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八ヶ岳の山道は、軽で軽やかに

八ヶ岳周辺を車で走ると、未舗装の道が意外と多い。

道幅も細く、自転車専用レーンなんてものは見当たらない。だから、自転車に乗っている人はほとんど見かけないし、バイクも車と同じ扱いだ。東京から来た人は「えっ、ホントに?」と驚くだろう。

メイン道路から一歩外れると、景色がガラリと変わる。山の中のペンションへ向かう途中、デコボコ道に出くわすこともしばしば。

車高が低いと「ガツン」とボディをぶつけてしまいそうで、ハンドルを握る手に力が入る。この辺りでは軽のSUVが人気なのも頷ける。

稼働力が高いジムニーのような四駆がオススメらしい。「オフロードもバッチリだよ!」と誇らしげに話す地元の人の姿を見ると、確かに山岳地帯での暮らしにぴったりだなと納得する。

便利さを追求するなら「軽トラ」も良いと思う。荷物運びには最適だし、働く人にはピッタリなフォルムだと感じる。

以前、買った荷物が自分の車に入りきらずに困っていたとき、店員さんが軽トラでさっと届けてくれたことがあった。

都会ではなかなか見かけない「助けの手を差し伸べる」その感じがすごくかっこよく見えて、あの瞬間、私の中で軽トラの「格」がぐっと上がった。

何かあったときに「役に立てる」というのが、素敵だ。

意外だったのは、エコ意識が高い人が多いと聞いていた八ヶ岳周辺で、電気自動車をほとんど見かけないことだ。

バッテリーの持ちが心配だし、冬に弱いと聞くし、充電ステーションも少ない。もし山の中で電気自動車が止まってしまったら大変だ。そんなリスクを考えると、普及にはまだ時間がかかりそうだ。

そんなこんなで、八ヶ岳に来てから、自分の車選びや車に対する感覚が、こんなにも変わったことに驚いている。

昔は、まるでゴジラに『どうぞ踏んでください』と自己申告してる様な、平ぺったいスポーツカーが、カッコいいと思っていた時期もあった。

メディアや世間や周囲から「自分の胸の内にある美学」まで影響を受けていたように思う。

けれど、今は、不必要な背伸びをするより、身の丈に合った軽やかなスタイルの方が、ずっと素敵に思える。

自分が求める以上に大きくなることは、かえって身動きが取れなくなり、不自由さを感じてしまうこともある。

車だって、家だって、心だって、大きく、重くすることで、かえって自分を縛りつけてしまうように。

ということで、燃費がよく、小回りがきいて、悪路でもへっちゃらの軽自動車が、今では私の頼れる相棒だ。

たとえ、ドライブする道が未舗装でも、デコボコでも。

それでも、十分に楽しい。

自分で選んだ道を自分で進んでいる感覚を求めていたのかもしれない。

不必要に大きく構えるより、軽やかに、流れるように生きていきたい。

そんなことを思いながら、今日も八ヶ岳の山道を走り抜けている。

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