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【DTM】ドラム音源のおすすめ(プラグイン)

DAWを使った楽曲制作において、ドラム音源のプラグインは欠かせない要素です。

楽曲の中でドラムサウンドはリズムの要であり、曲全体の雰囲気を決定づける重要な要素です。

一昔前のドラム音源はいかにも「打ち込み」っぽいサウンドだったこともありましたが、最近のドラム音源のクオリティは非常に高く、下手に生ドラムを録音するよりもクリアで、迫力・インパクトのあるサウンドを手軽に再現できるようになってきています。

また、ドラマーが演奏したドラムを録音するのは時間もコストもかかるため、近年ではプラグイン形式のドラム音源を使うことが増えていますし、ドラマーが演奏した生ドラムにドラム音源の音を重ねる(レイヤーする)ことで、音質や迫力を向上させることも一般的になってきました。

今回は、初心者からプロまで幅広く活用できる、おすすめのドラム音源プラグインをいくつかご紹介します。


◆Toontrack「Superior Drummer 3」

ドラム音源の中で特に人気が高いのがToontrackの「Superior Drummer 3」です。

近年では「最強のドラム音源」と評価されていることも多いです。

「Superior Drummer 3」は240GBを超える膨大でバリエーション豊富なサウンドデータが入っていて、様々なジャンルにも対応しています。

様々な位置からマイクで収録されたサウンドが入っていたり、音の「かぶり」なども細かく収録されているので、実際のスタジオでドラムを録音した時のようなリアルなサウンドを再現することが可能です。

ミキサー用のエフェクトも多数搭載されていて柔軟にドラムサウンドを加工することができ、MIDIパターンも大量に入っています。

生ドラムのオーディオファイルをMIDIデータに変換してくれる「TRACKER」という機能も付いており「リプレイサー」的な使い方まで出来てしまいます。

・・・と良い点だけを見ると「Superior Drummer 3」はまさに「最強のドラム音源」という感じなのですが、デメリットがない訳でもないです。


まず「Superior Drummer 3」は他社のドラム音源と比べると価格が高めで、通常価格で買おうとするとDAWが買えるくらいの価格がします。

「Superior Drummer 3」だけあれば様々なジャンルに対応できるということを考えるとコストパフォーマンスは悪くないのですが、初心者の方にとっては気軽に手を出せる価格ではないと思います。

またサウンドデータが240GB以上あるので、ノートパソコンを使っている場合などには外付けのSSDが必要になってくることもあり、そのコストがプラスになることがあります。

また「Superior Drummer 3」は実際に使ってみると分かるのですが「完成されたサウンド」を出すまでのハードルが高いです。

基本的に細かく音作りをしてサウンドを完成させていくことが前提となった音源なので、ドラムやレコーディングの経験があまり無いと、「何をどうすれば良い音になるのか分からない・・・」と途方に暮れる場合もあると思いますし、経験がある人であっても「時間がかかって面倒くさい・・・」と感じることもあると思います。

正直なところ、簡単に「完成された最終形の音」を出したいという場合には後記の「EZdrummer 3」「Addictive Drums 2」「Steven Slate Drums」などを使ったほうが楽です。

ただし「Superior Drummer 3」でも「EZX」という拡張パックを使うことで簡単に「完成された良い音」を出すことができるので、この点についても説明をしておきたいと思います。

◇「SDX」と「EZX」について

「EZX」のことを説明させていたく前に、「SDX」と「EZX」という「拡張音源」の違いを説明しておきたいと思います。

Toontrackは「Superior Drummer 3」の他に「EZdrummer 3」というドラム音源を販売しています。

そして基本的に「SDX」は「Superior Drummer用の拡張音源」で、「EZX」は「EZdrummer用の拡張音源」という扱いになっています。

そうすると「EZX」は「Superior Drummer」では使えないのかというと、そうではないのがややこしいところです。

「SDX」は「Superior Drummer」だけで使えるけれども、「EZX」は「EZdrummer」でも「Superior Drummer」でも使うことができます

そして「SDX」は基本的の加工の少ない生っぽい音が収録されているものが多いのに対し、「EZX」はバリバリに加工された即戦力的なサウンドが収録されています。

整理すると以下のような感じです。

○SDX
「Superior Drummer」でしか使えない
・生っぽい音が収録されていることが多く自分で加工をする必要がある
(ただし最近はある程度加工されているSDXも増えてた)
・そのかわり、音の加工の自由度は高く自分の好みの音作りができる
・価格は高め

○EZX
「EZdrummer」と「Superior Drummer」の両方で使える
・バリバリ加工された即戦力的なサウンドが収録されている
・そのかわり、音の加工の自由度は低い
・価格は安め、容量も小さめ

