを一度押して、「DC Porter Nano」の「USB端子」の側を1回外してまた付けると、エフェクターに電源が供給されるようになります。

② CORO・③ 明誠

この2つのモバイルバッテリーは、エフェクターが「オフ」の状態で「DC Porter Nano」を接続した場合でも、電源供給をすることが可能でした。


ちなみにMXR「M133 MICRO AMP」で検証した結果もEffects Bakeryと同じでした。


◇BOSSのコンパクトエフェクター全般

BOSSのコンパクトエフェクターをいくつか試しましたが、いずれも同じような挙動でした。

① Anker Power Bank

「① Anker Power Bank」をボスのコンパクトエフェクターに接続した時の挙動は、前記のEffects BakeryやMXRの場合と同じでした。

「DC Porter Nano」と接続してもエフェクターに電源が入らない場合には、エフェクターのスイッチを一度押して、「DC Porter Nano」の「USB端子」の側を1回外してまた付けると、エフェクターに電源が供給されるようになります。

② CORO・③ 明誠

この2つのモバイルバッテリーをボスのコンパクトエフェクターに接続すると変わった挙動になりました。

エフェクターがオン・オフのいずれの状態であっても、「DC Porter Nano」をエフェクターに接続するとエフェクターが「オン」の状態になります。

エフェクターを「オフ」の状態にした上で、「DC Porter Nano」を外してまた接続すると、エフェクターは「オン」になります。

エフェクターのスイッチを一回押せばオフになるので特に問題はありませんが、前記のEffects BakeryやMXRと挙動が違うので、少し混乱するかも知れません。


は、エフェクターが「オフ」の状態で「DC Porter Nano」を接続した場合でも、電源供給をすることが可能でした。


「① Anker Power Bank」と「DC Porter Nano」を接続して、コンパクトエフェクターの電源が入らない場合には、コンパクトエフェクターのスイッチを一度押した上で、

エフェクターを「オフ」にした状態で「DC Porter Nano」と接続すると、その後にエフェクターを「オン」にしても電源が供給されませんでした。

何らかの保護機能が働いているのかも知れません。

エフェクターを「オン」にした状態でモバイルバッテリーを繋ぐと電源を供給することができ、その後にエフェクターを「オフ」にしてから「オン」にしても無事に電源が供給されるという状況でした。


◇electro-harmonix「OD Glove」

① Anker Power Bank

「① Anker Power Bank」をelectro-harmonix「OD Glove」に接続した時の挙動は、前記のEffects Bakery、MXR、BOSSの場合と同じでした。


② CORO

「② CORO」をelectro-harmonix「OD Glove」に接続してエフェクターのスイッチをオンにすると一瞬LEDランプが付きますが、すぐに消灯してまい、音も出ませんでした。

「OD Glove」の消費電力はそれほど大きくないのですが、内部のスイッチで9Vを18Vに昇圧できるので、その機能との関係で問題が生じているのかも知れません。

内部のスイッチを9Vの切り替えれば動作するかも知れませんが、エレハモのエフェクターは裏蓋を開けるのが面倒なので、今回は内部のスイッチはいじりませんでした。

③ 明誠

「③ 明誠」をelectro-harmonix「OD Glove」に接続してエフェクターのスイッチをオンにすると一瞬LEDランプが付いて音も一応出ているのですが、LEDランプが非常に短い周期でチカチカと点滅を繰り返しているような印象で、音もちょっと変です。

こちらも内部の昇圧が問題になっているのかも知れません。


◇ZOOM「G1 FOUR」(マルチエフェクター)

ZOOM「G1 FOUR」は、「DC Porter Nano」を通した場合ではいずれのモバイルバッテリーでも起動しませんでした。

「G1 FOUR」の仕様を見ると「DC9 V 500 mA」になっています。

5Vで2A程度の出力があるモバイルバッテリーであれば、

5V×2A=10W
10W÷9V=1.1A

なので、変換効率によるロスを考慮しても「G1 FOUR」に十分な電流を供給できそうな気もしますがダメでした。

ちなみに「G1 FOUR」にはDC9Vの端子の他に、「Micro USB Type-B」を接続できるDC5Vの端子があります。


モバイルバッテリーからこのDC5Vの端子に「Micro USB Type-B」に対応したUSBケーブルで直接接続すればどのモバイルバッテリーからも電源供給することができました。

しかも「G1 FOUR」は単3電池で約18時間も駆動するのでモバイルバッテリーを使わなくても困ることはないと思います。


◇BOSS「GT-1000CORE」

BOSS「GT-1000CORE」も「DC Porter Nano」ではどのモバイルバッテリーでも起動しませんでした。

「GT-1000CORE」の仕様をみると消費電流は670mAなので、こちらも変換効率によるロスを考慮しても5V・2A以上のモバイルバッテリーであれば駆動できそうな感じなのですがダメでした。

個人的には「GT-1000CORE」を持ち出すことが多いので残念な結果でした。


◇K.E.S「KiNf:2e」(パワーサプライ)

現在、手元にあるあるパワーサプライがK.E.S「KiNf:2e」だけだったので、「DC Porter Nano」経由でモバイルバッテリーで電源供給できるか試してみましたが、こちらもダメでした。

「KiNf:2e」は入力の電圧にかかわらず9.4V(無負荷時9.8V)を出力してくれて、しかもコンパクトながらアイソレートにも対応しているという便利な製品なのですが、内部で電圧を変換する関係で、「DC Porter Nano」経由だと上手く動作しないのかも知れません。


◇複数のコンパクトエフェクターを接続した場合

マルチエフェクターやパワーサプライが起動しなかったので、「コンパクトエフェクターも複数台接続したら、使えないのではないか?」と思い、検証してみました。



SD-1W以外は消費電力が多そうなエフェクターを選んだつもりでしたが

SD-1W:18mA
DC-2W:65mA
RC-3:70mA

なので全部合わせても200mA以下した。

結果としては、「DC Porter Nano」経由から分岐ケーブルを使ってコンパクトエフェクター3台に接続しても、特に問題なく使うことができました。


◆まとめ


今回の検証のまとめは以下のとおりです。

・モバイルバッテリーからエフェクターに電源を供給する際には「モバイルバッテリーの電源をエフェクター用に変換するケーブル」などが必要になる

・エフェクターをオンにした状態で接続しないとモバイルバッテリーから電源が供給されない場合がある

・接続先のエフェクターやパワーサプライに昇圧機能がある場合には動作しない傾向がある

・マルチエフェクターを動作させるためにはモバイルバッテリーに相当なパワーが必要だと思われる













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