これから始める海外進出 #2価格で勝負かブランディングか?
日本のものづくり企業は、素晴らしい技術を持っているものの、長年下請けとして仕事を受けていたので、まずその技術を使って、
1)どういったモノを作れるのか
2)そのモノをどうやって海外に販売していくか
という課題について真正面から取り組まずに、漠然と海外進出の夢を描いている方がいらっしゃる方が多いような気がします。
海外進出サポート企業やコンサルタント企業などは、「アドバイスはできるけど、結局のところ、それはメーカーさんがご自身で答えを見つけていかなければならない」と言われるわけですが、それが簡単でないから問題は複雑です。
■どうやって海外に売っていくのか?
私たちも、2015年に「自社商品の歯ブラシを海外で販売しよう」と決まったとき、「さて、どうしよう?」と立ち止まってしまいました。
1)どういったモノを作れるのか
「カラフルなプリント歯ブラシなら何でも作れるけど、サイズも柄も色々あるし・・・どれが売れるのかな?」
2)そのモノをどうやって海外に販売していくか
「全然わからない・・・」
ってな具合です。とりあえず、2)が全く見えていなかったので、そこから取り組むことにしました。そこで色々とリサーチをした結果、最終的に以下の二択に行き着きました。
Ⅰ)一般的な歯ブラシとして価格で勝負する
Ⅱ)ブランド化して付加価値を理解してもらい勝負する
Ⅰ)は、現地マーケットの歯ブラシの価格よりも安く提供できる場合は有効だと考えました。Alibaba.comに代表されるような、少しでも安く商材を仕入れたい世界中の企業が多く集まるプラットフォームも、有効に活用することができます。
しかし、そうでない場合、Ⅱ)のように、一般の歯ブラシとは違う名前をつけて差別化し、消費者やバイヤーに付加価値を理解してもらい、少し高額でも購入したいと思ってもらう努力をする必要があります。いわゆるブランディングです。日本のものづくり企業が海外マーケット進出を目指す場合、こちらで勝負した方が、結果的に近道になると考えました。
いまや日本でしか作れないものはごくわずかです。そして、日本は島国です。海外にモノを送るには、文字通り海を越える必要があり、輸送費も高額で、輸出手続きも未だに煩雑です。価格競争で現地の商品と勝負して利益を出すためには、薄利多売を覚悟で挑むしかありませんが、あまり現実的ではないでしょう。
■つまりブランディングとはこういうこと
ブランディングというと身構える方がいらっしゃるかもしれませんが、買い手の認識の中で区別されればいいわけですから、とりあえず商品に「名前」を付けます。そして「この技術すごいでしょう」という自己満足を実現するための商品ではなく、ユーザー目線に立って、現地消費者の課題を解決するための商品を作ることが大切です。
以前、スイス製の毛抜きを日本で販売しないかと海外メーカーから売り込まれたことがあります。スイス製の毛抜きはドイツ製と比べて知名度も低く価格も高いので、品質の違いを聞いたところ、スイス製の毛抜きの歴史と伝統を長々と語られました。しかし、バイヤーとして私が知りたかったのは「スイス製の毛抜きを使うことで、日本の消費者の生活がいかに豊かになるか」です。伝統や歴史は「消費者の生活を豊かにする商品であることの根拠の1つ」であって、アピールの仕方を間違うと、購買意欲を失わせます。同じことは、日本のものづくり企業にも言えるなとハッとさせられた瞬間でした。
そこで私は、「海外の歯ブラシ事情を調べて、その市場にマッチした歯ブラシを作り、消費者にとって買いやすくて、多少高くても欲しいと思わせるブランディングを徹底して売っていこう」という戦略を描き始めました。
#3無料の市場調査というJETRO最強ツールが絶対オススメへつづく
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