先ほど「Superior Drummer 3」では「完成された音」を自分で作るのは難しいというお話をしましたが、最初から音が加工された「EZX」を「Superior Drummer 3」に読み込むことで、あまり手間をかけずにドラムトラックのサウンドを完成させることができます

イメージとしては「Superior Drummer 3」や「SDX」は自分で調味料の配分などを考えてイチから料理を作るのに対し、「EZX」はプロが作った料理をテイクアウトで買ってきてそのまま食卓に出す、という感じです。

なので「ドラムの音作り」に自信があって時間もある人であれば、「Superior Drummer 3」にデフォルトで入っているキット「SDX」を作って自分の好きなように「音作り」していけば良いと思いますし、「ドラムの音作り」の経験が少ない人や、ドラムよりも曲のアイデアなどに時間を有効に使いたい作曲家の方などは「EZX」をバリバリ使って時間を短縮していくのが良いと思います。

「EZX」は「EZdrummer 3」という初心者でも使えるプラグインの拡張音源なので「EZXを使うのは何か恥ずかしい」と感じていたり「SDXよりも音が悪いだろう」という先入観を持っている人もいると思います。

しかしプロでも「EZX」を活用している人も多いですし「EZX」の容量が少ないのは音作りの自由度が小さい(調整できるマイクの位置などが少ない)完成形に近い音源であるからであって音が悪いということはありません

この点についてはエンジニアの方も同じようなことをおっしゃっている方もいます。

このように「既に加工されたサウンドのEZX」と「細かい調整が可能なSuperior Drummer 3」を組み合わせることで、スムーズにドラムトラックを作成することができるのでおすすめです。

ただ「EZX」にもデメリットがない訳ではないです。

それは「EZXの沼にはまってしまうと、お金が飛んでいく」という点です。

「EZX」は「既に加工されてほぼ完成された音源」であるため、微調整はできてもサウンドを大きく変化させることはあまりできません。

そのため曲のジャンルや雰囲気に合わせて「EZX」を使い分けることになるのですが、EZXは現在では70種類程度あり全ての音源を買うとなると数十万円単位でお金が飛んでいってしまうという、課金ゲーム的な要素があります。

そのため「EZX」を買う場合には自分の用途に合わせて厳選したものだけを購入したほうがお金を節約することができます。

「EZX」のサウンドは公式サイトで試聴ができるため自分の好みに合ったものを選んで購入するのが一番良いと思いますが、個人的におすすめなEZXをいくつか紹介しておきたいと思います。


◇おすすめの「EZX」


EZX - METAL MACHINE

「EZX - METAL MACHINE」は初代の「EZ DRUMMER」の頃からある古い音源ですが今でも人気があります。

「メタルマシーン」という名前やビジュアルからするとメタル以外には使えないのかと思いきや汎用性の高いサウンドで、ロックやパンクなどとも相性も良く意外に守備範囲が広い音源だったりします。

元気な感じのアニソン系の音楽などであればポップスでもギリギリ使えるかも知れません。

こういった汎用性の高さが昔から売れている理由なのかも知れません。

スネアの音はモダンで攻撃的なメタル系と比べると大人しい感じがするので「バシ!バシ!」というアタック感じの強いサウンドを出したい時にはスネアをパラアウトしてサチュレーターを強めにかけたりトランジェントと調整したりすると攻撃的なサウンドになります。

ただし、流石にオシャレ系のポップスなどには合わないので、守備範囲がもっと広い音源が欲しい場合には後記のNASHVILLEやGOSPELを先に買ったほうが良いと思います。


EZX - NASHVILLE

「EZX - NASHVILLE」も昔からある古めの音源ですが汎用性の高い便利な音源です。

公式サイトではには以下のような説明があります。

『EZX Nashville』は、カントリー・ミュージックが生まれた街ナッシュビル・ミュージック・シーンにインスパイアされた、非常に現代的かつ歴史的な深みが有る、素晴らしいドラム音源です。
・・・
サウンドは、全体的にクリアでありながら何処かスモーキー。独特のアンビエンス感に味わいがあり、土臭さや、ブルージーな感触が唯一無二のドラム音源です。対応するジャンルは、ポップ/ロックは勿論、さまざまなジャンルのプロデューサーに使い易く、魅力的になるようプロデュースされました。

https://sonicwire.com/product/29242?srsltid=AfmBOoq544EZDQ0V1Oq_uKvmMAvNvck138Z2MZ6pZeUCTRNVcsDPsOTV

一見するとカントリーミュージック系のドラムかと思いきや「ポップ/ロックは勿論、さまざまなジャンルのプロデューサーに使い易い」との説明のとおり、幅広いジャンルに使いやすい音源です。

