低予算で海外進出を目指す!海外進出で使える補助金・助成金とは?
国内経済の停滞・先細りや少子高齢化、産業のグローバル化に伴い、新たなマーケットを開拓しようと、海外進出にチャレンジすることが当たり前の時代となってきています。その流れは上場企業だけではなく中小企業にも波及していて、これからも海外進出の動きはどんどん加速していくことが予想されます。
ところが、海外進出の際に直面する大きな課題のひとつが「カネ」です。特に初期の頃は、海外で開催される展示会への出展や、現地進出前の市場調査など、多額の準備予算がかかります。また、進出後にもコンサルティング費用や通訳費用、商品の輸送費などといったコストがかかってきます。
こうした時の助け船として活用できるのが「補助金」「助成金」です。
今回の記事では、海外進出を検討している企業が利用可能な補助金・助成金についてご紹介していきます!
「補助金」「助成金」の違いは?
実際利用する側からすると、ほとんど違いはないと言っていいでしょう。
一般的に、「補助金」は公募によるものが多いと言われ、「助成金」は申請に必要な要件を満たしていれば受給できるものもあります。しかし、「助成金」という名前なのに、公募で審査をパスしなければ受給できないこともありますし、「補助金」に比べて準備する資料が多い場合もあるので、ハードルの高さはケースバイケースです。
上図は、実際に当社が申請した、自治体主催の「助成金」の申請書類ですが、公募で、しかも事業計画書など22ページ超の申請書類を提出しなければならず、採択率は40%くらいでした。「補助金」も「助成金」ほとんど同じものと考えていいでしょう。
補助金・助成金を活用するメリット
では、海外進出の際に補助金や助成金を活用するメリットとは何でしょうか?
最も大きいのは、原則として返済が不要だということです。銀行などからの融資では、返済に加え利息も大きな負担ですよね。その点、返済不要な資金の助けを借りながら、海外での新規事業や事業拡大を進めていけるのは大変魅力的です。
特に海外進出を検討する初期段階は、ほとんどの場合が投資額が売上を上回っている赤字の状態だと思います。そのような中で資金不足を補い、事業として継続していく点からも、メリットは大きいと言えます。
もうひとつの魅力は、支援元の機関に蓄積されている、海外進出に関する様々な知見や経験、知識を共有してもらえる可能性があること。加えて、自社より先に補助金や助成金を受けた先輩企業の事例を学んだり、コネクションを得られるチャンスもあります。
国内ビジネスと環境が異なる海外ならではの不測の事態やリスクに対し、資金面だけではなくノウハウでもサポートしてもらえる点は見逃せません。
そしてこうした知識は、決して補助金や助成金の対象として採用されなくても、公募に挑戦する過程で情報として取得できることもあります。自社の事業に適した補助金・助成金であれば、何はともあれ挑戦してみるのが良いでしょう。
補助金・助成金のデメリット
一方、このように魅力的な補助金・助成金制度にも、弱点はあります。
まず第一に「後払い」である点が挙げられます。銀行融資などの資金調達のように、申請が通ったからと言ってすぐにキャッシュが入ってくるわけではありません。補助金にしろ助成金にしろ、実際に使用した資金の一部を支援するという仕組みで提供されることが多いため、使用した経費の内訳を事細かに報告し、支援機関による審査を受けてからでないと受領できないのです。そのため、ブランク期間を乗り切るためのキャッシュはあらかじめ自社で用意しておかなければなりません。
第二に、補助金や助成金は申請までに様々書類を揃える必要があったり、実際に審査が通るまで時間がかかる点です。
そのため、市場の変化が激しい業界など、スピード感を求められるビジネスには必ずしも適しているとは言えず、また費用の使途について制限を受けるものもあるので、柔軟性に欠けてしまう可能性があります。
海外進出に使える補助金・助成金制度紹介
ここからは、海外進出に活用できる補助金・助成金制度を具体的に見ていきましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(グローバル展開型)
中小企業等が海外ビジネスの拡大や強化を目的とした「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」を行うために必要な設備・システム投資を支援する補助金です。海外直接投資、海外市場開拓、インバウンド市場開拓、海外事業者との共同事業のいずれかである必要があります。
ただし、申請書の準備がかなり大変で採択率も低いため、やや難易度高めの制度と言えます。
【補助対象者】
中小企業(製造業、建設業、運輸業、卸売業、サービス業、小売業、ゴム製品製造業、ソフトウェア業又は情報処理サービス業、旅館業、その他の業種)
【補助対象経費】
機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費
【補助金額】
1,000万円~3,000万円
【補助率】
中小企業 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
【Webサイト】
ものづくり補助金総合サイト
JAPANブランド育成支援事業
中小企業の新たな海外販路の開拓につなげるために、複数の中小企業が連携し、自らの持つ素材や技術などの強みを踏まえた戦略づくりを支援し、それに基づく商品開発や海外展示会への出展などをサポートする制度です。
各地の産品や技術の魅力をさらに高め、世界に通用するブランドに育て上げる取り組みに対して、経費の一部が補助されます。海外進出前の戦略策定段階と進出後のブランド確立のための支援が受けられます。
当社がサポート企業として申請している制度で、ぜひオススメしたい制度です。
【補助対象者】
中小企業
