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匂いの検査 #セマセカ話


先日、毎年恒例の健康診断へ行った。

健診をメインとするクリニックのため、周りももちろん同じ目的の人たち。
エステサロンかのような内装で、通路の照明は暗め、いい香りが漂っており、
検査の案内もスタッフの方がかわるがわるしてくれるのでとてもスムーズ。


いくつか検査を終え、血圧や身長体重、視力検査などを行う広めの部屋に入ったときだった。


臭い。


表現のし難い匂い。
でも、おそらく、誰しもが一度は嗅いだことがある。
電車や街中、人が多く集まる場所では特に遭遇率が上がる。

そう、異臭を放つ人だ。

私は鼻が効くタイプで、とにかく匂いに敏感。
夏の暑い時でも電車内でマスクをするのは、感染症対策ではない。
臭い匂いをなるべく嗅ぎたくないからだ。
暑さによる不快よりも、臭さによる不快の方が何倍も嫌なのである。


まさか健康診断で異臭人(いしゅんちゅ)に出くわすとは…。

その方の異臭が何によるものかはもちろんわからない。
少し前によく聞いた、風呂キャンセル界隈の方なのかもしれないし、
シャワーは浴びるがしっかり洗えてないのかもしれないし、
お洗濯が不十分なのかもしれない。
単純に今に至るまでに大量の汗をかいたのかもしれない。

なんでもいいが、とにかくすごい匂いだった。

このクリニックは都会のど真ん中、オフィス街にあり、健診を受ける方々は近隣で働いている人ばかり。
おそらくその方も近隣にお勤めなのだろう。
スタッフの方の声掛けにも、浅く頭を下げながら丁寧に返していたし、至って普通の社会人だと思われた。

しかし臭いのだ。ほんとうに。腹が立つほど臭っていた。


匂いというのは、本人が自覚するのは難しい。
こんなことを言っている私だって、とてつもなく臭っているかもしれない。
外出して家に帰った時に、家にいた時には気づかなかった、揚げ物をした油の匂いを感じるなんてことも、みな経験しているだろう。

もしかすると、その方も、自分が異臭を放っていることを知れば、何かしらの対策をするかも知れない。
だけど、気づかないものは直しようがないのだ。


とは言え、他人が指摘するのはもっと難しい。
仲の良い友達でも、見ず知らずの他人でも、血のつながった家族でも、匂いについて言及することはなかなかできることではない。

だからこそ私は願う。
健康診断の項目に「匂い」の検査を入れてくれと。

機械的に、あるいはお医者さんという専門家に、
匂いの数値や結果を出してもらえるというのはとてもありがたいことだと思う。

例えば5段階評価で匂いの不快指数を表すとかすれば、「自分は一般的にみて匂いが強いんだ」ということがわかり、気になる人は対策ができる。

口臭なんかは歯周病が原因であることも多いし、治療への後押しになるかもしれない。

匂いのしおり、なるものを作って健診の際に配布し、異臭につながる要因を周知すれば、
「毎日入浴している自分には関係ない」と思っていた人にも気づきを与えられるだろう。

こんなに文明が発達し、優れたツールがたくさんある現代。
匂いという人によって感じ方が変わるものを、数値化するなんてことは容易くできるのではないだろうか。

異臭人が減るというのは、人にとっていいことしかないはずだ。
特に職場など、関わりを断つことができない間柄において、匂い問題は決して軽視できるものではない。
身体の健康はもちろん大事だが、現代では心の健康だって重視されている。
人の心を害するパワハラやセクハラは懲戒処分にだってなる。
匂いだってもっと問題になってもいいと思うのだ。

受ける、受けないの自由があると意味がないから、
「最初からいましたけど?」みたいな顔して、
淡々と、事務的に、当たり前に、検査項目に追加してもらいたい。

そうすることで、無自覚に嫌われることも、
無自覚に不快感を与えることもない、
心の健康が望める健康診断に進化するのではないだろうか。


試験的に有料でも構わないから、ぜひとも検討願いたい。

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