個人的に好きな拡張音源ですが、音楽プロデューサーでドラマーとして有名な「くうP」さんもおすすめされているので間違いない音源だと思います。




EZX - GOSPEL

「GOSPEL」も前記の「NASHVILLE」と同様に守備範囲が広く、使い勝手が良い音源です。

「ゴスペル」という名前だけ聞くと使える範囲が限定されるような先入観を持ってしまいますが、販売サイトにも以下の説明があります。

1940年代初期の開放的な音色から、1960年代のドライでモフモフしたタイトな音色、そして現代のパンチの効いたはっきりとしたクリアなサウンドまで、全範囲をカバーしており、ポップス、R&Bやソウル、ロック、ヒップホップ、フュージョンなど、あらゆるジャンルに適したライブラリです。

https://sonicwire.com/product/B1619?srsltid=AfmBOooVr7gXP7jRMgOMxWJ-eBiE0iBH3dEQ8o6WMJ07wlpnks_bAhIp

「NASHVILLE」よりも新しい音源なので、両方を聞き比べてみて好みに合うほうを選ぶという形でも良いと思います。


EZX - POP PUNK

「EZX - POP PUNK」はジョン・フェルドマンという音楽プロデューサーが監修したドラム音源のようなのですが、ジョン・フェルドマン氏は「ONE OK ROCK」や「Blink-182」などを手がけていたということもあり、いわゆる「ワンオク」っぽい音を出すことができます。

パンクやロックの楽曲のそのまま使えるよう強めにコンプがかかったようなサウンドもあり、曲によって「アタック感がもう少し欲しい」「もう少し音が前に出てきて欲しい」と感じることもあるので、万能音源というよりは「ハマる曲に使うと良い感じになる」的な使う場面が少し限定される音源かなという印象です。


EZX - KICKS & SNARES

キックとスネアにフォーカスされた「KICKS & SNARES」も人気ののあるEZXです。

EZX - DANCE

「DANCE」は比較的新しいEDM系の音源で扱いやすいので、「Superior Drummer」や「EZdrummer 」でEDM系のドラム音源も使いたい場合には持っていると便利だと思います。

ただ「Superior Drummer」や「EZdrummer 」は生ドラム系のサウンドが魅力的な製品ですが、EDM系のサウンドに関しては特筆すべき優位な点があるという訳でもないです。

そのため、他のメーカーのEDM系の音源を持っている場合には購入の優先度は下げても良いと思います。



◆Toontrack「EZdrummer 3」

「EZdrummer 3」は前記の「Superior Drummer 3」と同じToontrackというメーカーが販売しているドラム音源です。

「EZ」(イージー)の名前のとおり初心者やドラムのことが全く分からない人でもドラムトラックを作れるような機能が盛り込まれていますし、「Superior Drummer」よりも操作はシンプルで簡単です

その中でも目玉になっているのが「Bandmate」という機能で、ギターやキボードなど別の楽器の音声ファイル(Wav)やMIDIデータを「EZdrummer 」にドラッグ&ドロップすると、それに合ったドラムの候補を複数表示してくれます。

ドラッグ&ドロップするデータは「小節の頭」から始まっている必要がありますが、Studio Oneで使っている限りではDAW上で小節の頭からオーディオファイルを切り取る形で「EZdrummer」にドラッグ&ドロップできる(おそらく他のDAWも同様だと思います)ので、ほとんど手間はかかりません。

自分の作った2MIXの音源をDAWに貼り付けて、Aメロ、Bメロ、サビなどのパートごとに切り取って「EZdrummer」にドラッグ&ドロップして、出てきたドラムパターンの候補から好きなものを選んでDAWに貼り付ける、という感じで曲全体のドラムトラックを作ることも可能だったりします。(ただしフィルに関してはMIDIのドラムパターンから持ってくるか、自分で作る必要があることも多いです。)

「Bandmateはドラムパターンを自動で生成してくれる機能」と説明されていたりしますが、自分が使った範囲では「生成」しているというよりも、元々用意されているパターンの中からタイミングが合うものを「選んでいる」という感じで、元ファイルが違っても同じようなドラムパターンが提示されることも良くあります。

ただドラムトラックを全く作ったことが無い人にとっては便利な機能であることは間違いないと思いますし、ハイハットなどの細かいニュアンスなどを手作業で入力するのが面倒な時にキックとスネアだけ自分で作って他は「Bandmate」機能で作る、という部分的な活用方法も良いと思います。

その他の機能に関して言えば基本的には「EZdrummerはSuperior Drummer の下位互換」という感じで、「Superior Drummerでは出来るけれどもEZdrummerでは出来ない」ということも多いです。

