![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158591612/rectangle_large_type_2_d132a7cc1b1d81120dda87dce3aaf238.jpg?width=1200)
新規就農1年目の失敗録 〜経験者でもおちいる独立の罠〜』
すぐにうまく行くと思っていた
新規就農の先輩が、『相方くんは、生産現場の経験も長いからすぐ上手くいくよ〜』
と、言っていた言葉を間に受けた。
異業種からの新規就農だった先輩は、売れる植物を安定的に作れるようになるまで時間もかかり、苦労したと話していました。
その点は、相方が花苗生産会社で16年以上働いていた経験があるので、すぐに軌道に乗るだろうと心配いらないよねと、言うことだった。
私も相方も、『なるほど、そうかもしれない。よかった。』とサラッと流していた。
どんどん育てて、早く軌道に乗るなら未来は、明るいと楽天的に考えていたのだ。
オリジナルビオラ注文殺到
新規就農となると、生産の安定も努力しなければいけないところだが、同時に重要になってくるのが、売り先だ。
売り先も、部会(複数の農家さんが所属して1つのものを生産するグループ)に所属したり、自分で営業したり、農家さんによって様々かと思います。
私の場合は、SNS運用で寄せ植え教室の先生たちに、知ってもらいたいと考え寝る間も惜しんで就農1年前からSNS運用をしてきた。
その甲斐あってインスタグラムでは、2万人の方にフォローしていただけて、スレッズでは4,000人以上の方にフォローして頂けた。
育種したペチュニアやビオラの写真をあげると、『どこで買えるんですか??』と嬉しいお問い合わせを沢山頂いた。
園芸シーズンの中でも、1番の盛り上がりになる秋冬シーズン。
いよいよ相方が育種したオリジナルのビオラの販売をすることになった。
教室運営者さま、販売店さまに向けて告知をすると、驚くほどのご注文をいただける事になった。
この調子で、どんどん売れていくのかも!と、私は、大量のお問い合わせメールに返信しながら、ニヤニヤ嬉しい悲鳴をあげていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158590915/picture_pc_8d9a401b8ae3ec60338dccc70eed3870.jpg?width=1200)
急ぎすぎた結果
こんなに沢山のご注文を頂けた!と、喜んでいる私を横目に相方の返事が思わしくない。
私は、ゾクっと嫌な予感がした。
『実は、ビオラの調子が良くないんだ。』
相方が放った、その一言で私は、凍りついた。
『ちょっと待って、もうこんなにご注文頂いてるんだよ!』
と、私が反論したところで、ビオラたちには全く届かないのだ。
馬に念仏ならぬ、ビオラに念仏である。
相方の言った通り、ビオラは日を追うごとに、調子が悪くなる。
たくさん分枝させて、お客さまが驚くほど花をつけて出荷しようと計画して行ったピンチ作業(花芽をカットして、枝分かれを誘発させること)が、大きく裏目に出たようだった。
自分で作り出した品種の特性を、理解できてないからこその失敗だ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158591212/picture_pc_bd31a8ab1f3b6cf3135302c3c44dd562.jpg?width=1200)
そして、このピンチ作業以外にも自分たちで混ぜて作っていた土と、奮発して買った使い慣れていない高価な肥料、追い打ちをかけた液肥の追加だった。
使い慣れていない肥料を土に混ぜていたのも、追肥に使ったのも良くなかったのかもしれない。ビオラを見ても、肥料が効いてないように感じられ、さらに液肥をあげたりもしてしまった。
後から知った事だが、効き具合が非常に遅かったりするそうだ。
焦りが先走り、正常な判断ができてなかったかもしれない。
今でこそ、これらが不良の原因だったのかな?とも思うが、決定的な原因がわからないのが事実だ。
確実に言えるのが、様々な事が重なり合って失敗という結果につながったのだ。
なんとか、間に合わせなければと私と相方は、寒い中夜遅くまでビオラの手入れを行なった。
嬉しいはずのお問い合わせが、恐ろしくて毎日胃が痛かった。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158591100/picture_pc_123eb901b48dc88182f66557746f22ae.jpg?width=1200)
経験者であっても失敗は付きもの
相方は、何十万株の花苗を生産管理してきた経験が16年以上。
一般品種と呼ばれる花苗を、大量に生産してきた。
にもかかわらず、新規就農ならば1からのスタートなのだ。
育種をして付加価値の高い花を作れば、抜きに出られるなんて甘いことは、なかった。
土も、前職で使っていたものを仕入れることができず、違うものを使う事にもなる。
苗生産にとって、土は非常に重要なのだと言うことも、大きな失敗をして身をもって経験した。
肥料もどれも同じ、むしろ高いものを使えば間違いない、なんてことは、全くなかった。
とにかく、経験として自分たちが使う材料がどう作用するかを知ることは、とても重要なのだ。
知らないと言うことは、農家にとって死活問題になる。
先輩農家さんも、土を変えることには、とても慎重になると聞き『確かに』と大きく頷いてしまった。
それに、自分で品種改良した植物の特性を理解するにも、やはり長い時間がかかってくる。私たちは、花だけでなく株の仕上がりもこだわって生産していきたいので、思い通りの苗を送り出すには、まだまだ時間がかかりそうだ。
ベテラン農家さんが、当たり前のように行っている『安定生産』のすごさを、就農1年目にして自分たちが作り出した品種に、厳しく教えられたのです。
ご想像の通り、就農1年目のオリジナルビオラの販売は、大きく失敗する事になりました。
大量に頂いた注文は、ひたすら謝ってお断りし、無理して送ったビオラは、お叱りを受ける事にもなりました。
この時期は、1日中謝罪を口にしてたと思います。
しかし、ずっしり落ち込んだ私たちに力を与えてくれたのは、多くのフォロワーさんたちとご注文をお断りしたお客さまでした。
みなさん口を揃えて『植物相手だから仕方がない、できるまで待ちますから来年を楽しみに待ちます』と言ってくださったのです。
その暖かな励ましが、私と相方を支えてくれました。
そして、たくさんの励ましと、サポートをして頂けることとなり、10歩下がったところからまた1歩踏み出すことができたのです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/158591367/picture_pc_584b54ec2ef812f885aa16f9afc8d3d5.jpg?width=1200)