拠点作りは、独立王国を創るつもりで
田舎暮らしや二拠点生活に憧れて、いろんな物件を探し回る人は多い。
「ああ、ここが理想の場所!」なんて物件に、いつか巡り合えたらと思うけど、現実はそう甘くない。
完璧な物件なんて見たことがないし、存在しないんじゃないかって思う。
「予算を抑えたい」「失敗したくない」という気持ちはよく分かる。でも、最初から完璧を求めるのはやめたほうがいい。
だって、存在しない「完璧」を求めて理想を追いかけ続けると、いつまで経ってもスタートできないまま、終わってしまう。
「完璧な場所なんて存在しないんだよ。完璧な理想が存在しないようにね」。そんな言葉が頭の中をふとよぎる。
どこかが良くても他が欠けているのが普通だし、本当に「完璧」な物件なんてあったら、わざわざ市場に出るはずがない。
もし「完璧!」と思える物件に出会えたとしても、長く愛着を持てるかどうかは分からない。完璧すぎると、やることがなくなってすぐに退屈しちゃいそうだ。
いくら美人でも、外見だけでは3日で飽きるし、眺めが良くてもそれだけじゃすぐに物足りなくなる。
だから、欠点があっても惹かれる物件や、時間をかけて一緒に成長を感じられる場所のほうが、私は面白いと思う。
私が購入したのも、築37年の古い家。至る所がボロボロで、手を入れなければ住める状態じゃなかった。
雨が降れば玄関前は泥だらけ、雑草は伸び放題。車を庭に停めようとすれば、泥にはまってタイヤが空回り。
周りの人には「ここで本当に暮らすの?」と驚かれたけど、「まあ、どうにかなるでしょう」と笑いながら答えた。
正直、「お金を払ってまで苦労するなんて変わってるね」と思われていたかもしれないけど、気にしない。だって、どうせ誰も見ていないんだから。
結局、庭の雑草を抜きまくって、土を耕し、小道を作って、家庭菜園を始め、石で花壇のふちを囲んで、少しずつ家と庭を整えていった。
「これで本当に大丈夫かな?」と心配しながらも、とにかく手を動かす。時々、指や腰を痛めたりしながら、少しずつ自分の居場所を形にしていく。
そんなある日、「これって本当に誰も見てないんじゃない?」と気づいた。
お隣さんは別荘使いでほとんど留守だし、前を通る人も滅多にいない。「お庭、頑張ってるね!」なんて声をかけられることもない。
私の庭なんて、誰も気にしてない。
でも、それで良かった。いや、むしろ、それが良かった。
「私の庭はこんな感じだよ!」なんて誰かに見せる必要もないし、褒めて貰うなんて期待しない。そもそも褒められるためにやってる訳でもない。
誰かの評価を気にするんじゃなく、自分のために動く。
昔からよく「自由に生きろ」と言われてきたけど、本当に自由に生きるって、こういうことなんじゃないかと思う。
好きなものを置いて、好きな場所に配置する。そうやって自分の空間を少しずつ作り上げていくと、不格好だった家も、愛着が湧いてくる。
そうして「自分らしさ」が少しずつ積み重なっていく。
だから、これから拠点を作ろうと思っている人には、「よし、独立王国を創るぞ!」くらいの気持ちでやってみるのが良いと思う。
完璧を求めるより、不格好の中に少しずつ“自分らしさ”を作り上げていくことのほうが大切だし、楽しいし、何より自由だ。
自分だけの拠点は「居場所」であり、「解放区」でもあると思う。
そうして、今日も太陽が昇る。
「さて、今日も王国づくりを楽しもう」と思いながら、いつものようにシャベルを片手に庭に出る。
誰の指図も受けず、自分だけの“独立王国”を作り上げていくんだ。ゆっくり、のんびりと。
だって、どうせ誰も見てないんだから。