他のメーカーのドラム音源に比べるとEZdrummerの音作りの範囲はそこまで狭いという訳ではなく普通に使いやすいプラグインなのですが、同じメーカーのSuperior Drummerの自由度が高すぎるので、比べてしまうとEZdrummerの自由度が狭いように感じてしまうのだと思います。

ただ「EZdrummer」は操作がシンプルで簡単なので初心者でも使いやすいと思いますしベテランの人であっても素速く作業をしたい場合には「EZdrummer」を使ったほうが早くドラムトラックを作れるということもあると思います。

「EZdrummer」ではあまり細かい音作りは出来ないので、曲に合わせてドラムの音作りを積極的に変えたい場合には前記の「EZX」という拡張音源を使うことが前提になっていると思います。

そのため「EZdrummer」は初心者用の音源という見た目を装ってはいるものの、その後に拡張音源を買うことを考えると実は高価格帯のプラグインの部類なのかも、印象もあります。


◇「EZdrummer」+「EZX2個」+「Superior Drummer」を安く入手する方法

「EZdrummer」には好きな「EZX」を2個入手できるバンドル製品もあります。

昔からある「EZX」はセールになることもありますが、比較的新しい「EZX」はセールにならないことも多いので、比較的新しい「EZX」を2個以上買う予定がある場合には「EZdrummer」と「EZX」を別々に購入するよりも、バンドルで買ったほうが全体で見ると安くなります。。

そして「EZdrummer3」を持っているとクロスグレードという製品を買う形で「Superior Drummer 3」を安く買うことができます

そのため、新しいEZXを2個以上買う予定がある場合には、「Superior Drummer 3+EZXを2個」買う場合と、「EZdrummer3 Bundle+Superior Drummer 3」を買う場合では、それ程大きな価格差はなく、結果的に「EZdrummer3」を安く入手できることになります。


分かりにくいと思いますので計算例を示しておきます。
(以下の計算はこの記事を書いている時点で最も安いと思われる価格に基づいて計算をしていますが、サイトによって販売価格が違うことも多いので購入する際は複数のサイトで価格を比べてみることをおすすめします。)


(ア) 「SUPERIOR DRUMMER 3」と「EZX」2個を別々に買った場合

① SUPERIOR DRUMMER 3 (セール時参考価格) 3万8000円

② EZX(セール外参考価格) 1万1000円×2個=2万2000円

合計 6万0000円
 「SUPERIOR DRUMMER 3」と「EZX」2個入手できる


(イ)「EZ DRUMMER 3 BUNDLE」と「SUPERIOR DRUMMER 3」を買った場合

① EZ DRUMMER 3 BUNDLE(セール外参考価格) 3万3000円

② SUPERIOR DRUMMER 3 CROSSGRADE (セール時) 3万0400円

合計6万3400円
「SUPERIOR DRUMMER 3」と「EZX」2個に加えて
 「EZ DRUMMER 3」も入手できる

差額は約3400円

つまり将来的に「EZX2個」と「Superior Drummer」を買う可能性があるのであれば、最初に「EZ DRUMMER 3 BUNDLE」を買っておけば全体で見ると「EZ DRUMMER 3」を3400円程度で入手したのと同じになる、という計算になります。

前記のとおり「Superior Drummer」をメインで使うようになっても「EZX」という拡張音源を使うことで音作りを素速く終わらせることができるので、「EZX」を買い集める人が多いです。

また現状では「Bandmate」の機能は「Superior Drummer」にはなく「EZdrummer」にだけ搭載されていますし、細かい音作りが不要な場面では「EZdrummer」のほうがドラムトラックを素速く作ることができるので、「Superior Drummer」をメインで使うようになったとしても「EZdrummer」も持っておくメリットはあると思います。

そう考えると、最初に「EZ DRUMMER 3 BUNDLE」を買って「EZdrummer」だと物足りないなと感じた時に「Superior Drummer 3」を割引価格で買う、という形のほうが、コスパが良いという結果になる可能性が高いです。

ただし
・「Bandmateは使わないしEZdrummerは要らない」
・「EZXも要らない」
・「EZXはセールになる古いものだけ買う」
という人は最初からSuperior Drummerを買ったほうが安いので、ご自身の環境などに応じて選ぶのが良いと思います。


◆XLN Audio「Addictive Drums 2」

「Addictive Drums 2」は人気の高いドラム音源で、「Superior Drummer」が人気になる前に「最強のドラム音源」的な立ち位置にありました。

過去には市販の音源を聞くと「どれを聞いてもAddictive Drumsの音のような気がする」という時期もあったくらい、多くの市販の音源で使われていました

Addictive Drumsはコストパフォーマンスも良く「Custom Collection」という自分の好きな「ドラムキット」「MIDIデータ」「キットピース」を選ぶことができるバンドル製品で買うと、「ドラムキット」と「MIDIデータ」1を1セットあたり4000円前後で購入することができます。(為替やセールの有無などにもよります)

