執筆例①(2022年5月執筆)
以下、過去にライティング課題として提出したものです。
文字数は400文字前後/アルバム・シングル・ミニアルバムのレビューを5種類というものでした。
①シバノソウ「愛を祈らないで」シングル
歌い出し「日焼け止めで騒ぐ女子 プールサイドできらきら」の歌詞と
シバノの澄んだ声の組み合わせにより「愛を祈らないで」という台詞のような
世界に一瞬で連れ去られてしまう。
何よりも「きらきら」「永遠」「バイバイ」という、青くさい単語の羅列がナイフのような鋭さを持ち、この愛が既に終着した事を我々に突き立てている。
一見これは「青春時代の恋」を連想させる楽曲となっているが、
シバノがこの曲のリリースに際し「偶像にするな、祈るなよ!!!」という犯行文とも言えるものをTwitterに掲載している。
近年「推し」という言葉が台頭したりと(勿論「推し」への愛と「恋愛」の愛の意味は異なるだろうが)、我々は「愛する者」を無意識に自分の都合の良いようにカスタム(ここでいう偶像の意味だ)する事が「当たり前」だと錯覚していないだろうか?
本当の愛とは相手の実像を見て、対話し、リアルを受け止めることから始まる。
それを我々に提示する作品となっている。(404文字)
②ゆっきゅん「DIVA ME」シングル(B面「片想いフラペチーノ」)
ピンクの髪の毛にフリルやラメがあしらわれた衣装を身に纏う。
ゆっきゅんという一人の「DIVA」の存在を世に知らしめた戦慄のデビューシングル。
ゆっきゅんは、なんてたって、凄い。
「寝る前にメイク落とせたし」「でも急な代引きは払えない」「毎日今日からちゃんとしたい」誰だってこんな出来事、身に覚えがあるだろう?
これ、紛れもないデビュー作の歌詞なのだ。そう。ゆっきゅんはリスナーの生活の「リアル」を切り取り、煌びやかな「DIVA」へと変容させてしまう。
B面「片思いフラペチーノ」もそれ然り。
「横顔が好きなの こちら向いたら終わりよ」「片思いしかできないかもしれない」
流石はDIVA。恋に悩む乙女心も完璧である。いつだって「リアル」を歌ってくれる。
その才能は、でんぱ組.incにも作詞提供を行うなど、作詞家としても駆け出した。
ゆっきゅんを知らない者は本当に人生損をしている。
DIVAの始まりをその耳にこびりつけて欲しい。
あんたも私も誰だってDIVA。それを忘れちゃあいけない。(413文字)
③アンと私「季節を越えてそばにいてね」アルバム
「Boo」の不安定なギターリフから始まる「どうせ裏垢でしか呟かれないバンド」の最新アルバム。全曲、「裏垢バンドか裏垢バンドじゃないかで言うとこれは裏垢バンドだ」と思ってしまう仕上がりとなっているから面白い。「裏垢」という単語で一見、椎木知仁がよぎるが、Vo.Gt.二口はもっと掴めない難解な人物だ。それが全面に表れていると感じる、「せめて音楽だけはやめないようにね」では、歌詞はファン目線・メロディがバンドマン目線なのだろうか?とてもパンクな仕上がりとなっている。歌詞の世界が、メロディの世界が、どっちが本当の二口なのか。名前のように、異なる想いを持つ二つの口があるなぁ、とつい感じる作品。
終盤の楽曲にも要注目だ。「Cry」「僕が風俗にいったら君はどんな顔するだろうか」どちらも暗を連想する曲名だがもう全然そんな事ない。
個人的にはこのバンドは裏垢に留まって欲しくない。
でも、彼らの楽曲はロックというよりアングラで、なんていうか、すこぶるカッコいい。
(全415文字)
➃BaseBallBear「(WHAT IS THE)LOVE &POP?」アルバム
メンバーが「やりたい事をやった」と公言している作品であり、収録曲への根強いファンが多いアルバムだ。
このアルバムを一言で表すならば「グラデーション」である。
収録曲は、情熱から静寂へ赤から青へ。
特に「喪失感」が後半になるに連れ顕著に現れ始める。ここでは恋愛を題材した楽曲が
連なるものの、「両思い」の幸せを歌わないところが小出祐介らしい。
2000年代にリリースと聞いて納得するようなギターロックが特徴的である。
「音」という部分で着目すると「レモンスカッシュ感覚」の後にボーナストラックのような仕組みで、廊下を駆けるかのような音が聞こえた後にドアが閉まる重低音が収録されている。まるでどこかへ逃げて行くようなその音は「彼女は何処へ行ってしまったのだろうか。」と青春の気持ち悪さを聴いた者に残してくれる。そのドアは「ヘヴンズ・ドアー」で無い事を祈るばかり。「これがBaseBallBear、これがBaseBallBear流のロック」をアルバム全体を通して体現している作品である。(409字)
⑤メランコリック写楽「地球でねむらせて」ミニ・アルバム
今はもう解散してしまったメラシャラの代表作とも言える作品。
一見アニソンを彷彿させるももすの声に注目が行きがちだが、リズム隊一人一人のテクニックが高い事を窺わせる作品だ。「成仏できない」の木魚を彷彿させる音色から始まるイントロはメラシャラワールドの開演を意味している。二曲目「ルカは知ってる」ではリードギター・甘酒の奏でる音色にも着目して欲しい。甘い歌声に甘いギター。しかし歌詞の解読不明な不気味さで単純に「甘い」だけでは無い文学的な楽曲となっている。「宇宙戦争」では突如転換するCメロが特徴的。音頭のリズムをベースとするメロディラインの存在はこのアルバムはあくまで一つの纏まりを持ち、制作されている事が示されている。キャッチーな「猿なんて絶対」で終演。何と言っても、音と音との切れ間が心地いい。
どうしてこのリズムにこのボーカルなのか。時折現れる切なさは、メラシャラが本当に伝えたかった事なのかもしれない、と考え込んでしまう。(412文字)
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