【補助対象経費】
(戦略策定段階への支援)専門家、市場調査、セミナー開催など
(ブランド確立段階への支援)専門家、新商品開発、展示会出展など
【補助金額】
(戦略策定段階への支援)上限200万円
(ブランド確立段階への支援)上限2,000万円
【補助率】
(戦略策定段階への支援)定額
(ブランド確立段階への支援)1・2年目は2/3、3年目は1/2
【Webサイト】
中小企業庁
中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
経済のグローバル化に伴い、海外進出を行う際に大切になってくるのが知的財産権です。知的財産権は国ごとに独立しているため、日本で特許を取得したり商標登録しても、外国では権利として成立しません。そのため進出先の国ごとに、特許権や商標権などの申請と取得が必要となります。ところが海外での知的財産活動費は高額であるため、外国への事業展開等を計画している中小企業などに対して、特許庁が外国出願にかかる費用の半額を支援する制度です。海外進出に当たっては、海外での訴訟リスクを防ぐため、最低でも商標を取得してから進出すべきです。窓口は、JETROと各都道府県等中小企業支援センターの2つで、公募期間や審査方法が微妙に違ったりもするので、使い勝手の良い方を選ぶと良いでしょう。当社も両方利用したことがありますが、各都道府県経由の方が、申請にあたって手厚くフォローしてくれる印象です。
【補助対象者】
中小企業
【補助対象経費】
外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費など
【補助金額】
上限300万円
【補助率】
1/2
【Webサイト】
特許庁
海外見本市・展示会出展支援(ジャパン・パビリオン)
こちらは補助金・助成金制度ではありませんが、海外進出に当たって活用できる制度のひとつです。
国内企業の海外販路拡大の支援を行うため、日本貿易振興機構(JETRO)が主催・参加する見本市や展示会への出展支援を受けられる制度です。JETROのジャパンブース(ジャパンパビリオン)に出展することで、ブースデザイン・施行、出品物の通関・輸送、現地での広報などをJETROが行ってくれるので、単独出展に比べてデザイン代や現地での広報活動費を安く抑えられるメリットがあります。また、JETROが一部出展経費を補助する見本市や展示会もあります。
初めて海外進出する際にはオススメです。当社も利用経験がありますが、初年度は採択率が高い傾向です。ただし「広く多くの企業に使ってもらいたい」という方針があるようで、3年目からは採択されにくいと考えた方がよいでしょう。
【Webサイト】
日本貿易振興機構(ジェトロ)
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等が、自社の課題やニーズ感に合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上アップをサポートする補助金。
越境ECによる海外進出を計画している企業に向いており、ある程度要件が整えば気軽に利用できるのでオススメです。
【補助対象者】
中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)、小規模事業者
【補助対象経費】
ソフトウエア費、クラウド利用料、導入関連費等(専用Webサイトにて公開のITツールが補助金の対象)
【補助金額】
30万円~450万円
【補助率】
3/4以内
【Webサイト】
IT導入補助金2020
その他の補助金・助成金
上記で紹介した補助金・助成金制度は、国や独立行政法人が主導していて、全国の企業から応募があるので、その分ハードルが高くなりがちです。申請が初めての場合は、まずは各自治体や財団法人(都道府県等中小企業支援センター)などが募集している補助金・助成金制度に挑戦してみるのもオススメです。
都道府県・市町村
地元に拠点を持つ中小企業を対象に、独自の補助金・助成金制度を創設している自治体もあります。たとえば海外展示会の出展費用や専門家派遣、海外市場調査費、販路開拓にかかる費用、輸出促進のための補助など、それぞれの地域ごとに支援制度を設けています。最寄りの自治体に、自社に合った補助金・助成金制度がないか、問い合わせてみても良いでしょう。
財団法人・政府系金融機関・大手企業の補助金
各県に1つは、地域の産業活性化を目的にした、公益財団法人/中小企業支援センターがあるのはご存じでしょうか?(リンクをクリックすると、各都道府県の支援センターの一覧が表示され、各運営サイトに遷移できます)この運営サイトに、現在公募中の「補助金・助成金」が公募期間も含めて一覧で掲載されていることが多く、探しやすくてオススメです!
また、大手企業や政府系金融機関などが、優秀なビジネスプランに対して資金援助をするといったコンテストを実施していたり、研究開発助成金など様々な種類のものがあるので、自社に合う補助金・助成金制度がないか一度探してみてもいいかもしれません。
まとめ
今回は、海外進出をする際に活用できる補助金について、メリットや注意点を解説してきました。
冒頭にも書きましたが、国内マーケットは縮小、先細りの一途です。そのため、どのような企業も、これからは海外を視野に入れて戦っていかなければならない時代と言えます。ただ中小企業にとって、海外へ打って出るには資金調達が大きな課題となります。その時には、上記でご紹介した制度をぜひ調べてみることをオススメします。そして自社の事業に合うものがあれば、積極的に有効活用しましょう。受理までに時間がかかるなどの注意点はありますが、中小企業において補助金や助成金制度は海外進出の大きな助けになるはずです。
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