初心者でも手が出しやすい価格帯のドラム音源だと思います。

また使い方も比較的シンプルで分かりやすい上に、音も最初から「加工された完成形のサウンド」が何パターンも入っているので、プリセットを選ぶだけで音作りの大部分を完成させられるという手軽さもあります。

他方で音作りを細かく詰めていったり、あるいはサウンドを大胆に変えたりすることもできるという自由度もあります。

1曲全体分のMIDIデータも入っているのでMIDIデータを貼り付けて自分の好みに修正していくだけで、1曲全体のドラムトラックが簡単に作れてしまうのも便利だったりします。

負荷も軽いのでノートパソコンなどでも動作が重くなる心配があまりないのもメリットです。

音作りの自由度は「EZdrummer」よりも上で「Superior Drummer」も下という感じですが、価格は「EZdrummer」よりも安いので、そう考えるとコストパフォーマンス的には優れた音源だと思います。

Addictive Drumsのデメリットとしては、過去にAddictive Drumsが絶大な人気を誇って使われ過ぎた反動か、最近では「Addictive Drumの音に飽きてしまった・・・」といいうDTMerやリスナーも一定程度出てきており、「Addictive Drums離れ」的な風潮を感じることがあります。

「使われすぎたAddictive Drumsの音」は一部のドラムセットなので、その音を使いたくなければ別のドラムキット(ADpaks)を購入して使えばあまり問題はないかなと思います。

その他のAddictive Drumsのデメリットとして、サウンドが派手で使いやすいという反面で「リアルさに欠けている」という印象を持つ人もいると思います。

個人的には実機のドラムとは違ったニュアンスが出せるところがAddictive Drumsの良いところでもあると思ってはいますが、自分でドラムを叩く機会が多い人にとっては生ドラムとの違いに違和感を感じることもあるかも知れません。

特にスネアを連打させると、音量・タイミング・位相などが同じになってしまい、機械が叩いたような所謂「マシンガン」サウンドになってしまうことも多いです。

そのため、私はスネアを連打させる時は1つ1つスネアの種類を変えたり、音量やタイミングを手作業でズラしているのですが「面倒だな・・・」と感じることがあります。

またエフェクト類が豊富であるものの、それほど使い勝手が良い訳ではないので、パラアウトをしてDAWのミキサー上で別のプラグインのエフェクトをかけたほうが良い結果になることも多く、この点も面倒だと感じる人もいると思います。

そうは言っても、Addictive Drumsはプリセットを選んで鳴らすだけで最初から「完成された使いやすいサウンド」を出してくれるので、持っていると便利なドラム音源であるということは間違いないと思います。



◆BFD Drums「BFD」

「BFD」はかなり昔(たぶん20年以上前)からある歴史のある音源で、一時期は「ドラム音源といえばBFD!」というくらい、絶対的な覇権を握っていた音源で、現在は「BFD3」というバージョンになっています。

昔のドラム音源はどうしても「打ち込み」っぽさを感じてしまうものが多かったのですが、生ドラムに限りなく近いサウンドを再現できる「BFD」が登場した時にDTM界隈に激震が走ったような強烈なインパクトがありました。

そんな生ドラム系音源の先駆けとも言えるBFDですが、前記の「Addictive Drums 」や「Superior Drummer」といった強力なライバル音源の登場により
少しずつ影響力が弱まってきたという印象です。

「BFD」は生ドラムのリアリティが徹底的に追求された音源ということもあり、ドラムを実際にレコーディングしたようなサウンドが特徴的なのですが、実際にドラムをレコーディングしたことがある人であれば分かると思いますが、リアルな生ドラムの音は意外に「素朴」な雰囲気ある音だったりします。

ドラム経験のある人や、レコーディングの経験がある人であれば、ドラムの音をイチから作り込んでいけるので、そういった点では非常に優れた音源だと思います。

お化粧が少なめの「原石」をメイクアップアーティストが自分の好みに合わせて磨きながら大変身させていくような楽しみがある、というイメージです。

しかし「BFD」は「リアル」を追求してきた音源という宿命なのか、他の音源に比べると完成された音にたどり着くまでのハードルが高めです。

前記の「Superior Drummer」も音を完成させるのに手間はかかるものの「EDX」という拡張音源と使うことで簡単に「完成された音」にたどり着けるという近道がありました。

しかし「BFD」は「ガチの硬派な生ドラム系音源」という感じで、完成された納得のいくサウンドを出すまでには、それなりの経験や知識が必要になってくることも多いです。

最近では「最初から完成された音が欲しい」という人も多く、前記の「EZdrummer」や「Addictive Drums 」のほうがお手軽感があるのも事実です。

このような点において「BFD」は現在では使う人を選ぶ硬派な歴史のある音源、という立ち位置になってきたなという印象があります。

ただ「BFD」は最近は1万円前後と非常に安い価格で販売されていることもあります

昔は「BFD」といえば手が出しにくい高級音源というイメージでだったので、1万円前後でBFDが手に入ると考えると非常にお得感があります。

しかも「BFD Player」という無料版も配布されています。

難易度がやや高めの音源ではありますが、自分で音作りを勉強できる人であれば非常にコスパが良い音源だと思います。


◆Steven Slate Audio「Steven Slate Drums 5」

Steven Slate Audio「Steven Slate Drums 5」は個人的にサウンドが好きな音源です。

「EZdrummer」や「Addictive Drums」と同様に最初から「作り込まれた音」「完成された音」を出すことができ、サウンドも一聴するだけで「良い音」と感じる人が多いようです。

音作りの幅は「EZdrummer」よりも少し自由度があるものの「Superior Drummer 」のような細かい作り込みは出来ない、という感じです。

セールの時期だと1万円前後で購入できることもありコストパフォーマンスも良い音源です。

ただ「EZdrummer」程ではないのもの、拡張音源を追加で購入してく課金タイプの音源なので、拡張音源も集めていくとなるとそれなりの出費になってきます。

また「EZdrummer」と違って現状では初心者向けの機能もあまりありません。

Steven Slate Drumsには待望のGrooveAI機能が追加されました

・オーディオファイルを貼り付けると、それに合ったドラムパターンの一覧を生成する機能(Drop AI)

・キック、スネア、ハイハットなどのパターンをいくつか打ち込むことで、それに合ったドラムパターンの一覧を生成する機能(Step AI)

「EZdrummer」の「Bandmate」や「Tap2Find」などと似たような機能です。




ちなみに「Steven Slate Drums 5.5」は無料版も配布されています。

↓の公式サイトを下にスクロールして「TRY SSD 5.5 FREE NOW」という箇所からアカウント登録をすると無料版を入手できます。

無料版は使えるドラムキットが一部に限定されていますが、サウンドのクオリティは有料版と変わらないので、現状の無料ドラム音源の中では最高レベルに使えるプラグインだと思います。


◆GGD(GET GOOD DRUMS)

GGD(GET GOOD DRUMS)も海外サイトから入手する必要の音源ですが、
「Adam Nolly」というメタルシーンで有名なアーティストが関わっているブランドということもあり比較的知名度がある音源だと思います。

Neural DSPというブランドの「Archetype Nolly」というギター用アンプシミュレーターも有名なので「Nolly」さんの名前が見聞きしたことがある人も多いと思います。

GGD(GET GOOD DRUMS)のドラム音源は基本的にある程度の音作りはなされているものの完成型にはなっておらず、自分の好みの合わせて完成させることが前提となっているため、すぐにドラムトラックを完成させたい作曲家などには少し面倒な部分がありました。

しかしGGDの比較的新しい「One Kit Wonder」という音源のシリーズは音が最初から完成形に近いところまで作り込まれており、立ち上げた時点のサウンドでそのまま曲を作り始めることができるので便利です。

しかも「One Kit Wonder」は使うドラムセットの数を限定することで価格も安くなっているので気軽に買いやすいと思います。

GGDの音源は無料版の「Kontakt Player」で起動します。

ドラムキットに含まれるパーツの数は十分なので困ることはないと思いますが、正直なところミキサー画面の挙動が分かりにくいので、立ち上げた状態のサウンドをそのま活かした形で使うか、あるいは細かい音作りをした場合にはパラアウトしてDAWのミキサーで処理したほうが良さそうです。

「Superio Drummer」で細かい音作りをするのが好きな人にとっては不便だと感じる人もいると思います。

とはいえ、各音源の価格はこの記事を書いている時点で9000円~16500円程度と入手しやすいのは魅力です。

また過去のブラックフライデーで50%オフになったことものあるので、セールの時期を狙って購入するのも良いかも知れません。


◆mixwave

海外サイトからの購入になりますが、mixwaveというメーカーのドラムも最初から「完成された」お手軽音源として便利です。

メタルやハードロックなどに合う音源が多く、特にスネアの「バシ!バシ!」というアタック感の強さやリバーブ感が気持ちよいです。

シンバルやハイハットなどの種類も多いです。

mixwaveのドラム音源を使うためにはNative Instruments社の「Kontakt」というサンプラーが必要となりますが、無料版の「Kontakt Player」でも起動するので追加料金は不要です。

デメリットとしては各ライブラリの通常価格が1万5000円~3万円程度と高めなので、様々な種類の音源を集めたい人にとっては前記の「EZdrummer」「Addictive Drums」「Steven Slate Drums」などのほう良いです。


◆Soundblind Drums「Counterkit」

こちらも海外のサイトで入手できる最初から音作りが完成している「お手軽系」音源でサウンドはかなり良いです。

無料版の「Kontakt Player」で起動します。

モダンなメタル系のドラムで、スネアやタムは「バチバチ」「跳ねている」「弾ける」「クリスピー」という印象があります。

キックも中音域から高音域がはっきりとしたスピード感じのあるサウンドですが超低域はあまり出ていないので、曲によってはサブキックを追加したくなることもあります。

この記事を書いている時点で1万円程度とドラム音源としては入手しやすい価格ですが、パーツ数は少なめで状況に応じてシンバルやタムを使い分けたい人によっては物足りないかも知れません。

細かく音作りをするための機能もありますが「Superio Drummer」などの比べるとUIが分かりにくく、積極的な音作りをしたい人にとっては不便さを感じるかも知れません。




◆Odeholm Audio「Impact Drums 1」

Odeholm Audio「Impact Drums」も最初から「完成された」サウンドを出せる「お手軽系」ドラム音源です。

「Impact」という名前のとおりメタルやハードロック系に合うような「バキバキ」とした前に出てくる気持ちのサウンドです。

この記事を書いている時点で5400円(セール価格)と安く入手できますが、 有料版の「Kontakt」が必要になるので、Native Instruments社の「Komplete」などを買ったことがない場合には「Kontakt」を入手するためのコストが別途かかります。



◆IK Multimedia「MODO DRUM」

IK Multimediaの「MODO DRUM」は、「物理モデリング」によってサウンドが生成されるという特徴がある斬新なドラム音源です。

他の一般的なドラム音源は実際にドラムを叩いた音を録音して音声ファイルを作成し、その音声ファイルを細かく調整しながら再生することでドラムの演奏を再現しているのですが、「MODO DRUM」はコンピュータの中でドラムを仮想的に演奏させて、何も無かったゼロの状態からドラムの音を作り出しています。

そのため、スティックやビーターなどの細かい点まで調整ができたり、演奏方法もバリエーションも豊富だったり、各キットの音を調整しても不自然にならないといった、というメリットがあります。

マニアックな調整が可能なのでドラマーの方は楽しく遊べると思います。

さらに巨大企業であるIK Multimediaの製品ということもあり、収録されているドラムキットが多いにもかかわらず価格は安く、ドラムセット1個あたりの単価で考えると、コストパフォーマンスは非常に優れています

ただ、「MODO DRUM」にデメリットが無い訳ではりません。

「物理モデリング」という特殊な技術を使っているからかも知れませんが、現時点ではサウンドのリアリティさの点では「他のメーカーの音源のほうが良い音に感じる」という印象を持つ人が多いと思います。

ちなみに、IK Multimediaは「Total Studio MAX」という「DTMに必要な音源やエフェクト」一式が詰め込まれたバンドル製品を販売しており、「MODO DRUM」もこのバンドルに含まれています。

「Total Studio MAX」はセールの時期には3万円前後という異常な安値で販売されることもあるので、「MODO DRUM」単体を買うよりも「Total Studio MAX」というバンドルの形で買ったほうがコスパは良いです。



◆Native Instruments「Studio Drummer」

Native Instruments「Studio Drummer」は、同社の「Komplete」というバンドル製品(Standard以上)に入っているドラム音源です。

「Studio Drummer」は昔から「Komplete」に入っているので、目新しさはありませんし、特別に便利な機能が搭載されている訳でもないので「Kompleteは持っているけどStudio Drummerはほとんど使っていない」という人もいると思います。

しかし、意外に「Studio Drummer」で作ったドラムトラックを本職のドラマーに聞いてもらうと良好な意見が多いので、今でも十分に使える音源だと思います。

ちなみに「Komplete Standard」には「Studio Drummer」の他にも、「Abbey Road Drummer」という生ドラム系音源や、EDM系などで使える「Battery 4」というサンプラー系ドラム音源だけでなく、ピアノ、シンセサイザー、ベース、ギター、民族楽器・・・など大量の音源が入っています。

「ドラム以外の音源もひととおり揃えたいけど予算が厳しい」という場合にはセールの時期に「Komplete Standard」を買って取りあえずKompleteの入っている音源を使って、予算に余裕が出てきたら他のメーカーの音源に少しずつ手を出していくという方法でも良いと思います。


◆UJAM「Beatmaker」シリーズ

UJAM「Beatmaker」シリーズは、セールの時期には1000円台から2000円台という破格で販売されることがある鬼のようなコスパの良さを誇るドラム音源です。

緻密な音作りなどは出来ませんが完成されたドラムのサウンドをそのまま使うことができ、指定の鍵盤を指1本で押さえるだけで即戦力的なループサウンドを鳴らすこともできます

初心者の方には使いやすいですし、ベテランのDTMerが作曲作業の時間を短縮するために使うこともできます。

「Beatmaker」シリーズはこの記事を書いている時点で14種類あり、作成したい曲のジャンルに合わせて選んでいくことになります。

全てのシリーズが入った「UJAM Beatmaker Bundle」もセールの時期には1万5000円前後で購入できるので、「EZdrummer」や「Addictive Drums」のような課金沼に苦しむ心配もありません。

Studio Oneで読み込むとピアノロールにキットの名前が表示されるので「C0がキック?、D1がスネア?、E1は何だっけ?」みたいに悩む必要がないのも便利です。

「Beatmaker」シリーズのデメリットとしては、細かく詰めていくような音作りは難しいのと、キット1つあたりに入っている音数が少なめであるという点です。

だだし、このデメリットは「簡単に使える」というメリットの裏返しでもあるので、難しいことを考えずにサクサクとドラムの音色を決めていきたい人には便利な音源だと思います。



◆XLN AUDIO「XO」

XLN AUDIO「XO」は生ドラム系ではなく、サンプラー系のドラム音源ですが、便利な機能が盛り込まれており手元にあると便利なプラグインです。

EDM系・ダンス系などの音楽を作る時にはワンショットのサンプル音源(音声データ)をサンプラーに読み込んで、サンプラーをドラム音源として使うというケースも多いです。

また生ドラム系の音楽を作る時にも、生ドラムとは別のキックやスネアのサンプル音源をサンプラーに読み込んで、生ドラムにレイヤーする形で鳴らすことで迫力のあるサウンドを作ることができたりします。

サンプラーに読み込むサンプル音源は「サンプルパック」という形で購入したり、「Splice」などのサブスクサービスで入手できます。

また「PluginBoutique」というサイトでプラグインを買ってトークンが集まると「サンプルパック」が無料でもらたりもするので、DTMをやっているとストレージの中に大量のサンプル音源が溜まっていくことになります。

そのような大量のサンプル音源の中から、制作する曲に合った音源を選んでサンプラーに読み込んでいく必要があるのですが、この作業が非常に面倒なんです。

「Splice」にある音源はジャンルなどである程度の絞り込みをしながら検索をしていくことはできますが、全く違う雰囲気のサンプルが検索結果として出てくることもあり、目当てのサウンドにたどり着くまでに時間がかかります。

「サンプルパック」として購入した音源の場合にはもっと悲惨で、フォルダを1個ずつ開けて「違う・・・これも違う・・・」という地道な作業が必要なることもあります。

そんな時に「XO」があると、大量のサンプル音源の中から目的のサンプルを爆速で探すことができます

「XO」はストレージの中に入っている全てのサンプルを一気に読み込み、、各サンプルを「音の長さ」と「音の高さ」に分けた上で「点」で1画面の中に表示してくれます。

しかも、キック、スネア、シンバル、FXなどに分けて色分けもしてくれます。

そして右クリックをしながら「点」をなぞっていくと次々とサンプルの音を再生してくれるので、マウスを動かしているだけで目的のサンプルを探すことができます

ドラムトラックを作っているとサンプル音源を探すという地道な作業に時間を取られることも多いので、「XO」をDAWに入れておくと時間を短縮できるようになり便利です。

その他に「XO」はサンプラー系ドラム音源としての機能も優秀です。

詳しい使い方は「Sleepfreaks」さんの動画がとても分かりやすいので、そちらを見ていたくのが良いと思いますが、動画を見ると物欲が強く刺激されるかも知れません。

「XO」はセールの時期には1万円以下で購入できるので、購入を検討している方は安くなったタイミングを見計らってから買ったほうがが良いと思います。


「XO」のデメリットとしてはサウンドを編集する画面の各パラメーターが小さく、細かい調整がしにくいところです。

数値で入力できれば良いのですが、マウスでドラッグする方法でしか調整できず、調整するためのノブやフェーダーも小さいので、マウスを少し動かしただけでもパラメーターが大きく変化してまうことも多く「0.5だけ動かしたいんだよな・・・」という時にはイライラすることもあります。

他方で、DAWのピアノロール画面では打ち込みが面倒な3連符のフレーズや、スウィングしたフレーズなどを簡単に作成する機能もあったり、ベロシティを簡単に調整できたりと、便利機能が豊富です。

そのため文句を言いながらも便利なので結局使ってしまうことも多く、持っておいて損はないプラグインだと思います。






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